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個別の状況に応じたカリキュラムの編成・実践に関する提案~Society5.0を見据えた「学びの変革」のアップデート~広島県教育員会個別最適な学びに関する事業コーディネーターを終えて
余島です。
2020年4月〜2022年3月にコーディネーターとして関わった「広島県教育委員会個別最適な学びに関する事業」の報告会が、先日終わりました。
広島県教育委員会個別最適な学びに関する事業とは
広島県教育委員会が推進している個別最適な学びに関して、県内4地域で、学校教育目標の実現に向け、子供たち一人一人の学習進度・能力・関心等に応じた多様な選択肢を提供することで、子供たちは自己決定を繰り返しながら主体的な学びを展開していく。
事業の詳細はこちら:
広島県教育委員会,個別の状況に応じたカリキュラムの編成・実践に関する提案~Society5.0を見据えた「学びの変革」のアップデート〜
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku17/kobetu-teian.html
今回は広島県教育委員会、福山市教育委員会、福山市立福山中学高等学校で大切にしてきた「生徒が主語の学び」にチャレンジした結果や、何が大事だったかと思うか、記載しました。
生徒が自分の言葉で語り、動き出す。
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生徒360人、一人一人が自分の興味関心のあるテーマを元に、プロジェクトを立ち上げる。
自分の言葉とICTを駆使して、クラスメイト・学校・地域・企業を巻き込んでいく。(「そんな取り組みやるの!おもしろそー!」と、生徒の取り組み報告を受けて、職員室で先生と盛り上がって楽しかった)
総合的な学習の時間でよくあるパワポプレゼンが変わり、ICTを活用して演劇を取り入れてみたり、動画で発表したり、会場を巻き込むようなその場でしかできない表現方法を模索し始める。(本当に、大人顔負けです)
さまざまな取り組みは、教科学習にも影響を及ぼし始めている(「最近やっている畑のプロジェクトで、土いじってたら、元素記号覚えちゃってた」とか、隠岐でもあったけど、またあった。めっちゃ嬉しい。)
参考:子どもたちの変容②
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/428718.pdf
「生徒が主語」になる教員が増える。
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教員は、一人一人の取り組みや状況を、ICTを駆使して確認しながら、生徒の状況を確認しながら、状況に応じてファシリテーションしていく。もちろん、リアルも捨てがたい。(授業3回、まずは動くまで待ってみる)
生徒が学びを進める際のサポーターになる。そのほかの学校行事、教科でも、チャレンジしようと一歩踏み出す。(他の学校に異動した先生方が、その学校で取り組み始めたと聞いて、とっても嬉しい)
教員インタビュー①:https://youtu.be/e_jVwCFzx7s
教員インタビュー②:https://youtu.be/j6orhJJrFfA
教員インタビュー③:https://youtu.be/GVv3AdAk9qA
学校は、教員から生徒一人一人を支えることができるよう働く環境を整え始める(もちろん、ICTも活用して運用の負担を下げる。校長・教頭はチームとして機能するよう支えてくれた)
学校全体の変容:https://youtu.be/545r-EYewUk
学校が変わり始め、地域企業も動き出す。
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地域企業が生徒のプロジェクトに参加する意義を見出してくれた。(企業のプロジェクトに参加するとか、職場体験にいくとかではなく、生徒のプロジェクトに企業が参加している。)
福山発ミニ循環型社会の創造:株式会社サン・クレア様の事例:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000039759.html
生徒が本を出版!:株式会社ジブンノオト様の事例:
https://www.value-press.com/pressrelease/299953ベンチャー企業との協業:株式会社VARIETAS様の事例https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000079152.html
「瀬織」提供による実践:生原商店様の事例
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000039759.html「将来は教育を仕事に」志のある大学生が生徒と探究:広島県立叡啓大学https://www.eikei.ac.jp/guardians/news/details_00398.html
現場のフィードバックを集め、カリキュラムマネジメントやプロジェクトに活かす
現在、様々なテーマで新しい教育の形が語られている。
新しい義務教育、高等教育の形(キーワードは、生徒が主語の学び、教育DX、個別最適な学び、社会に開かれた教育課程、魅力的な高校、普通科再編、職業実践専門課程、令和型の〇〇)
これからのまちづくりと教育は密接に関わっていく。多様なステークホルダー(関係主体)が欲しい未来を自分の言葉で語り、作る。
ICT活用を進めることにより実現する未来の学びのあり方。対面・オンラインのハイブリッド型、録画を加えたハイフレックス型の授業展開。GoogleClasroomやmicrosoft、評価ツールに学習ツール。
でも、誰もが一度は経験したことのある「学校教育」。その経験を元に語り合おうとすると、めちゃくちゃ難しい。
だからこそ、「新しい学びのあり方をマインドセットしなくては変わらない」とよく言われていたのですが、今回、福山中高の皆さんとは、マインドセットから始めず、マインドマップから始めた。
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その上で、学校教員の皆さんとの対話を積み重ねた。
引用:広島県教育委員会HP、福山市立福山中学校実践事例
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/428718.pdf
当初、先生方が感じていた課題を挙げていただいた
・決められたカリキュラムを毎年繰り返すだけになっているのではないか?腑に落ちないままやっている。
・福山市から集まる生徒にとってもふさわしい学校と言えるだろうか?
・生徒が「学びが面白い!」と言えるような授業だけでなく、教員組織づくりができているだろうか?(「学びが面白い!」福山市教育委員会のキーコンセプト)
・生徒は学びについて、どう思っているのだろうか?このままでいいのだろうか?
・教員にとっても不安が大きい。本来あるべき教育の姿や自分たちが思い描く理想を実現できるだろうか?
・生徒の目がイキイキしていない、先生からも前向きな言葉が出てこない。
・中高一貫独特の課題として、変えにくい組織体制、カリキュラム制度が課題だと思われる。
放課後や掲示板を活用して、リアルの場でも、
自分たちの認識を集めることから始めました。
当時、プロジェクトが始まる前に、福山市立中学高等学校の先生方とお話した際には、多くの課題や不安がありましたが、生徒自身で語る言葉にハッとされた先生も多かったよう。
ICTを活用することで生徒や教員の状況を教室や職員室で、把握したり共有する運用の負担を下げつつ、状況把握できたら、次の進めていくべき方向性を小さく決めて動いていく。
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目標に対する振り返りを、毎時間取りながら、生徒の状況を把握する。
教員は次の打ち手を考える際の客観的な情報を集め、次の打ち手を考えた。
地方都市にある500名弱の学校でも、自分たちがどこに向かっていくのか、言語化して、共感して、動けるようにしていくことができるし、今後ますます重要である。
さいごに
新しい教育の形をつくる取り組みは、おかげさまで、事業自体は終わったものの福山中高は、チャレンジを続いています。事業でお世話になった皆様、本当にありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いいたします。
◯広島県教育委員会教育長を始め、個別最適な学び担当の皆様
◯福山市教育委員会教育長を始め、アドバイザーの皆様、学校教育部長、学びづくり課の職員の皆様
◯事業に関わってくださった企業の皆様(福山市、福山市外問わず福山市立中高学校に関わる企業・地域人材の皆様、「AIgrow」ツールの提供ほか、評価設計でお世話になったInstitution for a Global Society株式会社
様)
◯福山市立福山中学高等学校の教職員の皆様、生徒のみんな
3年目になった2022年度は、自分たちでゼミを立ち上げ、グループを自分たちで管理するようになった。新しくきた先生もまたチャレンジしている。(ゼミはテーマごとに分かれており、全部で70グループ以上が動いているのをGoogleClassroomで確認)まだまだ進化している最中。引き続き、チャレンジしていきます。(今後がとても楽しみ)
これまで授業や研修の企画や運営、そして、ステークホルダー(関係者)との連携やICT推進を共に進めてきた。事業が終わっても、自発的に「自分を変えたい」と思えるような学習環境をつくる。自分の言葉で語れる人を増やす。これがコンソーシアムを組んだ上でマネジメントする側のメンバー、コーディネーターの重要な機能の一つだと再確認。
ありがたいことに、広島県内の市町・学校だけでなく、県外の自治体・企業・学校の方々から興味を持っていただいたり、関係者の方からご紹介をいただくなど、こうした取り組みを始めたいと、お声がけいただくことが増えた。
これからも新しい教育の形をつくるため、まずは、自分の言葉で語り、自分を変革していきます。