所感をザクっと|ミラノサローネ出張記
今回のサローネ出張は、自分的には沢山のインスピレーションを得たという意味で収穫は大きかったけど、そういうのは文章にするより今後自分が作るものに活かすとして、各所のザクっとした印象をまとめておきます。
Fuorisalone
今年のフオリサローネはとにかくよく混んでいた印象。長い列を見てあきらめたところもあった。混んでいた一因と思われるのが、体験型の展示が多かった事。LexusとかSonyとかIKEAとかDaikinとか。みんながスマホを持ち、総記者化して秒速で情報がシェアされる今、その場でしか体験できない事に価値がシフトしていくのは自然な流れだと思う。ただ中には並んでまで見るものじゃないなぁと感じるものもあった。ラーメン屋ならそれもいいかも知れないけど、それが企業ビジョンとかを発信するコンテンツの場合、並ぶというのはどうも僕にはしっくり来なくて、もっとなんと言うか街に溶けていて、予期せぬ瞬間にやさしく顔を出すくらいの関わり方がいいなと思うし、今後たぶんそんな風に変わっていくと思う。
Euroluce
本会場は、家具よりEuroluce(二年に一度の照明の展示)の会場に長くいたかもしれない。四年前は、LED独特の包容力のない光が照明のデザインとマッチしていないように思えたけど、今回はあまりそれを感じなかった。それは多分、そもそも光の質がずいぶん向上した事に加え、LEDならではの形状や柔軟性を生かしたデザインが多く見られたからだと思う。あと複数のモジュールがランダムに配置され、それらの集合がひとつの照明を作り出しているようなものも印象的だった。更にそんなモジュール集合的な構成を生かして、それぞれが反応したり共鳴したりして、人の行為に演出する照明(例えばワイングラスで乾杯したらフワッと光の波で盛り立ててくれるとか)というのもあった。
Salone del Mobile
家具のほうは、、、そんなに分かりやすく衝撃的な発見はないんだけど、相変わらずというか、デザイナーのスケッチをモノへ具現化する職人さんの美的感覚が凄まじいんだろうな、、、と毎度来るたびに感じる。作る人だけに生み出せる美というのがあると思うんだけど、なんかそういうのがにじみ出ている。僕はけっこう細部までモデルを作っちゃう派なんだけど、ここまでデザイナーと職人の高度なコミュニケーションが成立するなら、デザイナーは下手にモデルや図面を作らなくてもいいんじゃないか、、、とすら思ってしまう。一方、これは自分のフィルターがかなり入っているとは思うが、アイコニッシュなデザインや、ちょっと一捻り的なデザインは、もうあまり魅力的には映らなかった。これから先、テクノロジーが進化すればするほどに、従来の機能を提供するモノは空間やデータに溶けていって、それでもなおモノがモノとして存在すべき意味を考えれば、モノには作り手の体温が必要になる、、、僕はそう思っている。