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【怪談】隣の人

Tさん30代男性から聞いたお話。


数年前、Tさんはヒマ過ぎて30分ほど歩いて古本屋まで行ったそうだ。

数時間、いろいろと物色したものの買う物が無かったためまた歩いて帰ることにした。

帰路の大通りには踏切があるのだが、そこはTさんが小学生の頃から幽霊が出るだの自殺が多いだの噂があった。

しかしTさんは日常的に車でそこを通るもののそんなモノは見たことなかったし、気にも留めていなかった。


なにげにその古本屋が深夜まで営業していたせいで、そこを歩いていたのは午前1時頃だったため、車通りはおろか人通りも無かった。


特段気にせずその踏切に差し掛かったときにカンカンと踏切の信号が鳴り始め遮断機が降りた。


Tさんはスマホを眺めながら電車が通り過ぎるのを待っていたが、フと不思議に思った。

こんな時間に電車通るのかな?

希に寝台なんかも走ったりしてるのかな?くらいに思って顔を上げると、いつの間にか自分の隣に人が立って遮断機が上がるのを待っていた。

Tさんは少し驚いたが、その踏切は住宅街付近だし、近くにホテルもあるため、そんな人もいるだろうと一人で納得した。


…が、何かに違和感を感じた。

深夜だったとはいえ住宅街、踏切には電灯も点いている、にも関わらず、いつの間にか隣にいた人が真っ黒に見えた。


気のせいか?マジマジ見るのもなぁ…

なんて思いスマホに目を向けるフリをして隣の人の足や靴をチラ見してみたが、やはり真っ黒に見えた。


するとすぐに電車が通り、そのライトに照らされた隣の人の足はやはり真っ黒なままだった。


電車先頭のライトに照らされても真っ黒なままで、車窓から漏れる光が数秒続いていたにも関わらず、隣の人の足は真っ黒なままだった。

車窓から漏れた光はただただ、その真っ黒な足から真っ黒な影を右から左へと伸ばすだけだった。


さすがにTさんは不気味なモノを感じたそうだ。

隣の人の顔はどうなっているんだろうか。

なんとか覗いて見れないものだろうか。


思案している間に電車は通り過ぎ、遮断機が上がり踏切が開いた。

そこでTさんは「スマホに夢中になっていて出遅れるフリ」をした。


遮断機が上がったにも関わらずTさんはスマホをみたまま動かなかったのだ。


すると、隣の人の真っ黒な足が前に出て、が先に歩き始めた。

すかさずTさんは顔あげ、隣の人を確認すると、シルエットからどうやら男性だという事がわかった。

あっ、男の人だ。と同時に「背中も何もかも真っ黒だ」と思ったそうだ。


そしてそう思った瞬間、隣の人が線路に進入した瞬間、パッと消えた。


隣の人が一歩線路に入った瞬間、その人は突然消えたのだ。


Tさんは驚き、辺りを見回してみても誰もいない、何も無い。


恐ろしくなったTさんはそこから走って帰ったそうだ。


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後日、インターネットでその踏切に関わる事件や事故が無いか探してみたが、何も見つからなかったという。


一体、Tさんが見たモノは何だったんだろうか。

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