【ロック名盤100】#38 Black Sabbath - Paranoid
今回紹介するのは、ブラック・サバスが1970年9月にリリースした「Paranoid」だ。ハードロック屈指の名盤にして、ヘヴィ・メタルというジャンルを定義したレコードのひとつとも言われるアイコニックな1枚である。
メタル特有のローで歪んだギター・サウンドは、サバスのギタリストであるトニー・アイオミが生み出した。彼は10代のころ指先が欠けてしまうという事故があった。そのため指にキャップをはめ、チューニングも下げて演奏しなければならなかった。これが重厚感のあるメタルのサウンドの成立に貢献しているというわけだ。彼こそまさしくメタルのゴッドファーザーである。
だが、サバスにはもうひとりゴッドファーザーがいる。絶対的なカリスマ、オジー・オズボーンだ。オジーの苦悶に満ちた叫びはとにかく心に響き、言葉では表すことができない衝動に突き動かされる。リズム隊のギーザー・バトラーとビル・ウォードの演奏も圧倒的。サバスはメンバー交代が何度もあったバンドだけど、この時期が満場一致で最高の組み合わせだったと思う。
1 War Pigs
2 Paranoid
3 Planet Caravan
4 Iron Man
5 Electric Funeral
6 Hand of Doom
7 Rat Salad
8 Fairies Wear Boots
僕がサバスで1番好きなのがオープナーの「ウォー・ピッグス」で、ボーカルもギターもベースもドラムも全部が圧巻のパフォーマンス。まさしくこの曲は「世界で1番メタルに狂える8分間」といっていい。ギターリフだけで存分にアガれる表題曲もいい。やけに響いてこもった感じの声で捲し立てるオジーのボーカルが最高。こうして聴くとやっぱりオジーのボーカルのアプローチはロバート・プラントに似てる。これもやはりリフが最強の「アイアン・マン」ももれなくサバスの代表曲だ。今回聴き直してみて新たに個人的なフェイバリットになったのが「ハンド・オブ・ドゥーム」。完全にリズム隊の2人が最高のグルーヴを作ってる。
ここまで書いてこのアルバムがどれだけ後世のメタルに影響を与えたのか、ということはわかってもらえたと思うが、ブラック・サバスの影響力はメタルのみには留まらない。ハードコア・パンクやグランジ、オカルト方面のロックへの影響も絶大だ。特にグランジのサウンドは「パンクとブラック・サバスの結婚」とも表現されるほど。多方面のジャンルの原点としていろんなところに辿っていけるというわけだ。この機会に本作を聞いてみて、様々な音楽体験を求めて広がっていってほしい。
↓「パラノイド」