【Forbes誌】人工の光から生じる「光害」がアルツハイマー病の発症リスクに関係、研究結果【米ラッシュ大学医療センター】

米ラッシュ大学医療センターの科学者らが米国内で行った研究で、人工の光から生じる光害(ひかりがい)、特に夜間の光害が顕著な州ではアルツハイマー病のリスクが高いことが示された。アルツハイマー病の発症に生活環境が関連していることを示唆する最新の研究となる。

学術誌『フロンティアズ・イン・ニューロサイエンス』にこのほど掲載された
研究論文で、筆者らは屋外の人工的な光への夜間の曝露はアルツハイマー病の発症リスクの高さと相関していると指摘している。

研究チームは衛星で取得したデータを用いて各州の夜間の光の強度を測定。そのデータと各州のアルツハイマー病有病率を比較したところ、調べたすべての年(2012〜2018年)において、光害が大きな州でアルツハイマー有病率が高いことがわかった。

研究によると、光害が最も顕著で、アルツハイマー病有病率も高かったのはフロリダ、コネチカット、ニュージャージー州。一方、光害が少なくアルツハイマー病有病率が低かったのはモンタナ、ニューメキシコ、バーモント、アイダホ、ワイオミング、オレゴン州だった。

夜間の光害は、アルコール乱用や慢性腎臓病、うつ病、心臓病、肥満よりもアルツハイマー病のリスクと強い相関があったが、心房細動や糖尿病、高脂血症、高血圧、脳卒中よりは少なかった。

だが65歳以下の人では、夜間の光への曝露は調査した他のどの要因よりもアルツハイマー病の有病率と強く関係していた。

アルツハイマー病の発症リスクとの関連が示唆されるその他の環境要因には、大気汚染や
化学物質にさらされているといったものがあることがこれまでの研究で示されている

ラッシュ大学医療センターの研究によると、世界の人口の80%が光害にさらされているという。

光害とは、遮蔽が不十分など明るすぎる照明器具による夜間の人工の光による害と定義されている。こうした光は長い間、ほぼ無害だと考えられてきたが、研究者らによると、最近の研究では光害が生態や行動、生体、健康に悪影響を及ぼすことが指摘されている。

英ロンドン自然史博物館によると、光害という概念は1970年代に登場した。夜空を研究する天文学者らが、人工的な光によって研究が妨げられることが増えていると指摘した。当時、夜空が毎年3〜6%ずつ明るくなっていると推定されていたが、その割合は世界中で10%近くまで上がっており、北米では10.5%だと同博物館は指摘している。

夜空の景観に影響を与えているのに加え、
米海洋大気庁(NOAA)によると、およそ3割の人が天の川を見ることができなくなっているという。夜間の過剰な照明は気候変動につながるエネルギーの浪費であり、夜間の大気の浄化作用を低下させる可能性があると科学者らは指摘している。

ラッシュ大学医療センターの今回の研究と同様に、光害が人間や野生生物の健康に悪影響を及ぼす可能性を示唆する研究は増えている。
米医師会によると、特にLEDライトや電子機器による光害は概日リズムに沿った睡眠に影響を及ぼし、これは肥満のリスクを高め、メラトニンの分泌を減少させる可能性があるという。また、夜間の屋外の人工の光への曝露は肥満やうつ、不安、記憶障害、動脈硬化、がんの増加にも関係しているとラッシュ大学医療センターは指摘している。

科学誌『
ナショナルジオグラフィック』は、光害が顕著な国としてシンガポール、カタール、クウェートなどを挙げている。

ウミガメは、極めて大きな光害の影響を受けている種として長い間研究されてきた。ウミガメのメスは砂浜に卵を産み、孵化した子ガメは月の光を利用して海の方へと向かう。だが、人工の光があると子ガメは方向感覚を失い、意図せず海から遠ざかってしまう。こうなった場合、大半は
生き残れない。同様に、学術誌『エンバイロン・ヘルス・パースペクト』で発表された研究論文によると、毎年約1万羽の渡り鳥が光の影響で高層ビルに衝突してけがをしたり死んだりしているという。


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