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前できた事ができなくなる、は成長だ。

こんにちは。
野元準也です。
演出家・劇作家・演技トレーナーをやっています。


もう夏休みが終わっている子たちもいれば、明日まで、という子達もいるでしょう。
8月の終わり、みなさんはどのように過ごしていますか?
今日は、

前にはできていたのに、今はできなくなった。

という悩みについて考えてみたいと思います。
この悩み、たくさんの人が持っていますよね。
演技をしている人たちの中で、どんなことがあるかというと

■小学3年生の場合
保護者の悩み
・もっと小さい時は、泣き演技も得意だったのに、最近恥ずかしがってできなくなった。

■中学生・高校生の場合
本人の悩み
・前は、考えずに勢いでパワフルに演じることができていたが、台本のことをもっと考えるようになって、勢いがなくなった。

■大人の悩み
本人の悩み
・自分のセリフを完璧に喋ることができていたのに、会話に相手に意識が行きすぎてセリフを間違えることが増えた


これらは少しの例ですが、
それぞれ、前にできていたことが、だんだんできなくなってきた、
という悩みをもっています。

この悩みを持っている人たちの多くに共通することがあります。
それは、

退化した。

と思ってしまっていることです。
前にできたことができなくなってしまった=退化した
と捉えているのです。

でも、これは、多くの場合そうじゃないのです。

退化とはむしろ逆で、
「成長」なのです。

何でできなくなったのに成長なんだ?
と思う方も多いかもしれません。

ここで大切なのは、

どうしてできなくなったのか?

を知ることです。

できていることができなくなる。
ということは、「一つの変化」です。
その変化が、どうして起こってきたのかを、少しでも自分で知ってあげること、
子どもには、大人が気づいてあげながら、否定観念にならぬよう認めてあげることが大事です。


例えば上記の小学生の場合
・小さい時は、泣き演技が上手だったが、前のようにできなくなってきた。

これは、何ででしょう?
例として、
「お母さんがいなくなった」
という情報だけを渡された設定だったとします。
もっと幼い時に、よく泣けていたという時、どういう感覚だったのでしょう?

お母さんがいない→恐怖・寂しい・悲しい

とシンプルに感情から行動に直結して泣いていることも多いですね。
それ以上考えることができないから無我夢中になれていたところです。
では、小学3年生くらいまでなってくると、
様々な知識や経験も子どもなりに積んでいます。
そうすると、
「お母さんがいなくなった」
だけではは、悲しくて泣く、に直結することは少なくなるでしょう。

・どうしていなくなったのか?
・何か自分がしたのか?
・今どこにいるのだろう?
・何があったのか?

などと、自分なりに「思考」を巡らせられるようになっているのです。
感情とともに、思考の深さが変わってきますので、
以前と同じでいられるはずがないのです。

よく考えてみれば、
この思考ができるようになれていること、
客観性や視野の広さが以前よりもついていること、
これがとても大きな成長なのです。
この変化を、しっかり成長だと認めることができなければ、
自分のいいところを伸ばすことなどできません。

前にできていたことが、前よりも考えられたり広い視野で見られるようになった分、できなくなったということは、
それを超えてできるようになっていくための新しい大きな壁を迎えることができた、ということです。

だから、その子も、いろいろな思考が入っている中で「泣く」ところにまで
辿り着けるようになっていったとしたら、以前よりももっと感情移入させる演技に進化するはずなのです。
やってることは難しいです。近道ではありません。
自分の中でたくさんの実験を繰り返しながら発見していく壮大な自由研究みたいなものですから、少しずつ右肩上がりに成長していくのだと気を楽にしてほしいのです。
だから、できないことを悪く思わずに、その過程を認めてあげることを意識してみてほしいのです。

■中学生・高校生の場合
本人の悩み
・前は、考えずに勢いでパワフルに演じることができていたが、台本のことをもっと考えるようになって、勢いがなくなった。

⇨これも、先ほどと同様です。
知らないからこそ考えずに飛び込めていた良さがあります。
それが、いろいろなことに気を配れるようになり、
たくさんのことを考えられるようになったからこそ、勢いだけで演じるのも難しくなってきた部分もあるのです。
これは、超えるべき新しい壁にぶつかったという財産です。
気付け始めた繊細な部分に、さらにまた勢いも乗せられるようになったのなら、以前の勢いに乗せていただけのものより、より深みのある演技につながっていくでしょう。
くるべくタイミングでやってきた、健全な試練だとも思えるのです。


■大人の悩み
本人の悩み
・自分のセリフを完璧に喋ることができていたのに、会話に相手に意識が行きすぎてセリフを間違えることが増えた

⇨このケースも、自分のセリフを話すことだけに意識があって、
自分のセリフを間違えない、自分のセリフの表現の仕方ばかりに意識が向っていた人だとしたら、とても大きな成長なのです。
自分のやることにしか意識がいっていない人では、相手が誰になろうと、
リアクションも、細かなニュアンスもやりとりの中で生まれてきません。
そこに一生懸命になっていた人が、
相手役と「関わり合い」「反応」をし、「相手の様子を気にする」ことで
自分のセリフに影響を及ぼすことができるようになってきたなんて、
僕は、一つの殻を破り始めている大成長だと思っています。

どんな例にも、変化が起きてきたには理由があるのです。
それがいい理由かもしれないし、嫌な理由かもしれません。
だから、結果ばかりを気にしていることだけでなく、
どうしてそうなっているのか、客観的に見つめて、
最後は自分を大事にして認められることが大切だと思います。


偉そうなことを言っていますが、
僕自身も、何年も続く大スランプ時期があり、
長く苦しかった時がありました。
自分が思い描いている姿と違い、
前できていたことができなくなり、自分がダメになったと苦しんで、否定して、
を繰り返していた時期です。
プライドも、自信もゼロになりました。
そのため、
前より自分ができるようになったことにも、目を向けることができなくなり、
より自分の良さがわからなくなり、いつも不甲斐なさばかりを抱えて、
ダメな方に向かってしまいました。
最終的には「もういやだ」って思ってしまったり。

自分でも、これらは、
この苦しく感じる時期も、
自分の見える範囲や考えられる範囲が広がったからこそ感じることができたことなんだと、理解することができてから、

今の自分ができることに一生懸命になる

と、いい意味で開き直り始めることができました。
そうすると、逆に楽しくなってきて、意欲も湧き、
いつの間にか一つ壁を少し越えられている感覚に気づきました。

そして、もっと勉強したくなってきて、
新しいことにもどんどんチャレンジをしていこうとより思えるようになってきています。


僕がレッスンで大事にしていて、
生徒のみんなに気をつけてもらっていることの一つに

「良いところと改善したいところの両方のセルフフィードバック」

があります。
誰でも、自分のダメだったところを挙げるのはそんなに難しくないことです。
でも、それを
・次にどんな手を打てば改善できるのか
・そもそも自分のどの武器に活かすために改善したいのか
を考えられている人は少ないのですね。

だから、誰よりも一番自分が、

自分の成長しているところ

を感じて認めてあげられるようになっていけると素敵だと思うのです。


本日はここまで。
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演技が上手くなるためのコツや取り組み方の工夫を、マガジンで提供していきます。 野元先生がレッスンで教えている事や、 レッスンでは教えられな…

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