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時空を超えた症例
去年の猛暑日に私は時空を超えた。
仕事帰りに私は確かにA駅をでてB駅に向かった。
B駅についたはずの私は改札口でギョッとした。
なんでA駅にいるの
それが時空の歪みの始まりだった。確実に熱中症にかかっていた。でも私は確かにA駅を出たはず。
私はA駅にいるのかB駅にいるのかわからなくなった。
熱中症が正確な判断を狂わせた。
その後どうにかして最寄り駅のCに向かい帰宅した。なんなら私はA駅からC駅にB駅を経由せずについたのではないか?
わけがわからなくなった。
帰宅後すぐに母親から連絡がきた。
お父さんが救急搬送されて今病院にいる。
空間が歪んでそのまま倒れたけど発見が早かったから大事には至らないらしい。
頭が真っ白になった。私が経験した時空の歪みを、父親は空間の歪みで感じ取ったらしい。
信じてもらえないだろうから今まで誰にも話せなかった。この絵日記で初めて告白させていただく。
何度もいうが私は確かにA駅を出てB駅に向かったはずがA駅にいた。
あの時空を超えた経験は後にも先にもない。
きっと猛暑のせいだ。そう考えることにした。
次の日、熱中症に耐えながら私はいつもどおり仕事に向かった。
あの夏はなんだったのだろうか。
時空を超えた経験から一週間後、私は超絶ハイスペックイケメソとの仮交際が破綻した。
社会人になってもまだ社長令嬢気取りの生意気さを振りまく自信も、超絶ハイスペックイケメソとの夢に見た結婚生活もすべてあの夏の暑さが溶かしてくれた。
幸い父親は一ヶ月で退院し社会復帰した。
あの夏はなんだったのだろうか。
私からこれ以上何を奪うのか。
調子に乗る私を、現実に突きつけるために起きた偶然かそれとも必然か。
未だに答えはでていない