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【本の運命】ベストセラーの価値は夢まぼろしのごとくなり?

岩波文庫から、最近、下村湖人の
『次郎物語』が刊行されている。
ええ?なぜ今、次郎物語を出すのかな?
まず、採算とるの、難しいのに、
どうしたのかな、岩波文庫さんは…!

『次郎物語』は、
大正時代の超ベストセラーです。
自分の祖父母の世代なら読んだり知ってる、
まっすぐな少年の成長小説です。
今は教養小説と言われている。
現代人が読んだらかなり退屈な内容。

これは数年前に漫画化したら
大ヒットした戦前の
青春小説『君たちはどう生きるか』の
次を狙っているなあ(笑)?

その時代には感動を呼び、
読んでない人はいないくらい
今の鬼滅くらい売れた作品。

でも不思議なもので、
次郎物語を、今は50、60代でも
読んでる人は珍しいのでは?
70、80代の人が辛うじて、
タイトルや作家名に反応できるかな?
それくらい忘れられていた作品です。

『君たちは…』があれだけ
数年前に大ヒットしたんだから、
『次郎物語』もきっと…?
いやいや、それはないなあ。

ベストセラーになった本の
半分くらいは50年の歳月に勝てず
風化してしまうケースがある。
半分は、生き残る。

ベストセラーほど、
腐りやすいのは確か。
それはその時代ならでは過ぎるから。
時代と寝過ぎた作品は
次の時代に残る力がないのです。

『世界の中心で愛をさけぶ』なんて
もうみんな忘れてるし、
今もなお人々の心を震わせるか?
というと、正直かなり辛い。

『学問のすすめ』みたいに
発売時も現代も面白い本というのは
もう聖書みたいな何かを宿した
ごく一部の本だけなんでしょうね?

試しに「ベストセラー」「年代」
「流行」で検索してみると、
最近は、ハリーポッター以外は
ほとんど今は刊行されていないか
後は教祖さんの本だけです。
現代流のバイブルだからかあ。

『NOと言える日本』や『大往生』
なんて懐かしさしかない。
シドニィ・シェルダンや大前研一
といった顔触れももう昔の人。

なんて笑ってはいられません。
我にかえってみると……?
今は必須のように見える本、
今とても価値が高いと感じる本が
案外、50年もたてば、
「懐かしさしかないわあ」と
笑われてるかもしれない。

そう考えると、
本の価値や魅力も、
政治家や芸能人と同様に、
淀みに浮かぶ泡沫かもしれない。
儚いものに過ぎないかもしれない。

ああ、本もまた人間と同じように
夢まぼろしのような存在なのでした。
それならば、余計、今読みたいと
思う気持ちで読むことは
唯一の拠り所でしょうか。

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