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【怪談】悪どい商売をしていた

Tさん30代男性が祖父から聞いた、Tさん祖父Oさんの体験談だそうだ。

Tさんが幼少の頃に祖父Oさんから聞かせてもらった話であり、当時すでに祖父Oさんも高齢だった為、たいぶおぼろげになっている話と言うことで、多少脚色やフェイクを交えるがご容赦いただきたい。


今からどのくらい前になるのだろう、70年以上前の話と思われる。


Oさんが10代の頃、中国地方にある父方の実家へ家族で泊まった時の話だそうだ。

実家は農家だったそうで、平屋の大きな屋敷ではあったものの、とても古い建物だったそうだ。


Oさんは親戚と楽しく過ごしたが、酒盛りをしているときに叔父さんがこの家は幽霊が出ると話してくれた。

話によると、客人が泊まるとどこからともなく女性の啜り泣く声や助けを呼ぶ声がするそうだ。


叔父さんの悪い冗談だと思ってはいたものの、ソッチ系にめっぽう弱いOさんは夜中、全く寝付けないまま布団の中にいた。


田舎だけあってまわりから虫や蛙の声がうるさい程聞こえていたのだが、そうして数時間、突然何の音も声も聞こえなくなった。

突然の静寂。Oさんは周りの空気が突然ひんやりしたのを感じた。


何事だろう、異様な静けさを不気味に感じながらOさんは早く眠りにつこうと心で念じていたが、それに反して耳は異変の原因を探るかのようにそばだてていた。


それから数刻、自分が寝ている部屋の前に伸びている廊下から

ドン……ズル……ドン……ズル……


と音が聞こえてきた。

Oさんはその音が、何者かが四つん這いでゆっくり這っているような音に聞こえた。いやな想像が頭を過ぎる。

なんだこの音。なんなんだ。

きっと知らないふりを決めてそのまま眠ってしまった方が良いのだろう。

しかし音の正体を求め、ひたすらに自分の耳は澄ましている。


ドン…ズル…ぃぃぃぃいぃ……ドン…ズル…いぃぃぃ……


這っているような音は近づいてきているのだが、それに伴いその音の合間に違う音が混ざっている事に気付く。

最初は、立て付けの悪いドアが開いた音に聞こえた。もしくは風で外にある納屋かなんかの木戸が開いたり閉じたりしている音だと思っていた。


が、近づくにつれその甲高い音は、女性が啜り泣いている声だとわかった。


つまり、女の人が声を押し殺して泣きながら、四つん這いになりながらゆっくりこちらに向かってきているということだった。


Oさんは恐怖で身動きひとつとれずにいた。

金縛りではない、ただただ得体の知れない恐怖に震えて動けなくなってしまっていた。

得体の知れない何者かは、自分に気付いているのだろうか、見つかったらどうなるのだろうかなど、Oさんは不安で泣きそうになりながら掛け布団をかぶりうずくまっていた。


それから数分間、その四つん這いの音と泣き声はずっと廊下から響いており、もはやOさんの部屋まであと数歩というところまで近づいていた。


Oさんは何かを祈りながらひたすら布団を握り震えながら目を閉じていた。



すると、その廊下の奥からもうひとつの足音がした。

ドンドンドン!と勢いよく歩いてくるような音。

四つん這いの女の後ろからその勢いの良い足音が近づいてきてるようだった。


なんだ?誰か来たのか?


すると、その勢いの良い足音から男性の怒号が響いた。

Oさんは東北の人間なので、何と言ったかしっかり聞き取れなかったそうだが、その怒号は

「どこにいこうとや!」

とかなんとか。ニュアンスとしては「どこに行くんだコラ!」的な感じだったそうだ。


すると四つん這いの女と思われるほうから

「いいぃぃ!ひいえええぇぇぇぇあああぁぁ!」

と、怯えたような狂ったような悲鳴が聞こえたかと思うと、その後ろから男の声で「こっちこい!」というような怒声が聞こえ、泣き叫ぶ女の声、ひたすら罵声を浴びせる男の声、

そして引き摺られていくような音と勢いよく歩く遠ざかっていく足音が数分にわたり聞こえた。

ドンドンドン!と勢いよく足音は遠ざかり、それと一緒に「いいいいいえぇぇぇあぁぁぁ」と悲鳴を上げながら女が引き摺られていくズルズルズルという音が次第に遠ざかっていき闇に消えていった。


音が聞こえなくなると、また虫や蛙の声が聞こえ始めた。

ひんやりと重たかった空気も、いつの間にか少し寝苦しいくらいのただの残暑の夜という空気に戻った。


Oさんは、息を殺していたのを思い出し、体を上下させ大きく呼吸をし、自分がびっしょり汗をかいていたのに気付いた。

深く呼吸を続け、虫の声を聞いているとだんだんとOさんも落ち着いてきた。

さっきのは何だったんだと布団から出て、障子をゆっくり開けて廊下を覗いてみたが特に変わったところもなければ、他の家人が起きてくる様子もなかった。



眠れないまま朝を迎え、家人らが起きてきたので昨晩の事を訊ねてみたが、誰一人として同じ音を聞いた者はいなかったそうだ。


叔父さんに詳しく話を聞くと、昨夜してくれた話は、叔父さんの亡父から聞いた話しで、それもたまたま泊まった客人から聞いた話らしく詳細はわからないらしい。


ただこの家は昔、よくわからないが悪どい商売をしていたらしいので、そんな事もあるのかもなぁ、と話してくれたらしい。


Oさんはそれ以来父方の実家には行っていないので、詳細もその後も全くわからないらしい。



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という話をTさんから聞かせていただいた。

Tさん自身、そっちの親戚とはもう縁が切れているし、なんという地方かもわからない、祖父Oさんも20年ほど前に亡くなり、話もぼんやりとしか覚えてないのでこれ以上の事は何もわからないと話された。


もしかしたら作り話かもしれないしね。とも話していた。


何も手がかりがない以上調べようが無い。


ただ、その女性の方、いろいろと妄想の余地はあると思うが、雑に扱われ非業の死を遂げたというのであればその女性が化けて出るというのはわかる。

が、乱暴に女性を扱っていたような怒声の主の男性まで一緒に化けて出るというのは全く意味がわからない。

その女性と男性は一緒に死んだのか?死んでからもその関係が続いているのか?

わからない事ばかりの怪談というのは不気味でおもしろい。

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