
煙の向こうに消えた想い
本当なら、あの日、彼と別れた瞬間にすべてを忘れて、
前に進むつもりだった。
彼が吸っていたアイコスのミントの香りも、
彼の笑顔も、全部過去のものにできると思っていた。
しかし、それはできない。
なぜならば、彼のいない生活が想像以上に辛かったからだ。
朝起きて、いつも一緒に飲んでいたコーヒーを一人で淹れると、
彼が隣にいない現実が胸に突き刺さる。
そんな時、彼を思い出させるアイコスを吸えば、
少しでも彼に近づける気がした。
時間は刻々と過ぎていく。私たちはどうすればいいんだ。
アイコスの煙を吐き出しながら、
私は心の中で彼との思い出を追いかけていた。
新しい恋なんて考えられない。
彼と過ごした日々が頭から離れず、
どんなに吸っても彼を忘れることができない。
仕事仲間や友人たちが心配してくれる。
「最近ちょっと元気がないみたいだけど、大丈夫?」
そんな言葉に、私はいつも「大丈夫だよ」と笑って返すが、
その笑顔はどこかぎこちない。
誰も知らない、この胸の中の空虚感を
どうやって埋めればいいのか、答えは見つからない。
私は決めた。
「このままじゃダメだ」。
アイコスのミントの香りに彼を感じるのは、
もうやめようと思った。
彼の思い出から解放されるために、
アイコスを捨てることにした。
だが、最後の一本を吸い終えた瞬間、涙がこぼれた。
彼を忘れるためのタバコが、
今や彼を思い出すためのものに変わっていたことに気づいた。
捨てようと思ったアイコスが、手から離れない。
結局、私はそのアイコスを再びポケットにしまい、
「これが最後」と自分に言い聞かせて、
また吸ってしまうのだった。
数日後、職場で誰かが
「最近、アイコスやめたんだって?」と聞いてきた。
私は苦笑いしながら、
「うん、でも…もうちょっとだけ吸わせて」と答えた。
彼を忘れる日はまだ遠そうだが、
少しずつでも前に進もうと決めた瞬間だった。
失恋の痛みは、時間と共に癒えることが少しずつわかってきます。
大切なのは、自分を責めすぎず、
少しずつでも前に進むことを許してあげることです。
忘れるために何かに頼ることもあるでしょうが、
それが悪いわけではありません。
ただ、その中で自分を大切にすることを忘れないでください。
最終的には、次のステップへ進むための勇気を持つことが大事です。