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メゾン 光草【3】ウルフハッド

「光草」って珍しい名前でしょう?
けれどね、あなたの街にも生えている草なんですよ。
「あれ、この草はなんだろう?」と思ったらそれは光草です。
光草の中には一際輝くものがあるんです、それがメゾン 光草の「招待状」。


アミュータス•レガルス•リア•パルコタンスを見かけたのはレンガルだった。
ハロウィンの夜だけ開かれるレンガルは俺らの溜まり場だ。
人間界と俺らの世界が3時間だけ結ばれる特別な日。
そのせいで、俺は人間世界に迷い込んでしまったんだ。


あの紫鬼しきめ。
俺のことを人間界にほっぽり出しやがって。
俺は落暉。名前の意味から狼男だ。
名前の意味は日が沈む頃。そうなりゃ、狼の吠える夜が始まる。
人間は好きだが襲ったりはしねぇ。人間は見ていて面白いし、懐かしい。
昔は俺もそうだったな。と思う。
まあ、もう戻れねぇけど。
アミュータス……ああ、めんどくせぇ。略称で呼ぶことにする。
アミコは『メゾン 光草』の養い子だ。
本当は神様の子供なんだそうだ。マジでおとぎ話だよな。
半年前なら笑ってたかもしれん。
今は自分がおとぎ話の狼男だからなんとも言えないのだけど。
にしても……
俺はすっかり人間界で迷っていた。
人間界でも俺が気兼ねなく泊まれる場所。
そう言われたら思い当たるのはメゾン 光草だけだ。
俺は今まさにその建物の前に立っていた。
アミコに嫌われたっぽいから止めてもらえるか、わかんねぇけど、
何もしねぇよりマシと思って覚悟を決めてきたのだけど。
あっけなく俺は通されてあっという間にベッドに座っていた。


「落暉さん。本日はいったいどういうご用件で?」
訝しげに顔を歪めた弁財天36代目のさんやさんが俺に問う。
歪めた顔まで綺麗なんだから恐れ入る。さすが弁財天。
「いや、昨日レンガルで紫鬼に追い出されまして。
ここしか頼れないんで。やっちゃったらマズイし……
アミコちゃんには嫌われてるっぽいから無理かな、と思ったんすけど」
「ここはわたくしのホテル。アミコの一存で誰を泊めるか決めるわけではありません。ですけど、今夜は新しいお客が来たので、あなたは別の部屋に行って欲しいんです。いいでしょう?」
この人は断られる、ということをしたことないんじゃないか……
もちろん、断っても意味がないので俺は頷く。
「宿泊者とは、くれぐれも会わないようにしてくださいね」
「はい」
さんやさんが部屋を出て行ったのを確認して俺はベッドから飛び降りた。
俺は狼男の割に、というかそのせいか小柄だ。
そして、布団の下からメモ帳を抜き出す。
「やっちまった」
ついついいつもの癖でかすめ取ったのはさんやさんのメモ帳だ。
いろんなことが書いてあるとかないとか。
噂はいろいろだけど、このメモ帳からは寒気がする。
まあ、なんだ。俺独特の感だけどこれが結構当てになる。
メモ帳を開いた俺はそれに吸い込まれた。


「ん?なんか、頭いてぇな」
起き上がると親父が前に立っていた。
『ら、ら、ら、ら、ら、落暉か?い、い、今の狼は落暉なのか?』
「は?おいおい、親父。忘れ……」
『え?なんのこと?親父大丈夫?疲れてるんだよ。俺は人間だよ』
『じゃ、じゃ、じゃあ、その手は?』
俺は振り返ってギョッとした。
俺がいた。
もう一回振り返って親父を見る。
間違いない、これは俺が初めて変身した時の記憶だ。
だけど、なんでこれに?
そうか。さんやさんには人の記憶を吸い取る力があるからなのか。
「そっかぁ。らっくんも見ちゃったかぁ」
「あ、アミコ⁉︎」
「ふふ。ここ、たまに来るんだよね。懐かしくて。ね、お兄ちゃん?」
「はぁぁぁ⁉︎⁉︎⁉︎」
驚きのあまりに叫んでしまった俺の頬に
久しぶりに呼ばれて出てきた雫がほろりと流れ落ちた。
そう、アミコは俺の妹だった・・・
でも、事件を起こしたのだ。人を襲ってしまったのだ。
不良だ、ヤンキーだ、と言われていた俺でも人は襲わなかった。
だって、アミコがいたから。
アミコの名前はアミュータス•レガルス•リガ•パルコンタスだけど、
本名は全然違って『くら』という。夢と書いてくらだ。
俺が『らっき』なので逆さにして『きら』をきの次のくで『くら』。
なんと安直なネーミングセンスだろうと嘆きたいが
つけたのは当時の幼き(でも中学生の)俺である。
こればかりは、300年以上たっても覚えている恥ずいエピソードNo. 1だ。
これからはくらと呼ぶことにする。
くらはごくフツーの人間だった。
俺が狼人間であることは内緒にしていた。
もし打ち明けていてら相談してくれたのかもしれない……
そしてある夜、くらは人を一人襲ってしまったのだ。
致命傷こそなかったのものの、裏のお方がたくさん動いてどうにか隠滅したらしい。
そしてくらは神様に引き取られた。元弁財天36代目さんやさんに。
だから、少々くらは俺を嫌っている面がある。
嫌っているというより恨んでいるという方が確かかもしれない。
だから、普段は顔ですらできるだけ合わさないようにしているが、
昨日は気が抜けていて思わず声をかけてしまったのだ。
俺はくらを横目で見た。
かわいい。
いつ見てもかわいい。
もし母親が生きていたらシスコンだというのだろうか。
別にそういうわけではないのだけど。
「ねえ、お兄ちゃん。私さ、ここにいると寂しくなるんだ。
自分だけ違う世界にいるから。私の部屋、来て欲しいなぁ」
「あ、あぁ。いいけど」
「照れてるでしょ?早く、早く」
俺はくらに手を引かれるまま、ついていった。


「お兄ちゃん。今日は一緒に寝てくれる?」
「ああ、もちろんだ」
久しぶりに隣に座ると妹の体は暖かかった。
「何年振りだ?」
「300年ぐらいかな」
そんなたわいない会話も懐かしくて、涙が溢れそうだった。
慌てて背中合わせになる。
あっという間にくらの寝息が聞こえてきた。
昔から、寝付くのだけは早かった。
起きるのも、飯を食べるもの、足も、全部遅かったのに。
「おやすみ、くら」
いい匂いがふんわりと漂ってきて、俺も深い眠りに落ちていった。


目が覚めると、そこは小汚い路地だった。
いつもいる、見慣れた場所だ。
あれは、夢だったのだろうか、と考えてみる。
くらは、俺の幻想だったのだろうか。
まあ、どうでもいいや。
俺はどうやっても、くらの兄貴で、どうやっても、狼人間で、
今ここで、生きているんだから。
俺は立ち上がると、自分の住処へと帰っていった。


あとがき


うわぁーーーー!
ごめんなさいぃぃぃぃ!
これでメゾン 光草シリーズは完結!にしときたいです!

今日、寝坊しまして、しかも記事のストックが全然ありませんでして、
もう、どうしたらいいんだー!

今日で56日連続投稿なのにぃ!

と思って、メゾン 光草④ウルフハッドを急いで完結させました・・・

本当は、もうちょっと話引き伸ばしたかったんですけど、
もう時間がなくて、なくて、、、

勉強も山積みで、物語も不完成で、申し訳ないです!

でも、今日は許してください!

明日はちゃんと投稿、し、ま、す、、、

これで、謝罪終わります!
あとがきもめんどくさいので終わります!

すみません、今気が付きましたが、
まだハロウィンは2ヶ月も先でした!

以上、みったでした!


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