【推薦図書】ようこそ小川洋子ワールドへ。
作家・小川洋子が
日本芸術院賞に選ばれました。
日本芸術院賞がどれくらい
素晴らしいのか?
ちょっとピンと来ないのですが、
この賞は、
絵画や彫刻や小説など、
芸術の色んな分野で
独創的な作品を作っている人を
年に一回、表彰してるらしい。
確かに、小川洋子さんは
独創的な作家、価値観ですね。
林真理子はリアルな小説です。
桐野夏生もまた過酷でリアルな小説。
角田光代も世界観はリアルな価値観。
江國香織は多少、ファンタジックな
空気もありますが、
小川洋子に比べたら、
リアルさも色濃いですね。
それに比べたら、
小川洋子さんは、明らかに
不可思議な価値観に支えられ、
シュールで悲しい世界観に
裏付けられていますね。
人物もなかなかクセが強い人ばかり。
小川洋子さんみたいな作家は
川上弘美、川上未映子らが
その系譜になってますかね。
現実に地続きな世界観、
つまり、リアルな小説が
好きな人には、
小川洋子はちょっと入りにくい
かもしれませんね。
では、極私的に、
小川洋子ワールドに入りやすい
作品ベスト3を考えてみます。
「密やかな結晶」(講談社文庫)
記憶が狩られていく島の物語。
これだけ聴いても、そそられない
かもしれませんが、
小川洋子の価値観は
切ないシステムに人間が
支配されている事が多いですね。
小川ワールドには一度ハマると
シュールな世界が開けます。
「ミーナの行進」(中公文庫)
これまたシュールで、
ナイーブでユーモラスな小説です。
リアルな小説が好きな方には
抵抗があるかもしれない。
でも、まず数ページ読んでいき、
少し好きかもしれないと思ったら
ぜひオススメな一冊です。
「ことり」(朝日新聞文庫)
精神障がいを抱える親戚の
おじさんの死から始まる作品。
そういえば、忘れてました、
小川洋子最大のヒット作、
「博士の愛した数式」でも、
博士も、子供も
精神にクセを抱えながらも
人生をユーモラスに生きる
前向きな姿が小川さんには珍しく、
エンターテイメントになっていた。
それから、
もう一冊、オススメの対談本が
ありました。薄くてすぐ読めます。
心理カウンセラーの河合隼雄先生と
小川洋子さんの二人が、
物語がどれだけ人生に必要かを
語りあった読みやすい本です。
タイトルは、
「生きるとは自分の物語を
つくること」(新潮文庫)。
物語を作り続ける作家と
生きる困難に取り組んできた
心理カウンセラー、河合隼雄先生。
この2人が対話するだけで、
もうどれくらい楽しくて
重要な対談になるか、
ワクワク、ウキウキしますよね。
毎年一回は読みたくなる一冊。
それから、小川さんは
アンネ・フランクについても
非常に深く追求しており、
アンネに関して書く時は、
どこか緊密な空気になります。
詳しくは、
「アンネ・フランクの記憶」
(角川文庫)をどうぞ。
それから、
もうベスト3冊を挙げ終えましたが、
やはり小川洋子ワールドに
浸りたい場合は、
デビュー2作目にして
芥川賞作品「妊娠カレンダー」。
お姉さんの妊娠という、
身近な生活に不気味な気配が
ひたひたと滲み出す傑作です。
そういえば、小川洋子さんは、
手塚治虫先生の漫画がお好きでした。
昔は、手塚治虫短編集を出すとき、
僭越ながら、勝手に、
見本を送らせて頂いていたことを、
思いだしました。