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#51理学療法士の中国リハビリ記録【中国市場における日本リハビリの生存戦略】No.3
中国では、医療やリハビリに対するコスト意識が非常に高く、「目に見える効果」がなければお金を払う意味がないという価値観が一般的です。したがって、日本人が提供する自費リハビリが成功するためには、効果の限界を理解しつつも、患者に「納得できる価値」を感じさせる工夫が不可欠です。
「リハビリの限界」を踏まえた戦略
A. 目に見える「即効性」と「短期成果」の提供
完全回復重視とはいえ、患者が求めているのはリハビリによる「完全回復」ではなく、「改善の実感」である可能性が高い。
→例えば、「3ヶ月後に回復する」よりも、「初回のリハビリで違いを感じられる」方が価値を認識しやすい。痛みの軽減、関節の可動域の改善、歩行の安定感向上など、短期間で患者が実感できる成果を出すことが重要。
初回で「〇〇の可動域が〇〇%向上」「歩行が〇秒短縮」「痛みスコアが〇点改善」など、数値化できる効果を提示。
B. 「成果保証型」や「分割払い」などの支払いモデルの導入
「効果がなければ支払いたくない」という中国患者の心理に対応し、「成果保証型」の支払い制度を導入することで、リスクを低く見せる。
→例:「3回の施術で〇〇の改善がなければ半額返金」
→例:「〇回コースを受けた後に満足しなかったら、次回以降の料金は不要」
これにより、患者が初回から高額な負担を感じず、安心して契約できる仕組みを作る。
C. 「価値」ではなく「投資」として訴求
患者が「払う価値がない」と感じるのは、リハビリを「消費」と捉えるから。
→ リハビリは「健康と未来の生活への投資である」と訴求する。治療費と比較する啓蒙を実践する
→例:「リハビリに〇〇元払えば、将来的に〇〇元の医療費を節約できる」
→例:「1回の転倒で〇〇万元の入院費、リハビリを受ければそのリスクを減らせる」
「リハビリの限界」を受け入れた上で、どう患者に納得感を持たせるか
A. 「機能回復」ではなく「生活の質(QOL)の向上」を強調
完全回復が難しい場合でも、「生活の質(QOL)」が向上すれば、価値のある成果となる
「あなたの歩行スピードが〇秒短縮されることで、買い物や旅行がしやすくなる
「痛みが軽減されることで、より快適な生活を送れる」
「回復しないなら意味がない」という考え方を、「改善すれば未来が変わる」という考え方に思考転換する。
B. 科学的エビデンスとデータの活用
「日本式リハビリの実績」や「論文データ」を使って、効果の信頼性を保証
→例:「日本の〇〇病院では、同じ症例で〇%の改善が報告されている」
→例:「日本の研究によると、〇〇療法は〇%の患者に有効である」患者の状態を評価し、「あなたの状態では〇%の改善が期待できる」と明確に説明
※%表示の基準化が必要数値とビジュアルを使った説明で、「効果があるかもしれない」ではなく、「効果の予測値」を明確にする。
日本人の自費リハビリが市場で生き残るための差別化ポイント
A. 「高級志向」ではなく「プレミアム価値」
「高いから良い」ではなく、「価値があるから選ばれる」というブランディングが必要。
VIP向けサービスではなく、改善を提供する特別プログラムとして打ち出す。
→例:「あなたの状態に合わせた完全オーダーメイドリハビリ」
→例:「日本の最先端技術を活かしたプログラム」
B. 中国人にはできない「日本式の強み」を押し出す
痛みを最小限に抑える
細かい評価と説明
患者個別のプログラム作成
科学的アプローチ
これらを強調し、「中国のリハビリと〇〇が違う」と明確に伝える。
C. 口コミと紹介制度の活用
中国では口コミと紹介が非常に重要。成功した患者の声を最大限活用する。
→例:改善した患者の動画・体験談をSNSで発信
→例:「紹介したら〇〇元割引」などの紹介制度を導入実際に効果があった患者が「このリハビリは良い」と発信することで、新規患者を獲得しやすくなる。
まとめ
中国患者は「結果が出ないなら払いたくない」という価値観が強いため、短期間での効果実感を重視する必要がある。
完全回復ではなく目に見える改善を提供し、満足感を与えることが鍵。
効果保証や分割払い制度などを導入し、患者の心理的ハードルを下げる。
エビデンスやデータを活用し、リハビリの信頼性を保証。
口コミや紹介を活用し、信頼を積み上げながら市場を拡大する。
戦略次第で市場の限界を広げることは可能。
このように、中国市場の特性を理解し、患者心理に基づいたアプローチをすることで、日本人の自費リハビリは市場で競争できる可能性がある。
結論:限界はあるが、戦略次第で市場は広げられる。
備考
上記で述べつつも、僕たちの施設は利益最小化かつ患者満足度最大化の理念に準じているため、ビジネスとは程遠い取り組みをしています。
僕たちの施設ではリハビリのコマ時間に費用が発生するものの、基本的に患者は一日中施設にいて自主練するのが特徴です。自主練の指導は無料でセラピストが行います。この付き添い型の自主練指導は患者さんがとても喜んでくれるポイント。
採算面では弱いですが、赤字ではありません。商業性の前提として、医療者として患者さんに対してやるべき義務と責任を果たすことを忘れず、この取り組みが継続できれば中国で生き残れる施設になると期待しています。
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