
一人でトリミングサロンを続ける理由——私の選択が、誰かの幸せをつくる
なぜ私は、一人でトリミングサロンを運営することを選んだのか
トリミングサロンといえば、多くのスタッフがいて、分業で効率よく回しているイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、私は現在ヒトリマーとしてサロンを運営しています。
「人を雇わないの?」「ひとりで大変じゃない?」と聞かれることもあります。確かに、規模を広げれば売上は増えるかもしれません。人員がいればもっとできる作業もあると思います。
でも、私はあえて「一人でやる」ことにこだわっています。そこには、自分が動物と関わる仕事をする人間としての信念と、お客様との深い信頼関係を構築するためにあります。
今回は、「なぜ私は一人でサロンを続けているのか」その理由をお話ししたいと思います。
一頭一頭に、本当の意味で寄り添いたい
一人で運営するサロンでは、一頭をお預かりからお返しまで全て担当します。カット犬種だと1日に関われる子たちはせいぜい3頭ぐらい。しかし、それこそが私のトリミングをする空間としての理想でした。
大型のサロンでは、やはり効率が求められます。一日に何頭もこなすために、業務が「作業」になってしまうことも少なくありません。でも、私は今トリミングをしている目の前の子と時間をかけてでもしっかり向き合いたいと考えています。
その子の体調や気分を細かく観察しながら、その日のベストなトリミングを提供する。正直なところ大きなサロンではそれは難しい場合も多いと思います。シャンプーは新人さん、カットはカットができるトリマーにバトンタッチなど、予約の関係上、犬の気持ちとは無関係に効率的にまわすことが優先されてしまうこともあります。
また、人が多いとさまざまな感情が同じ空間内に存在することになります。わんちゃんは人の感情を敏感に察知するところがあります。焦っていたり、ピリピリ感、不安感はわんちゃんに伝わります。
さらに預かりのわんちゃんが多いとそれだけで他のわんちゃんが苦手な子は緊張してしまいます。
私はお店の「空気感」が穏やかに安定していることが安全なトリミングにつながると考えています。
「その子のためだけの時間」をつくることが、一人サロンなら自由にできるのです。
飼い主さんとの信頼関係を大切にしたい
一人でサロンを運営していると、飼い主さんとトリマーの距離は自然と近くなります。大型のサロンでは、「受付担当」「トリマー担当」「お会計担当」と分業されていることが多いですが、個人サロンでは、最初から最後まで自分が責任を持って対応します。
これにより、飼い主さまから直接感想を聞けたり、「最近、毛が薄くなってきたけど、大丈夫かな?」といったちょっとした疑問や相談もされやすいです。
トリミングサロンは、ただ犬をきれいにする場所ではありません。飼い主さんが大切な愛犬を「ここなら安心」と思える場所でもあるべきだと私は考えています。
そしてそれが重要になってくるのは高齢になってからのわんちゃんのトリミングです。
大手サロンでは「10歳以上はお断り」などの決まり事があるところも多いです。
私は自分が担当するわんちゃんは、叶うならば最期の時まで責任を持ちたいと考えています。
それを任せてもらうには、それまで飼い主さんと培ってきた信頼関係がなければできないことです。
もちろん重篤な疾患、持病がある場合、私が担当するよりもよりベストな方法がある場合は、飼い主さんにご相談させていただきます。それでも、なるべく困っている飼い主さんをサポートしていきたい。ヒトリマーだからこそ融通がきき、しっかり向き合えるのではと考えています。
デメリットもある、でも「一人だからこそ、できること」もある
従業員は自分しかいないので、デメリットはあります。私に何かあった時はお店自体を続けることができなくなるかもしれません。
「スタッフを雇えば楽になるのに」と言われることもあります。でも、私は「楽をする」ためにスタッフを雇うつもりはありません。
もちろん、一人で運営することは大変です。予約の管理、施術、清掃、経理……すべてを自分で行うのは決して楽ではありません。自分が苦手と思う作業もいっぱいあります。でも、そのすべてが「自分が選んだ道」だからこそ、頑張れるのです。
「一人運営のメリット」もあります。
たとえば——
✔ 毎回、同じトリマーが担当できる安心感
✔ 飼い主さんの価値観を深く理解したうえでのトリミング
✔ 担当するわんちゃんとの関係を時間をかけて深めることができる
✔️自分のコンセプトにあったトリミングメニューやペット用品を考えることができる
✔️自分が苦手な仕事はしないという選択肢がもてる
これらは、個人サロンだからこそ実現しやすいことだと思います。自分が理想とする仕事の仕方ができるのです。
大手だと会社の方針で売りたいもの、皆が出来ることを仕事としてやらなければならない時があります。(車の運転とか。。電話対応とか。。)
自分の性格や気質に合わせた仕事のやり方を選択できるのは、個人サロンならではだと思います。
私の選択が、誰かの幸せにつながる
私が現在一人でトリミングサロンを続けているのは、まだ単なる人生の通過点かもしれません。
私の目標は飼い主さんとわんちゃんの暮らしが今よりさらに幸せで豊かにするサポートをすることです
そのためには今自分ができることを誠実に一生懸命にやるだけです。
大切な家族の一員であるわんちゃんを怪我や事故なく、きれいに可愛くしてお返しすること。それを見て喜ぶ飼い主さんの姿を見ること。家族の皆んなに喜んでもらってハッピーになるわんちゃんを想像すること。その瞬間のために、私はトリマーという道を選んだのだと思います。
「このサロンがあるから、安心して任せられる」
「このトリマーさんがいるから、大切な愛犬を託せる」
そんな風に思ってくれる人がいるなら、それだけで私がこの道を選んだ意味があると思うのです。
トリミングサロンは、犬のためだけの場所ではありません。飼い主さんの「安心」と「幸せ」をつくる場所でもあるのです。
私の選択が、誰かの大きな幸せにつながることを信じて。