筍産地のタケノコご飯
全国でも有数の筍産地京都に住んで35年。近所の筍農家さんに教わったホンマに美味しいタケノコご飯の作りかた。美味しいタケノコご飯の基本はやはり筍、そして出汁。
美味しい筍のトライアングルバランス
土鍋で炊きあげたタケノコご飯。蓋を開けた瞬間にフワッと広がる淡く甘いあの香り、深呼吸するかのように深く吸いこみたくなります。
あの香りってね、出汁の香りではなく筍の香りのこと。
経験していないとわからない、淡く魅惑的な香りなんです。
ただ残念なことに、全ての筍がそうではない…。
産地によっても、農家さんによっても違いがあるし、ましてスーパーに並ぶ頃には水分とともに香りも抜けるので、産地に住んでいるからこそかもしれません。
とは言え浅堀りが翌日届くことも可能な今、美味しい筍は手に入りやすい。
あの香りを体感できる、ホンマに美味しいタケノコご飯を作れる環境にある。ということで、まずは筍農家さんから教わった美味しい筍の3要素。
このバランスの取れたものが、最高に品質のよい美味しい筍ではないかと思います。
※高値がつくものはこれ以外に色などの要素も加わるようなので、農家さんから教わったことを簡潔にまとめたもので、市場基準でないことはお断りしておきます。
1、筍の香り
残念ながらこの香り、体感しないとわからない。他の野菜で近い香りが思い浮かばない、比喩できなくていつも困ります。竹の香りとも少し違い、落ちた葉が積み重なって自然に発酵したような、かすかに甘い香りがします。
空気にも陽にも触れないうちに土の中から掘り出された白い筍は、茹でた後もこの香りが残るようで、タケノコご飯にするとさらに一層引き立ちます。
2、筍の甘さ
筍は甘いってご存知でしたか。
高級日本料理店や老舗料亭は別ですが、家で食べる筍に甘味を感じるなんてことはなく、ただただ春の食材で、春になると食べたくなる。そういうものだったのですが、実は甘いのです。
この甘さは他の野菜と同じように優しい天然の甘さですが、筍の場合は程よい硬さがあるので噛むごとに甘さが広がる感じ。
3、筍のえぐみ
筍は大なり小なり えぐみがありますが、どんな土壌でどうやって育てられたかによって えぐみの強さが違います。えぐみの強い筍は喉がピリピリ、甘さを感じるどころじゃなくなりますね。
まったく えぐみがないものはないそうですが、ほとんど感じさせないものがあり、どんな料理法でも文句なしの美味しさです。
香りを楽しむタケノコご飯の作り方
筍は刻むべし
家庭やお店によって、タケノコご飯の筍のカタチは様々。
でも筍農家さんいわく
『タケノコご飯の筍はスライスしたらあかん。刻むねん。』
てことで試してみてから、うちのタケノコご飯の定番は刻むスタイル。
部位によって硬さと味が違う筍。根元や真中辺りは細かめのダイス状にカットして炊き込むと、まんべんなくご飯に混ざるだけでなく、噛むごとに香りと甘さが口のなかにフワッと広がります。
出汁は昆布と干し椎茸
ここは好みがわかれますが、昆布と干し椎茸の合わせ出汁は筍の香りを引き立てます。昆布1:干し椎茸2くらいの割合の合わせ出汁に、塩少々と醤油少々が、うちの定番レシピ。
目安としては、3合で塩2つまみ、醤油小さじ1程度。
ここまでシンプルだから筍の香りと甘さを存分に感じられ、いつもと違うタケノコご飯が楽しめます。
京都では
これは筍農家さんに教えてもらった作り方なので、どこの家でも刻んだ筍でタケノコご飯を作るわけではありませんし、京都に住んでいるから本当に美味しい筍を知っているわけでもないんですよね。産地の近くで、いい筍を育てている農家さんと知り合いかどうかによって、筍の楽しみ方も美味しさも違います。
これが産地から遠いとなおさらのこと。
この数年で知った本当の筍の美味しさを多くの人に知ってほしい。
農家さんの歩んできた道、150年もの間続いてきた筍栽培の知識と技術、先人の残してくれた知恵があってこその京都筍の美味しさです。
このタケノコご飯の作り方では、筍そのものが美味しくないと香りも味も広がらないかもしれませんが、筍が手に入った時は試してみください。
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