精神覚醒ノ肥後虎 ACT.29 時田銀蔵

あらすじ

 ひさ子はクルマを当て逃げしてしまい、罪悪感を抱いた。
 しかし当たり屋のクルマだと小日向から聞かされる。
 その男は蛍食堂までやって来た。
 家族を守るためにバトルを挑むのだった。

 俺は何度か地震にあってきた。
 学生時代に阪神・淡路大震災で遭遇し、その後に何度か引っ越すも中越地震、東日本大震災でも被災する。
 それを機に熊本へ移住したものの、あの地震で職を失い、今に至る。

 俺が当たり屋を始めたのはそれが原因だ。

 森本ひさ子(BG8Z)

 VS

 謎の当たり屋(GRS184)

 コース:豊後街道往路

 わしはファミリアの4WDのトラクションを使い、ゼロクラを先攻した。

「さすが4WD車だ。トラクションがすごいな」

「当たり屋ごときに負けんばい!」

 緩い左コーナーからの蛍食堂前の2連ヘアピン。
 そこの2つ目にて、両者ともにオーラば発生させる。
 わしは黄色のオーラ、当たり屋のゼロクラは銀色のオーラを纏う。

「儀の蛍流<スライディング・ハンマー>!」

「ゴールデンオンステージ流<バビロン・アーチ>!」

 わしのファミリアはハンマーば振るうかのようにドリフトで攻め、ゼロクラはアーチば描くようなコーナリングを見せた。

「中々のコーナリングだけど、まだまだだ。ドライバーの精神力が弱すぎる」

 コーナリングは相手の方が上手で、2台の距離が縮まる。
 コーナーの出口で4WDのトラクションで引き離すも、右中速コーナーと左U字ヘアピンの複合であるハンマーヘッドヘアピンで距離を縮められる。

「まだまだだ。心の余裕も、腕もない」

 高速区間に入る。
 わしのファミリアよりパワーのあるゼロクラは、差をテールトゥノーズにするほど接近した。

 接近されたままS字からの2連ヘアピンに入る。
 そこの2つ目にて両者ともに強烈なオーラが出ていく。

「儀の蛍流<スライディング・ハンマー>!」

 黄色いオーラを纏い、ハンマーば振るうようなドリフトで攻め、距離を離していく。

「そろそろ気合いを入れるか。ゴールデンオンステージ流<銀峯の覇者>」

 ゼロクラのオーラが激しくなった。
 以前より眩くクルマを包んでいる。

 バックミラーで見る。

「オーラが増量したばい……!?」

 わしは恐ろしい予感を感じた……。

 2連ヘアピンば抜けると、2つのS字に入る。
 1つ目のS字はキツめであり、2つ目の緩めだった。
 この後はトンネルで囲まれたU字に入り、ここの出口で当たり屋は仕掛けた。
 
「ゴールデンオンステージ流<あいつにノックアウト>!」

 猛加速してファミリアのリアバンパーをプッシュしてきた。
 スピードを落としながらアウト側へ膨らむ。
 ゼロクラが前に出た。

「お先に失礼」

 先攻した当たり屋は突如ブレーキを踏み、わざとゼロクラをファミリアにぶつけて来た。

「うわッ!」

 汚い走りだ!
 さっすが当たり屋だ!
 ゼロクラに接触したことで、距離は少し離れていった。

 2台はS字ヘアピンば攻めていく。
 抜けた辺りで、当たり屋はオーラば発生させる。

「ゴールデンオンステージ流<アンラッキー・カムカム>!」

 黒いオーラを纏い、ゼロクラはブロックしてきた!
 そげんゼロクラにわしはまた接触してしまう。

「うわァッ!」

 接触したことが原因なのか、ファミリアの様子がおかしくなる。

「あれェ!? あんま加速せん!?」

 原因はこれだ。
 ファミリアのターボが故障してしまったからだ。
 
 突如起きた不幸によって、距離は離れていく。
 バトルはわしの負けに終わった……。

勝利:当たり屋

 バトルば終えると、ファミリアとゼロクラは蛍食堂に戻ってくる。

「大したことはありませんでしたよ、あなたのお孫さんは」

「チッ!」

 当たり屋の言葉を聞くと、虎ちゃんは舌打ちした。

「お孫さんも覚醒技というものを使えるらしいけど、痛くもかゆくもありませんでしたよ。お孫さんの覚醒技は自分の苦手な雷属性を持っていましたけど、それとは思えない弱さでしたよ」

 この後、当たり屋の口から聞いたことがなかな言葉が出る。

「覚醒技の強さはハザードランクで決まる。お前のハザードランクは一番下のEだ。自分……いや、俺のランクはCだ」

「森本さんの覚醒技はこれぐらいだったのね……」

 わしの覚醒技はこんなに弱いのだったのか……。
 もっと強くせんと……。

「またバトルして欲しか……! 」

「バトルは受け付けてやる! それは強くなってからの話だ。あと、俺の名前は時田銀蔵だ」

 自分の名前を教えると、当たり屋……いや時田は去っていった。

 彼が去ると同時にはわしは元の場所へ戻ろうとすると、バランスを崩し、転倒する。
 飯田さんが身体を支えてくれた。
 
「大丈夫、森本さん?」

「うん」

「よくもひさちゃんば……」

 虎ちゃんはわしば倒した時田ば許せなかった。

 身体ば立たせると、今度は捻挫する。

「痛かー!」

 これだけではない。
 わしの災難が始まるのだった。
 時田の<アンラッキー・カムカム>によって、わしの不幸体質はさらに拡大する。

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