上場までの5年半、20代でGoodpatchから学んだ8つのこと。
こんにちは、Goodpatchの佐宗です。
2015年初めに入社してからいつの間にか6年目。
24歳で入社して、先月ちょうど30歳になり、会社も上場したので、1つの区切りとしてその過程で感じたことを書き記しておこうと思います。20代のすべてを、Goodpatchに捧げてきた1人の登場人物視点のストーリーです。
■デザインの力を信じて、Goodpatchへ
大学は経営学部。学生インターン先はKLabの事業開発室。当時の自分はデザインのデの字もない環境で過ごしていました。
そんな自分がデザインと初めて出会ったのは新卒で入社したNTT Communications時代。当時デザインアプローチで事業を作る現場経験をした自分はデザインの虜になってしまい、そのまま『デザインの価値をもっと世の中に広めたい』と感じ、Goodpatchの門をたたきました。
詳細はReDesigner Magazineの記事を読んでいただけると嬉しいです。
■2015年、入社前夜
初出社が迫った2015年年始。土屋さん(社長)からこんなメッセージをもらいました。
『グッドパッチで学ぶという意識ではなく、グッドパッチを一緒に作り、成長させていく意識でいてもらいたい』
これは今でも自分の大切にしている指針の1つです。
当時24歳で大企業の看板に完全に乗っかっていた自分は、なるほど、頑張ろう。程度にしか受け取れていなかったのですが、この『船に乗る人なのか、船を漕ぐ人なのか』の違いを認識することは今振り返ると会社の成長に大きく影響すると感じています。
学び①船に乗る人ではなく、船を漕ぐ人になる
■Prottへの配属、泥のように働く日々
Goodpatchは今でこそ多くの方に知っていただいていますが、当時は社名よりも先に、自社サービスのProttを起点に会社のことを知った人も多いと思います。
自分は入社してからの3年間、このProttチームで働いていました。最初のミッションは自社事業であるProttをグロースさせること。Prottがリリースされてまだ3ヶ月、チームメンバーはまだ両手で数えられる規模。当時まだ売上が60万円くらいだったことを記憶しています。
意気揚々とスタートアップに飛び込んだのはいいものの、SaaS事業をグロースさせた経験なんてありませんでした。MixpanelとGAで数字を分析して、施策をいくつか提案するも2ヶ月。圧倒的に何も成果が出ない・・!!
そんな焦っている若造を見た土屋さんから、「ジュンはお客さんと直接対峙した方が価値を発揮できるんじゃないか?猿川さん、ジュンをよろしくお願いします!」と、入社して早々職業が変わりました。これぞドスタートアップ!(違う
(当時増床したAnnex。毎朝朝礼していたのが懐かしい・・)
そうして当時の上司(後の取締役)に次ぐ2人目の営業担当として、毎日泥のようになんでもやっていました。毎日4アポのフィールドセールスはもちろん、資料作成から契約書の管理フローの構築、Intercomを使ったチャットサポートから毎月のUserMeetupの企画運営、時には契約書のチェックから利用規約の読み込みまで。やったことない、は言い訳。どうにかしてやる。という感じで文字通りがむしゃらでした。
学び②できない理由ではなく、できる方法を常に考える
■Prott/Goodpatchのファンをつくる仕事
そんなこんなで職種が変わりProttチームも人が10数名になってきた頃、幸いなことにプロダクトにも恵まれて営業として約100社の新規受注ができ(数えた)、やっと会社に貢献できるようになってきました。
今振り返ると、最初の2ヶ月は毎週のように社長と商談に入れたことは自分の型を作る上で重要だったかもしれません。
何が一番印象的だったか、と聞かれるとやはり毎月開催していたUserMeetupや、年に1回開催していたProttアニバーサリーイベントです。
このPrott1周年の写真はProttチームだけでなくお客さんも入った集合写真です。もはやどこからがお客さんだかわからないw
それを表すように、Goodpatchの営業は、巷で言う営業のイメージとはかけ離れており、一種の『会社・サービスのファンを作りに行く』というものでした。
Prottを売るのではなく、『デザインの文化・プロセス』そして『プロトタイピングというカルチャー』を根付かせる。そのために開発プロセスや裏にある意思決定をヒアリングして一緒に現場に落とし込んでいく。必要であればデザイン思考のワークショップを設計して提供しており当時は年間20社ほど担当させていただきました。デザインコンサルタントして並走しているような感覚で、お客さんからも応援してもらっている感覚が強かったです。
これはProttが売れること=日本企業にデザインの文化が根付くこと であり、まさに自分がやりたかったことでした。自分のミッションと会社のミッションが紐づき、Prottは2016年-2017年にかけて完全に軌道に乗ります。(そして自分は2018年でProttを離れます)
学び③売るのではなく、ファンをつくる
(笑顔が絶えないチームでした。偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる。みんな元気にしてますか・・!)
■マーケット自体を作っていく
Prott以外ではUI CrunchというDeNAとGoodpatchで運営しているデザインコミュニティーがあり、UI Crunch U25というイベントを坪田さん(元DeNA、現dely CCO)に企画提案して実現したのが印象に残っています。当時自分が25歳だったからU25にしたという裏話があります。笑
何がポイントかって、このイベントではDeNAの南場さんが『何故いまデザインなのか』というテーマで講演しているんです。わかりますか?2016年に経営トップがデザインの重要性について語っているという事実です。
今でこそあらゆる大企業でデザイン組織の立ち上げやデザインの重要性が語られていますが、日本の経営層がデザインの重要性を公に語った転機だったんじゃないかと感じています。
UI/UXデザイン、デザイン思考を日本社会に広めていくためにはこのような業界団体としての動きも非常に重要であり、そのイニシアチブを取る重要さを肌で学びました。
学び④業界を巻き込み、マーケットを作っていく
■会社が急成長、そして組織崩壊へ
そんなこんなで会社の売り上げが伸びていく中で資金調達等も重なり、当時渋谷のワンフロアだったオフィスが、2Fが出来てキッチンやイベントスペースが誕生、徒歩10秒の場所にオフィス増築、徒歩1分の場所にさらに増築、フロアもどんどん拡大し、毎月社員が入ってくる急成長をしていました。同時にGoodpatch Europeオフィスがベルリンに立ち上がり、その後少し経ってミュンヘン、パリ、とグローバルでもどんどん拡大していきます。
そしてついにやってまいりました。100人の壁による組織崩壊です。ここに関しては社長や経営企画室メンバーからたくさんの記事が出ているので是非そちらをご覧ください。
その間自分は何をしていたかというと、毎月のようにチーム送別会の対応をしていましたw 昔から仲良かった同僚がどんどん辞めていき、上司が3連続で変わっていくような日々。気づいたら現時点で古い順で6番目の社員になっていました。
そんな苦しい状況でも、上の記事にも出ている4億円の資金調達の一部で英語ピッチしたり、反響いただいた金融機関の担当でてんやわんやでした。土屋さんと深夜までピッチの練習をしたのが良い想い出です(キツかった)。個人的にはこの時期に営業からBusiness Developmentに転向し、NTTデータとの事業提携や博報堂とワークショップ共同開発などをしていました。
■Goodpatchを辞めかけ、ビジョンを再認識する
と、書くと順調そうに見えますが、正直、自分も組織崩壊時にはGoodpatchを辞めようと迷ったことはありました。崩壊の影響もあり人間関係に悩み、(当時の自分が見えていた視野で)キャリアの頭打ちも感じ、日々悩んでいたのです。
そんなある日、何を思ったのか社長にカレンダーを送りつけ、『土屋さん、今転職するかどうか正直悩んでます』とぶっちゃけ相談をしたのです。転職相談を社長にするって、今思うとちょっとおかしいですね。苦笑
ただこうやって腹を割って話したことは非常に重要でした。
自分が思っていることを吐き出した後、土屋さんから一言。
『まだ、何も成していないんじゃないか。何のためにGoodpatchに入ったのか。』
なんのためにNTTを辞めてGoodpatchに入ったのか。やはりその原点に立ち返ったときに、デザインの価値を世の中に広めていくためであり、それはGoodpatchでしかできない、と原点を思い返す機会になったのです。
例え急成長中で時価総額も莫大なメガベンチャーへ転職しても、働く理由・意義がなければそれは長続きしないと思ったし、何よりそれは自分のストーリーではなく”船に乗っかっているメンバー”なのではないかと感じたのです。そうして、Goodpatchに踏みとどまることを決め、現在のReDesigner立ち上げに繋がります。
学び⑤強いビジョンは働く意義を作り、苦しい時の拠り所になる
■サンフランシスコ、ニューヨーク、そしてベルリン
ReDesignerに行くと思いきや、ちょっとここで海外経験を挟みます。
会社が成長していく過程で、現Goodpatch Europe Managing DirectorのBorisとともに、SanFrancisco、NewYork、Berlinへ出張する機会がありました。この3つの都市だけで約30社のデザインカンパニー・デザイン先進企業に訪問をしています。この経験は自分の意識を大きく変えました。
SFとNYはPrott/Goodpatchのマーケットリサーチ、Berlinは当時の新規プロダクトBaltoを携え、欧州最大級のTechイベントであるTech Open Air(TOA)でピッチをしたりヨーロッパオフィスと連携するためでした。
サンフランシスコでは人生初めての海外出張、かつ一緒に行く人も英語オンリーという環境の中で、よく日本人がやってしまうとりあえず打ち合わせに同席し、ほぼ発言しないことをやってしまいました。そのため毎日Borisに怒られていました。苦笑
"いいか、何か自分たちが価値を発揮しない限り、彼らにとってはただの時間の無駄だ。常に自分の立ち位置そして強みを考えろ。深く貢献するんだ"
このおかげで海外出張で訪問する際は、自分たちは彼らに何の価値を残せるんだろう、と無意識に考える癖がつきました。(日本でもですが)
実際に足を運んでみるとSF、NY、Berlin、どの都市も異なるエコシステムがあり、その中のデザインコミュニティーも様々でした。詳細は今回は書きませんが、感じたのは日本は狭い、日本の価値観だけでデザインマーケットを評価してはいけない。ということでした。韓国や上海にも行きましたが、世界のデザインの潮流を肌で知ることで、日本のデザインマーケットの立ち位置を客観的に知ることができます。百聞は一見に如かずですね。
学び⑥:世界に赴き、自分なりの価値を発揮する
■新規事業の3連発リリース、事業責任者へ
さあようやく今に辿り着きました。ここまで、5000字。笑
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。そろそろ締めます。
組織状態が底を打ち、回復に向かう最中で、何か今の延長ではなく新しいことができないかと思っている時に、お付き合いしていたクライアントから「デザイナーを採用したい」「デザイン組織を立ち上げたい」と言った相談が徐々に増えてきました。
今まで考えられなかった金融機関などからそう言った相談が増え、これはチャンスだと思い社長にも現場に出てもらった結果、『HR×デザインの領域で何か事業提案して欲しい』という大きなチャンスをもらいました。
同時に、『リモート×デザイン』『教育×デザイン』の領域でも何かできないか、と言うことで当時3つのチームが生まれ、後の新規事業3連続リリース(ReDesigner・GoodpatchAnywhere・Designer’s GYM)に繋がります。
事業立ち上げ時に最も意識したのは『なぜ、Goodpatchがこの事業をするべきなのか』と言うWHYでした。
(なんかフランス国旗みたいになってしまった。w)
会社のビジョン・ミッションを実現するために、サービスのビジョン・ミッションがあるという構図にすることで、社内外から多くの人に共感・応援いただける事業になったのです。
(ReDesignerリリースパーティーの写真。Reポーズ。)
そうしてReDesignerのビジョン・ミッションに共感してくれた仲間が次々と集まり、デザイン人材の価値を上げる社会人向けのReDesigner、デザイナーを目指す人を増やす学生向けのReDesigner for Studentが立ち上がりました。今でこそ10人の信頼できる仲間がいて、去年は社内でもチームMVPをいただくことができました。
(チームメンバーにはいつも本当に感謝です。)
学び⑦Whyを突き詰め、ストーリーをつくる
■結局は、意志と覚悟
こうして、Goodpatchは先月、東証マザーズへ上場承認をいただきます。
長かったようで短かった。自分が入社した頃はワンフロアの小さなデザイン会社。それが気がつくと社員約200名、グローバル3拠点の『デザインを主軸にしたコングロマリットカンパニー』へと変貌を遂げました。
ここまで書いたのはあくまで自分とGoodpatchのストーリーの一部にしかすぎません。ここに書けなかったエピソードもたくさんあるし、苦しいこともたくさんありました。
しかし、振り返ってみると全ての重要なシーンは自分の『意志と覚悟』が全てだと感じます。ストーリーの登場人物たちによる、意志と覚悟のストーリーがGoodpatchをGoodpatchたらしめていると。
数々の困難を乗り越えることで、自分も成長するし、会社も成長する。
会社が成長すれば、自分の成長の機会も増えていく。まさに人材成長カンパニーです。
自分の20代はこうして幕を閉じました。
学び⑧会社の成長が、自分の成長になる
おわりに
以上、会社のストーリーから自分が得た8つの学びを書いてきました。
まとめますね。
8つの学び
①船に乗る人ではなく、船を漕ぐ人になる
②できない理由ではなく、できる方法を常に考える
③売るのではなく、ファンをつくる
④業界を巻き込み、マーケットを作っていく
⑤ビジョンは働く意義を作り、苦しい時の拠り所になる
⑥世界に赴き、自分なりの価値を発揮する
⑦Whyを突き詰め、ストーリーをつくる
⑧会社の成長が、自分の成長になる
この記事が20代でこれから挑戦していく人たちに少しでも参考になれば良いなと思っています。もし自分にできることがあればTwitterなどでいつでも連絡ください。
また、Goodpatchとしてはやっとスタートラインに立ったばかりです。会社としてまだまだやりたいことは多いし、自分もReDesignerの事業責任者及び会社の連携窓口として実直にやっていく次第です。
もしGoopdatchとの業務提携やパートナーシップなど可能性があれば是非お話させてください。また、デザイナーを中途/新卒採用していきたい採用担当の方も是非お気軽にご連絡いただけると嬉しいです。
ではでは、長文失礼しました。
初心を忘れず青い想いを持ちながら前進します。
PS: ReDesignerでマーケティング担当と企業担当(RA)募集しています!
最後まで読んでいただきありがとうございます!