【ロック名盤100】#60 Eagles - Hotel California
今回紹介するのは、イーグルスが1976年12月にリリースした「ホテル・カリフォルニア」だ。日本ではウエストコースト・ロックというジャンルに分類されることもあるが、世界的に有名なカントリー・ロックのアーティストである。このアルバムはアメリカ史上最も売れたアルバムのひとつであり、クラシック・ロックを象徴する名盤との評価を勝ち取った。本作のリリースによってイーグルスのスーパーバンドとしての地位も確固たるものにした印象だ。
本作は彼らのトレードマークであるカントリー調からはやや離れ、ポップでストレートなロックを強調するようなつくりになっている。そして全体のテーマとしてはコンセプトアルバムであると言えるだろう。カリフォルニアを中心として、アメリカ社会の闇への批判や音楽業界の強烈な成功を追い求める姿勢についての皮肉が主に綴られている。表題曲の「ホテル」とは誘惑と堕落の象徴であり、一度入ると出られない場所として描かれている。これはアメリカの消費主義や物質主義に対する批判という解釈もされており、そういったコンセプトが本作が高く評価された理由だったのだろう。豪華だがどこか影が感じられるアルバムジャケットが示唆的といえる。
1 Hotel California
2 New Kid in Town
3 Life in the Fast Lane
4 Wasted Time
5 Wasted Time (Reprise)
6 Victim of Love
7 Pretty Maids All in a Row
8 Try and Love Again
9 The Last Resort
表題曲「ホテル・カリフォルニア」なしに本作を語ることはできない。イーグルスの1番の代表曲だろう。イーグルスのソングライターチーム(ドン・フェルダー、ドン・ヘンリー、グレン・フライ)の天才極まる、というほどに完成度が高い。魅力的で妖艶なメロディ、ロックを象徴する後半のギターソロ、そして歌詞。豪華で魅力的に見える「ホテル」には逃れられない閉塞感があるというメッセージには、当時のアメリカについての批判のはずが現代の極東で暮らす僕にも響くものがある。
イーグルス本来のカントリー・ロック風味な「ニュー・キッド・イン・タウン」、ギターリフがカッコよすぎる僕のイーグルス1番のフェイバリット「ライフ・イン・ザ・ファスト・レーン」、カリフォルニアの美しい自然が壊されていくことについて歌った「ラスト・リゾート」など、名曲揃いで捨て曲なし。アルバム全体で飽きずに楽しむことができるはずだ。
結果的に商業主義を批判した本作は売れに売れ、この「ホテル・カリフォルニア」に負けない傑作を作らなければというプレッシャーに苦しめられた末バンドは1980年に解散。時系列としては矛盾ではあるが、そういったバンドの背景を聞くとより一層このアルバムの切なくも儚いムードが強調されるように聴こえてならない。間違いないのは、これが1970年代ロックを象徴する美しい名盤であるということだ。
↓「ホテル・カリフォルニア」