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最終日。ミニマルな展示と垣根の低さのお話。
「新・小説のふるさと」展では、いろいろな方からご感想をいただきありがとうございました。その中でも多くの方が展示の仕方が良かったと言ってくださりました。
今回このテーマでの展示を考えた時に最初に思い浮かんだのが標本箱でした。大きめの標本箱にそれぞれの小説の写真をピンで留めて、一つの箱が一つの小説をあらわすかのような展示です。しかし大型の標本箱の値段のことやガラス面が封印されたかのような印象を与えて、鑑賞者との距離感が思った以上に離れるなです。それにもまして標本箱をオブジェ化して一冊の本のシンボルとして見せるには、中の写真のインパクトが薄過ぎると感じていました。
御覧いただいた方にはお分かりだと思うのですが、今回展示の作品にはあまりインパクトのあるものは少ないと思います。一眼レフはほとんど使わずに誰もが写せるコンパクトカメラで撮影された光景は、これまたいわゆる取材も極力しないで、誰でも撮れる場所からスナップされたものがほとんどです。ゆかりの地を巡る旅は確かに特別なものではありましたが、撮られた写真は自分で言うのもなんですが、平凡なものなのです。
ただ、その平凡な旅の写真があらすじと共にいくつも、いくつも並ぶと、小説の内なる世界を本という「もの」の存在感とともに表せる空間ができるのではないかと思いました。
ここはミニマルに徹するべきだと決心しました、最初に発想した標本箱もいま思えばミニマルなものです。写真の大きさは文庫本のサイズで額装はシンプルな木枠にしました。奇しくもそのサイズは単行本とおなじになり、あらすじも、ご挨拶分も、プロフィールも全て同じサイズでさりげなくどこを見ても本のイメージを感じてながら、さまざまな物語りが同時に存在する空間となりました。
ミニマルで写真の垣根の低さが、かえって観に来られた方の邪魔をしない。物語りと自分の巡る思いに没入出来ると言った感想を多くいただきました。
ありがとうございました。
(撮影ノートからのマガジンは写真展後も、しばらく続きますのでお読みいただければ幸いです)