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「アイス・バケツ・チャレンジ」のその後~ファンドレイジングのケーススタディとして考える

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

「アイス・バケツ・チャレンジ」を覚えていますでしょうか。

バケツに入った氷水を頭からかぶり、次にチャレンジしてほしい人を指名する。氏名された人は、氷水をかぶるか、寄付するかを選ぶ(両方行う場合が多かったようです)。
当時このチャレンジは世界的に拡がり、ビル・ゲイツ氏をはじめ多くの著名人が関わり、わずか6週間で約1億1,500万ドル(250万人の支援者)を集め、2014年全体では約2億2,000万ドルにまで昇りました。

このチャレンジをファンドレイジング面として評価する記事がありました。

1.「アイス・バケツ・チャレンジ」後のファンドレイジング

アメリカの非営利専門紙「クロニクル・オブ・フィランソロピー」によると

このチャレンジで寄付した人が、もう一度寄付するリピート率は1%以下
その寄付者のほとんどは、これまでに寄付したことがない人であった可能性が高い

チャレンジを主導した「The ALS Association」(以下、ALS協会)のこれまでの同リピート率は15-20%で、またアメリカの非営利全般では平均23%(米国のファンドレイジング協会等による2016年の調査レポートより)から考えると、極めて低い数値であることがわかります。

ここで一つ考えられることは、過去と同じ支援者コミュニケーションを行っていても、支援者の属性によって全く効果が出ない可能性があることです。実際に、ALS協会は寄付者にすぐ感謝を伝え、定期的にコミュニケーションをとっていたそうですが、彼らの満足度を維持することが難しかったようです。

これに似た課題は、国内の非営利組織でもしばしば聞きます。例えば、年齢層の異なる支援者で満足度が変わったり、応援する事業や関心度合によっても変わってきます。そのため、非営利組織がとりたいコミュニケーションではなく、できるだけ支援者がとりたいと思えるコミュニケーションを考えることが大切です。

2.寄付者の気持ちを知るには

ALS協会も、おそらくそうしたことは考えていたけれど、自分たちだけではその答えを見つけることができませんでした。そこで、当時の寄付者に、動機や寄付の使い道の希望、ALS協会との関わり方などを調査したそうです。
その結果、支援者が望んでいたことは

"What they wanted was to understand and achieve the greatest impact: treatments and a cure."
『寄付によるインパクトを理解し、(ALSの治療ひいては完治を)達成すること』

おそらく、こうした背景には、

・自分たち寄付者が起こした行動の結果として、その課題や関わっている人たちがどう変わったのか、

・そして、自分たちも(当事者でないけれども)仲間として関わり、一緒に達成していきたい、

という、成果を知り、仲間になりたい支援者の想いがあるのではないでしょうか。

3.新たな挑戦

ALS協会は調査結果を踏まえて、「アイス・バケツ・チャレンジ 5周年記念」のイベントを開き、資金で達成したことを具体的な数値や成果を分かりわすく報告するとともに、今年5月から『Challenge Me』というファンドレイジングのキャンペーンを始めました。

この特設サイトを見ると、5年前のチャレンジがどういうインパクトを創出したのかが明示さら、これから仲間として一緒にしていきたいことを、具体的なアクションとともに提示しています。

このキャンペーン、ぜひ成功してほしいですね。

ちなみに、「アイス・バケツ・チャレンジ」をした人の再獲得に向けて、様々なファンドレイジングの取り組みを行ったようです。チャレンジした人のリピート率は上述の通りですが、下記のような成果も出ており、その取り組みが無駄になることはなかったようです。

2014年のチャレンジ前と2018年を比較する
・年間予算:6,500万ドル → 9,200万ドル
・平均寄付額:44ドル → 129ドル
・中堅及び大口寄付者の数は、40%の増加


~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

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