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「幼形成熟」という選択

こんにちは(*'ω'*)

今年6月に上野で生まれた双子パンダ、このあいだ4kgを超えたそうです。なんとかわいい♪ …気がつくと目尻が下がっています。大人になってもパンダって姿も動作もかわいいです。パンダ愛が強い、「しろくまカフェ」(ヒガアロハ作)に登場する動物園近くの花屋・林厘太郎さんや、黒柳徹子さんのきもち、わかります~(*^^*)


30年前、ある人からヤマネコを飼いたいと相談を受けたことがある。私は悪いことは言わないからやめなさいと止めたのだが、本人の決意は固かった。海外から届いたボブキャットの子供は大変に可愛かったが、成長するにつれて飼い主を威嚇するようになり、15㌔の大人になった時にはもはや手が付けられず家の中はマーキングの糞尿と爪痕でメチャメチャになり、玄関の戸を開けた瞬間に襲いかかってくるようになった。

結局その家族はこの巨大なヤマネコに家を乗っ取られ、捕獲送還するまでの1か月、一家3人で公園にテントを張って公衆トイレの水を飲みながら暮らした。

単独性の野生動物は、成長したら親代わりだった人間などただの異物扱いになる。対して家畜であるイエネコは決してこんなことにはならず、育ててくれた飼い主をいつまでも親とみなして死ぬまで慕う。

人間の無知と傲慢が生き物たちを不幸にしてしまわないように、ここで皆さんに野生動物と家畜の違いを知っていただきたいと思う。これは意外と重要な概念であり、欠落すると「イルカを殺すなと言うなら松坂牛も食べるな」みたいな変なことを言う人が出てくるので困ってしまうのだ。

(中略)

現在地球には870万種の生物が存在すると推定されている。これらは全ての種が直接または間接的に関連してバランスを保っている。太古より続くこの調和した世界を “生物圏” という。初期の人類は狩猟採集で日々の糧を得ていたが、農耕牧畜を発明し、野性の掟を常とする生物圏から独立して “人間圏” を確立させた。飢える危険の少ない画期的な理想郷だ。

ここに食料の保証にあやかりたい様々な生き物が参入を試みるが、ヒトの暮らしに害をなす存在は駆除され、使役や食肉などに適した有益な獣たちが順次招かれた。それらが人類と運命共同体の “家畜” になる。

ちなみに生物圏からの人間圏独立戦争の勝利の鍵は、万能使役獣であり人類最古の家畜でもあるイヌの存在だったはずだ。もしもイヌたちの献身的なサポートがなかったら現在の人類の生物学的地位はありえなかったと思う。

こうなってくると、生物圏と人間圏は完全に別れて別々に生きるべきだが、実をいうと、独立したはずの人間圏は生物圏に内包されているのだった。つまりヒトも家畜も生き物である以上は、生物圏の掟から永遠に解放されることはない。

話は横道にそれるが、自然界で起こる何かを解決する手段は、大抵は同じ自然界の中に用意されているものだ。つまり、人間圏で発生する難題は生き物の世界に解決策が存在している可能性がある。“全ての答えは生物圏に在る” としたら、開発によってそれを破壊している人類は自分の首を絞めていることになる。

昨日絶滅した植物は癌の特効薬の成分を含んでいたかもしれないし、今日絶滅した生物は髪の毛を生やすヒントをくれたかもしれない。(略)

次に飼育した場合の野生動物と家畜の印象の違いを示したい。

以下の場面を思い描いてほしい。

よく管理された馬場に一頭の逞しい馬が佇んで飼い主を待っている。青毛は黒く艶やかに輝き、たてがみは丁寧に編まれ、そして見るからに上質の頭絡と磨き込まれた鞍はフランス製だ。四肢保護のための靴下はもちろんオーダーメイドである――。

美しく高貴な乗用馬の姿である。

一方でこんなのはどうだろう。

古い屋敷の敷地の奥から野獣の唸り声が響く。広い庭の片隅に錆びた鉄の檻が鈍く光っている。濡れたコンクリートの床の上で、頑丈な首輪と太い鎖に繋がれたライオンがこちらを見つめている。幽閉されたサバンナの王はそのたてがみを風になびかせることはもう二度とないだろう。彼は今日も故郷を思いながら、エサの生肉を待っている――。

獣臭がしてきそうだ。かなり悲惨である。

次に想像していただきたいシーンはこうだ。

災害現場に救助隊の使役犬たちが到着した。幅広のナイロンの首輪には指示を伝えるための無線機が仕込まれている。風雨や危険物から身体を保護するジャケットにはチームのマークが刺繍されている。四肢に装着した革製のブーツの底は特殊繊維製で、これは彼らの足の裏を瓦礫やガラスの破片から守るための装備である――。

実に勇ましく応援したくなる雰囲気だ。

ではもう一つ。

ジンタのリズムに乗ってクマが二本足の立ち歩きで登場だ。頭には赤い三角の帽子、着ているチョッキはラメである。タイトな口輪の先には、かろうじてご褒美の角砂糖を食べる隙間がある。パーン! 調教師のムチの音で玉乗りが始まる。プーとラッパを吹きながらリングを周回するクマの瞳には何が映っているのだろうか――。

これは悲しい、やめてほしい。

つまり、馬やイヌなどの家畜は人類の役に立ち、人工物の着装が絵になる。一方でライオンやクマなどの野生動物は何者かのエゴのために本来の生活を奪われ、無意味な装飾や拘束具が涙を誘う。野にいる野生動物、ヒトに飼われる家畜、本当はどちらも本来の暮らしで一生を終えるべきなのだ。

「では牛はどうなのか、ブタはどうなのか。同じ家畜なのに馬やイヌと違って食べられてしまう。それで幸せなの?」

と言いたくなる方も多いと思うが、これは交換条件のようなものだから仕方がない。その代わりにヒトが彼らの肉を必要としている以上、そして人類が滅びない限り彼らは絶滅することなく、遺伝子が未来へ存続する保証を得ている。

「一生が短くてかわいそう。死ぬ時怖くて気の毒だ」

実はそうでもないかもしれない。生物全体として見た場合、多くの個体は飼育された牛よりも苦しんで死ぬし、一生の時間についても動物種によってそれぞれだ。ちなみに皆さんの大好物のウニは実は200年以上生きる。カイメンは1万5000年生きる。ロブスターとベニクラゲに至っては不老不死で永遠の命を持っている。これらの生き物たちに「人間は短命でかわいそうね」と言われても、私は「別に」と答えると思う。

さて、話を戻すと、ライオンに首輪をつけたら惨めに見えるが、イヌだとカッコいい。また、家畜になった動物は食べられてしまったとしても、確実に生き物としての目的を成し遂げることができる。この2点は理解いただけたと思うが、それ以外で野生動物と家畜の差は何があるのだろうか。

まず、家畜動物たちは野生の原種に比べて寿命が長い。例えばオオカミは平均6年程度で死んでしまうがイヌは大型犬で10年以上、小型犬では15年以上生きる。野生のイタチは3年程度の人生だが家畜であるフェレットは7年以上生きる。衛生的な飼育環境と獣医学の進歩が理由だと思う。

次に繁殖力。野生動物はエサの豊富な季節に出産するために通常は年に一度の発情期だが、家畜はいつでも食事をもらえるのでそのあたりはかなりおおらかになっている。騒々しくてストレスフルなヒト社会に対しての寛容性も飼いやすさにつながっている。

特徴を上げたらきりがないが、私が家畜に感じる一番の魅力は、有益な彼らが精神的な幼形成熟の生き物であることだ。特にイヌ、猫、フェレットについては顕著に思う。これはわかりやすくいうと “永遠の子供” であり、飼い主をいつまでも親として認識することである。

(略)まあ、こういう例外も中にはあるが、動物人生59年、獣医師35年目の現時点の私の意見としては、「家族の一員にするならやっぱり家畜が一番」である。

野村潤一郎

『家庭画報  2020.December』(世界文化社)の、「スーパー獣医の動物エッセイ アニマルQ」③ “永遠の子供たち” より


「幼形成熟」ということば、最近図書館から借りた新刊でも見かけました。ヒトが動物を家畜化しようと思ったとき、人懐っこさを持つ個体同士を選択交配させていくうち、副産物として?耳が垂れたりしっぽがカールしたり、鼻は低く骨は細く、オスは次第にメスに似てくるという特徴が出てきたという話でした。同じように、今は地球上にいないネアンデルタール人に比べて、ホモ・サピエンスはより柔和で、より若々しく、より女性的に、歯と顎骨は幼形成熟(ネオテニー/おとなになっても幼体の特徴を保つこと)したのだそうです。

ネアンデルタール人の方が、個人としての能力は抜群に高かったそうです。でも、ホモ・サピエンスの方は、比較すると眉の部分(眼窩の上)が平坦で、眉を微妙に動かして感情を伝える・読み取るということができたみたいです。常に感情をあらわにし、周囲の人々と繋がりを持ち、コミュニケーションや模倣による学び合いで、全体としての賢さをゲットしたとのこと。 ★ルトガー・ブレグマン著『Humankind 希望の歴史(上)』(文藝春秋、2021年)より

ラジオで「(上の立場の人から・ファンから)可愛がられること」は大事だと説くラジオパーソナリティ・F氏のご意見、ごもっとも!!なのかも。同氏が男性美容やステージなどでメイク(女性化と捉えるとして)を率先してする立場だったりするのも、そのことと無関係ではないのかなぁ。中性寄りのカッコよさというのもあると思います。

「自然界で起こる何かを解決する手段は、大抵は同じ自然界の中に用意されているものだ。つまり、人間圏で発生する難題は生き物の世界に解決策が存在している可能性がある。“全ての答えは生物圏に在る” 」というところに、オオッ…!!と小さな感嘆あり。いま世界を席巻中のウイルス、生物圏を探せば、そのウイルスに生まれつき中和抗体を持つ生物とか、うまく共棲していく知恵を見つけられるのかな!?

野生動物も家畜・ペットも、それぞれがそれぞれの本性・生態に合った生のあり方をまっとうできたらベストですね。同じように、多種多様な人たちがそれぞれの方法で居心地よく楽に(変に抑圧されずに)暮らせたら、それがベストですよね…(*'▽')

There are as many opinions/life-styles as there are people(animals) ☆

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