【怪談】10円玉
Tさん30代男性から聞いた、不思議なお話。
Tさんは小さいながらも会社経営をしている。
従業員は10人程で、事務所もプレハブというTHE★零細企業だ。
従業員はほとんど直行直帰な為、事務所は一日通してお客さん以外はTさんと事務員の女性一人が詰めているだけである。
従業員が、作業報告書を提出しに数日に一度事務所に寄るのだが、その際、事務所に上がらず、入口にあるカウンター越しに話をして終わる程度だ。
その入口のカウンタ―で不思議な事が起きた。
①事務員さん曰く、度々その入口のカウンター上に10円玉が置いてある。
②社長か従業員のものかと思い、社長の机に置いておく。
③次の日出社するとまたカウンターに10円玉が置いてある。
④そのままにしておくと、次の日事務員さんの机に置いてある。
⑤会社のお金かと思い、収納袋に入れて支払等し、数日経つとまたカウンターに置いてある。
⑥ ②に戻る。
という流れが数か月続いてるそうだ。
Tさんはカウンターに10円玉が置いてあった事も知らなかったし、ましてや自分の机に10円玉があったのも気付かず、さらにはカウンターの10円玉を事務員さんの机に移した記憶も無い。
いや、従業員と話しているときに無意識にそういった行動をしているかもしれない。
俄然興味が湧いたTさんは、その日から注意深くカウンターと従業員の動向をチェックする事にした。
数日ほどそんな日が続いたが、カウンターに10円玉が置いてあることも、従業員がカウンターに置いていくという事もなかった。
が、ある日、事務員さんが「今朝また10円玉ありましたけど」と話した。
Tさんは驚いた。
前日の記憶はしっかりある。夕方従業員が一人立ち寄り、260円を渡して会社外の自販機で二人分のジュースを買った。
カウンターに立ったまま従業員は雑談をしてタバコを吸い終わったら帰った。
その時の雑談で10円玉の話しもして、「小さいオッサンじゃないっすかw」なんて従業員がジョークを言っていたのも覚えている。
従業員が先に事務所を出て、Tさんが戸締りをする際にカウンターに10円が置いてなかったかのもしっかり確認した。
それが何故か今朝ある。10円玉がカウンターに置いてある。
玄関口の監視カメラを見る限り人の出入りはなかった。
じゃあ誰が何のために置いた?
Tさんはその後も注意深く観察を続けたが、やはり突然10円玉が現れるという事が度々あった。
今でもそれは続いているそうだ。
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この話を聞かせて頂いた時、私は「カウンターに監視カメラ付ければ?」と提案したがTさん曰く、無粋だろ、との事。
こういうのは自分の目でしっかり確かめて、イタズラか霊現象かわからんとつまらんだろ、と。
Tさんと10円玉の戦いはまだまだ続きそうだ。