精神覚醒ノ肥後虎 ACT.38 上り坂での決着
あらすじ
虎美は玉子からダンガン乗りを止めて欲しいと頼まれる。
朝、箱石峠を走っていると、その走り屋からバトルを挑まれた。
それを知った沙羅子から作戦を伝えられる。
そして、バトルの日がやってきた。
スタートしてすぐ右シケインに突入する。
ここを両者ともにグリップ走行で抜けていく。
「2回目も倒してやる」
「今度こそ負けるわけにはいかん」
また右シケインが来る。
ここもグリップ走行で抜けた。
緩い右S字から右ヘアピンが迫りくる。
紫のダブルエックスと不二岡がギャラリーしていた。
「来たぞ」
先攻するダンガンは透明なオーラを纏う。
「<ハヤテ打ち>!」
高速のグリップ走行で抜けていく。
うちはドリフトを発生させて突入する。
こっちも透明なオーラを纏った。
「<コンパクト・メテオ>! 虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」
「加藤が代車のS14でドリフトした!?」
高速ドリフトでダンガンを追いかける!
前はハーフスピンさせた走りも、運転に慣れたから問題なくなっていた。
「やるな、運転に慣れているな!」
後ろから見て、ダンガン野郎はうちの走りを称えた。
この後は直線。
620馬力を使って、相手に接近する!
左高速ヘアピンに突入する。
どちらもグリップ走行で攻めた。
S14の挙動の変化を感じる。
「S14の挙動、軽くなっとる。前まで重かったのに」
それはバラストが外されていたからだ。
また加速の方も、前よりは出るようになっていた
ある場所で沙羅子と潤が会話していた。
「沙羅子代表、S14にバラストを載せたのはなぜだ?」
「S14の挙動を安定させることです。まず虎美にそれを慣れさせようと考えました。重いので作業するときは数人がかりで行いましたが……」
「そうか」
「今回のバトルに合わせて、今日はそれを外しました」
バラストを載せたり外したのは、沙羅子だった。
右中速ヘアピン、左S字セクションを抜けて、左ヘアピンに突入する。
ここで両者共に透明のオーラを纏う。
「<ハヤテ打ち>!」
「<コンパクト・メテオ>! 虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」
ダンガンは高速グリップ走行、S14は高速ドリフトで通過していく。
この勝負は互角だった。
「代車とはいえ、すごか! 麻生北自動車部の部長のドリフト!」
「こんまま仕留めてほしか!」
ギャラリーたちから声援が飛ぶ。
緩い左シケインからの右高速ヘアピンを抜けると、2連続ヘアピンが来る。
ここに沙羅さんたちがギャラリーしていた。
愛車であるエボファイナルも停車している。
「来ましたよ」
1つ目の右ヘアピン。
ダンガンはグリップ走行、うちは荷重移動を使ったドリフトで通過する。
差は縮まっていく。
「やりますね。うまく成長しました」
「中々の走りを見せている。S14を貸して正解だった」
「まだバトルはどうなるか分からないぞ」
「私もそう思うわ」
2つ目の右ヘアピン。
「あそこを抜けたら、あれを使うか」
ダンガン野郎は予告をする。
うちの方は茶色いオーラを纏う。
「肥後虎ノ矛流<落ちてくる虎>」
スローイン・ファーストアウトの高速ドリフトで攻め、ダンガンに接近する。
2連ヘアピンを終えて、高速左コーナー。
ダンガンが赤いオーラを纏った。
「巨人の足跡流<ファイヤー・バード>!」
火の鳥の如く、駆け抜けていく。
「あれを使ってきたか」
前にうちを離した技だ。
距離が開いていく。
バトルは左シケインに入る。
ダンガンの特徴を掴む。
「上り坂ではあまり走れとらん……軽やからやろうか……」
バイクのエンジンを積んでも所詮は軽自動車か……。
実はそれのトルクは高くない。
このミニカダンガンの最大トルクは20.3kg・mで、うちのS14のトルクは75kg・mだ。
覚醒技の能力で30.4kg・mに上げているものの、それでも及ばない。
実は沙羅さんからこんな事を言われている。
「バイクのエンジンを積んでいると言っても、トルクは高くありません。上り坂である前半で決着をつけましょう」
作戦はこれだ。
バイクエンジンの弱点を掴んでいる。
<ファイヤー・バード>で開いた差を70kg・mを越えるトルクで縮めていく。
3連続ヘアピンに突入する。
3つともに巧みなドリフトで抜けていく。
コーナリングでは車重の軽いダンガンの方が有利だった。
距離が離れていく。
ここからコーナーが連続する。
バトルしているうちらの様子を後ろから相良玉子とスタリオンが見ていた。
「バトルに変化が訪れるのはそろそろだと考えております」
後ろから彼女が来ていることは知らない。
4連続シケインを抜けると、前半が緩いS字が迫る。
そこの立ち上がりで、ダンガンは鳥の形をした水色のオーラを纏う。
「巨人の足跡流<フリーズ・バード>!」
氷の鳥が加速する!
「今度は氷技か」
距離が離れたかのように見えた。
が、技が終わると、縮まっていく。
トルクに差があるからだ。
2人の姉妹が510と910ブルーバードと共にギャラリーしていた。
「来たばい」
姉の方はクルマの光を見る。
「お姉ちゃん、仕掛けるんやろうか?」
正面には小日向先生がカメラを持ってギャラリーしていた。
「加藤の勇姿ば撮ったるばい!」
緩い右コーナー。
「チャンスは、ここたい!」
うちはここで仕掛ける!
萌葱色のオーラを纏う。
「肥後虎ノ矛流<真空烈速>!」
勢い任せのドリフトで外側から仕掛けていく。
その時、オーラの色が青色に変化した。
立ち上がりに入るとS14が内側へ寄っていく。
「内側だと!?」
クロスするかのように、S14は水を得た魚の如くダンガンを仕留める。
「肥後虎ノ矛流<バッテン・スライダー>!」
新しい技にはこう名付けた。
それを使ったうちはダンガンの前の出ることに成功した。
「今たい」
小日向先生はうちの勇姿を撮影する。
「抜かれた……!? ってもう1台来る!?」
うちがダンガンを追い抜いたと同時に、相良玉子のスタリオンが現れる。
「女巨人こと相良玉子のスタリオンが現れたぞ!」
「乱入しに来たのか!?」
「まさか三つ巴のバトルに!?」
うちが追い抜いたダンガンを一瞬で追い抜いていく。
スタリオンは斜めに停車し、そのクルマを停車させる。
それぞれのクルマからドライバーが降り、会話が始まる。
「散々やらかしましたね……」
「待て! 俺は熊本中にいる速い走り屋と戦いたかっただけだ。もうすぐ開催する予定のスプリントレースの視察も兼ねて……」
「もういいです。言い訳は結構です。金輪際あなたのサポートはいたしません」
その時、彼女の言葉にショックを受けたダンガン野郎が膝をつく。
同時にジェイソンを思わせる仮面が外れる。
S14を停車させ、2人の近くへ来る。
「止めていただきありがとうございます」
「いえいえです」
「けど、スプリントレースでは手加減しませんよ」
本日を持って、ダンガン騒動は終わった。
だが、本当の戦いはこれからだ。
バトルが停車した後の先にあるギャラリーポイント。
サウス4と名乗る4人組は……?
「ダンガンが倒されたようだな」
「バトルにスタリオンが乱入したらしいでありんす」
「別に乱入と言っても、様子見っすね」
「次のターゲットは麻生北の自動車部部長だな」
「今戦っても勝った気にならない」
「なんでだよ」
「俺たちは正々堂々戦うスタイルだ。代車に乗っているうちに挑むのは卑怯だ。エクリプスが戻るまで待つ」
虎美をターゲットとすると言っているものの、彼らの目的とは一体?
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