オオサキ~英雄たちの覚醒~ ACT.4 京橋天満
あらすじ
上毛三山キャノンボールレースが始まった。
オオサキは謎の集団・赤い鳥の手で最下位からスタートすることになったものの、己のテクニックで順位を上げていく。
しかし、彼らはクルマをぶつけるという妨害行為をしてくる。
彼らはオオサキのことを智の弟子という理由で憎んでいた。
邪魔をしてくる赤い鳥の2人と戦いながら、赤城の下りで2台を引き離す。
オオサキに引き離された2台は互いに衝突してリタイアした。
赤城を出ると……1台のEK4と遭遇した。
「大逆転中のワンエイティの前にEK4が立ち塞がる!」
トランシーバーから智姉さんの声が聞こえてくる。
「EK4と遭遇したようだな」
「そうです」
「あのEK4はモンスターだ。FFなのにV8を積んでいる」
「V8……!?」
「K20Aを2基合体させて、V8化させていたものを積んでいる」
「2基を合体!?」
「ホンダは市販用とレース用共にV8を作ったことがないから、私が最初聞いたときはビックリしたぞ……そのEK4の馬力は440馬力ぐらいある」
「やはり……おれのワンエイティより馬力が高いですね」
「高速区間で勝負するのは難しいぞ。あと、ドライバーの名前は京橋天満と言う」
智姉さんがトランシーバーを切る途端、ロック歌手みたいな風貌の男性が話しかけてきた。
「あんたァ、斎藤智か!?」
「そうだが……」
「俺は松平充、うちのあきらがお世話になっとる。あきらのC4のメンテナンスしとるで」
「改めて紹介する。和食さいとうの店長の斎藤智だ。よろしく」
智姉さんと松平さんは握手をする。
国道353号線から151号線に変わる直線区間。
EK4は炎のように赤いオーラを纏う。
「Fのジェット流<ジェット・ダッシュ>!」
ジェット機の如く加速し、おれとクマさんを引き離していく。
「速ェべ! FF車とはおもえねぇ加速だべ!」
「FF車は速いと言わせてやるよ! 作るときにメリットが多いから」
技を使い終わっても、EK4の加速は衰えることはなかった。
国道は直線が多く、V8を積んだEK4相手にはパワーでは勝負できない。
さらに、コーナリング性能も悪くなかった。
天満のEK4の仕組みについて、実況が解説する。
「このEK4には、4WS(4輪操舵システム。後輪まで操舵を付けることで旋回性能を上げる)と気筒休止システム、駆動力の自在制御機能が付いております。普段はV型8気筒エンジンで走行しているEK4ですが、コーナリングに入ると片方の気筒だけで走行し、さらにはコーナー側の車輪に駆動力を集中させる事でコーナリング性能を引き上げております。直線が速いだけでなくコーナーも悪くない、鬼に金棒であります!」
直線が速いクルマ相手には、榛名山が来るまで勝負を待つことにした。
スタート地点。
「和食さいとうでーす! どうぞ来店よろしくお願いしまーす!」
桃代さんがチラシを周囲に配り、宣伝していた。
とある深緑のツナギを着た集団がそれを受けとる。
「和食さいとうか……今お前たちのワンエイティが戦っているEK4はうちのものだけど、文句あるのか?」
「EK4のチームメイトか……」
睨まれてしまったようだ……。
「FFというのはメリットの多い駆動方式だ。メリットの少ないFRなんかよりこっちが合理的だ。メリットが多いこそ最強の駆動方式だ」
「それはどうかな? ワンエイティはもうすぐ榛名山に着くぞ。しかもそこのコースは上り坂だ」
「上り坂はFF車が苦手な分野だぜ」
六荒も続く。
「V8のVTECのパワーなら、上り坂でも負けないぞ!」
負けずに天満の仲間は言葉を返した
国道区間が終わって、おれとEK4は榛名山(渋川松井田線)に入った。
さっきまで直線が多かったから、離されてしまう。
クマさんの方は……置いてきぼりにされてしまい……
「ちくしょーめ!」
挙げ句に、後ろから来た毛利さんのND5RCと谷のS15に抜かれてしまった。
彼らは本気を出す気配は今のところ無いものの、力を隠しても中々の実力らしい。
榛名山に上がったおれは最初の右中速ヘアピンでドリフトし、EK4の距離を詰めていく。
左低速ヘアピン、ここでオーラを発生させる。
「小山田疾風流<スティール・ブレイド>! イケイケイケイケェー!」
ゼロカウンタードリフトで登っていく!
その後もう1つのコーナーを抜けると、EK4の姿が見えてくる。
「やるね! ここはFFが苦手な上り坂だけど、負けないよ! V8搭載のEK4に乗っているから!」
2つの高速コーナーとS字ヘアピンを抜けると直線が来る。
ここに入るとEK4は赤いオーラに包まれた。
「Fのジェット流<ロケット・ダッシュ>!」
今までより勢いよく、加速していった。
「今までよりすごい加速だ」
だが、おれはさっきの高速コーナー2つ辺りでEK4の弱点を見つけた。
「あのEK4……フロントが重いのか、アウト側に寄っている!?」
この弱点を見抜いたことは……後の突破道になるだろう。
直線を抜けると左U字ヘアピンに入る。
萌葱色のオーラを纏う。
「小山田疾風流<フライ・ミー・ソー・ハイ>! イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」
高速ドリフトで通過していく!
この後はやや長い直線を抜けて、高速右ヘアピンを通り抜ける。
さらにもう1つの高速ヘアピンを抜けると、2連ヘアピンに入る。
そこは2つ共にドリフトで通過する。
EK4の方はアウト側に寄っていた。
「フロントヘビーに耐えきれないか……」
天満はコーナリングに苦労していた。
4WSや気筒休止システムなどでフロントヘビーの対策していたようだが、それでは限界だったようだ。
2連ヘアピンを抜けて、それらを跨ぐ左高速ヘアピンを抜けると、榛名名物4連ヘアピンに遭遇する。
1つ目の右ヘアピンでは相手の様子見のために、技を使わないドリフトで攻めていった。
「仕掛けてくるかもしれない!」
天満の表情に焦りの表情が強くなっていく!
2つ目の左ヘアピン……。
ここで決めることにした。
「相手の弱点はエンジンが重くなったことでFF特有のフロントヘビーが悪化し、更にはFFは上り坂が苦手という欠点を増大させたことだね! 決めてやる! 小山田疾風流<スティール・ブレイド>!」
超高速のゼロカウンタードリフトで攻める!
「イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」
コーナーので出口で、アウト側に膨らむEK4を追い越していく。
高い壁である京橋天満の前へ出ることができた。
この後2つのヘアピンが迫り、得意なドリフトでEK4との距離を引き離す。
おれの後ろから、EK4が姿を消した。
「赤城最速はここでも速かったか。大崎翔子……私の分も走ってほしいね……」
その後……榛名山の区間で順位を上げ、19位まで順位を上げた。
裏榛名……。
うちは先頭を走とった。
追い抜こうとする奴はうちの能力で後退させ、中にはリタイアするもんもおった。
しかし、そんなうちとA31に迫る奴がおった。
「エンジンからR35ちゃうん?」
後ろから聞こえてきたVR38の正体は、オレンジ色のクラシックカーの顔をしたクルマやった。
そのクルマは、和倉奈々央のピアッツァだ。
榛名湖区間に入ると、1台のクルマと遭遇する。
シルエットフォーミュラ風のエアロを身に付けた、白と黄色のピアッツァだ。
ドライバーは和谷姉妹の妹、和倉千路だ。
「赤城最速がやってきたま!」
後ろからおれの存在を知った千路は、地面が唸るようなエンジン音を響かせて加速していく。
「速い……さっきのEK4より速いかもしれない……」
次の壁はあのピアッツァだ。
そのクルマの前には見覚えのあるものが走っている。
あきらのC4だ。
「速か……! 抜かれるかもしれへん!」
果たしてあきらの運命は?
そのボンネットの中にあるV8エンジンが悲鳴を上げていた。
あきらはそれを知らなかった……
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