マンガの台詞の句読点について
※ この記事は2014年、下記の記事が発端で生まれた呟きに対応して書き始めたのですが、一度書き上げたドラフトを読んで貰った元小学館マンガ編集者である久保田氏から「実は小学館には社内報で「フキダシ内のセリフに点丸を付けるべし」と明記されていた記憶がある」という話を聞き、その社内報が見つかったら話が違うので公開を止めていたのですが、残念ながら見つからなかったのでした(2020年頃確定)・で、今更ですが、2014年当時のまま、リンク切れがないことを確認したので、公開してみます。その間に由利(耕一)さんも山本順也さんも亡くなってしまいましたが……今話題の「LINEメッセージに句点を付けるや否や?」にも通じる話かもしれないので。(2022.8.12)
セリフに句読点ってこういう感じですという意味で、ヘッダー画像に『MASTERキートン』で一番印象に残ったセリフの画像を使わせて貰いました。自分が博士過程中退でマスター止まりなもので……w(2022.8.17)
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デイリーポータルZ:吹き出しに句読点があるのは少年漫画だけ?
この記事を受けて、ばるぼらさんが「これ、Wikipediaにも書いてある話だけど、吹き出しについてのルールが公的な文献に記述がないか知りたいんだよなあ」(https://twitter.com/bxjp/status/460417566360354816)と呟かれたので、何故か大友克洋研究家の私が始めてみましたミニ検証。
その前に少し遡って、去る(2014年)3月に行われた大友克洋『POSTERS展』のレセプション。その席で、大友克洋氏の『AKIRA』の編集者だった由利耕一氏とお話をした際に、大友作品のフォントのお話を伺ったのです。『AKIRA』終盤の歪んだ文字は、大友さんの意図を汲む形で由利さんが作っていたこと、大友さんが講談社で描くことになってからは、フォントは講談社標準のアンチゴチ(注)にしたけれど特に何も言われなかったこと等々(それまでの大友作品のフォントはナール、ファンテールが殆どだった)。そのなかで、他社で描かれた作品を短編集に収録する際にもフォントをアンチゴチに変えたというお話と共に、「句読点も全部取ったよ、あんなかっこわるい!」という証言を頂いたのです。かっこわるいのか!面白い。
注:CINRA.NET 嘘じゃないフォントの話 第5回目 マンガの空気を生み出す「文字」
その「句読点の取られた」作品には、『SOS大東京探検隊』に収録されている「RUN」があります(画像1)。(注)
右が初出の『GORO』(小学館)、左が単行本『SOS大東京探検隊』(講談社)。一つ目はトルツメで、二つ目はスペース置換という異なる処理が施されています。意図のある修正と言えるでしょう。因みにフォントもファンテールからアンチゴチに変更されています。
注:句点は付いているものの、読点はもともとありませんでした。
てな感じで興味を持っていたところへ今回の話。フキダシ内に句読点は使わない講談社ではなく、使う側である小学館の編集者にお話を伺ってみました。お答え頂いたのは、筆者と同じ大友マニアとして「同士」であり、島本和彦氏の『吠えろペン』でお馴染み、ボタQこと久保田滋夫氏。1980年に小学館入社後、『少年サンデー』、『ビッグコミック』の編集を経て、『ビッグコミックスピリッツ』編集長、『サンデーGX』初代編集長という、ある意味小学館の少年・青年マンガ誌のど真ん中を歩いてこられた方です。
冒頭のデイリーポータルZの記事にある、小学館の少年、青年マンガ誌のみ、マンガの台詞(フキダシ内外問わず)に句読点を付けるということは、ある程度のマンガ読みにはよく知られた事実。ではこれは、小学館内のルールとして明文化されているのでしょうか—
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