精神覚醒ノ肥後虎 ACT.22「青山氷河」
あらすじ
倒れたひさ子を追って虎美たち自動車部は彼女を助けた鎌切家を訪れる。
彼ら夫婦にはいなくなった娘、ミドリがいた。
彼女を探すために、それを手伝うことにした。
捜索を手伝う覚は、青山氷河と名乗る青年と出会う。
彼とバトルすれば情報を提供すると言い、それを挑むことにした
コース:箱石峠復路
飯田覚(SVX)
VS
青山氷河(GDB)
スタートした2台は4WD特有のトラクション全開の加速をする。
私は後攻を選び、GDBを先行させた。
相手のクルマから青いオーラと水色のオーラの2つが発生していた。
「こいつは覚醒技超人(テイクハイヤー)ね」
オーラは覚醒技超人にしか見られない。
中々の走り屋の予感を感じさせる。
スバル同士のバトルを見るギャラリーは話をしていた。
「SVXでGDBに勝てると?」
「GDBはスポーツカーと言えるばってん、SVXはグランツーリスモばい。速く走るこつより長く走るこつに作られた車たい」
「しかも高校生が運転しとるし、勝つのは無理と」
「相手は収入2000万の整体師たい」
確かにSVXはクーペだけどスポーツカーじゃあない。
「遠くへ、美しく」、「500miles a day」とキャッチコピーの通り、長距離走行を目的としたグランツーリスモだ。
そのジャンルの車といえば、マツダのユーノスコスモ、トヨタのソアラ、日産のレパードなどがある。
しかしあるギャラリーは真逆を見ていた。
「まぁ結果が決まるまで、分からんばい。SVXのドライバーはすごかな走り屋やと感じる気迫があったばい」
彼は私の走り屋としてのオーラを見ていたようだ。
ちなみに学園ナイターレース終了後、虎美が身に付けていたS.S.T(サラマンダー財団スペシャルタイツ)を身につけて走るという特訓をして私は腕を上げた。
腕を上げたことや、ミドリのためには負けられない。
レースは最初の緩い右シケインに入る。
両者共にグリップ走行で抜けた。
かつてS.S.Tを身に付けていた影響もあり、スムーズなラインを描けた。
その後、人面岩前の2つのシケインが続く。
バトルに変化はなく、ポジションが変わったりせず、大きく距離が離れることはなかった。
左高速ヘアピン、2つの高速コーナーを抜けていく。
バトルに変化はなかった。
左高速コーナーからの右低速ヘアピンに入る。
GDBは水色のオーラを大きく纏った。
技を発動させるようだ。
「<アイス・ボール>!」
氷属性の初歩的な技、<アイス・ボール> 。
玉をぶつけるようなドリフトで攻める。
私との距離が離れた。
「技を使ってきたわね」
さっきの技で、車半分の差に広がる。
しかし、直後は直線だ。
ここは私のSVXがGDBに近づく。
直線では私の方が上らしい。
「離させはしないわ」
中速ヘアピンへ入る。
青山はドリフト走行、私はグリップ走行で抜けていく。
ここでも距離が縮み、差はテールトゥノーズになった。
「抜かれるわけには行かない」
だが、右中速コーナー。
前のコーナー同様にGDBはドリフト走行、私はグリップ走行で抜ける。
GDBとの距離が離れていく。
S字セクション。
前半の左コーナーでは縮めたけど、後半の右コーナーで広がる。
「離されたわ……」
直線を抜けて、左中速ヘアピン。
差がが縮まる。
「分かったわ」
右で離れ、左で距離が縮むのを見て、私は考えた。
「あいつ……右コーナーの方がが得意で、左コーナーの方が苦手に違いないわ……」
この観察が後の結果に繋がるだろう。
数々のコーナーを抜けて、中盤に差し掛かる。
青山とは一進一退の攻防を繰り広げた。
復路ゴール地点。
「現在、GDBがリード! それをSVXが追っとるばい!」
ギャラリーからのバトルの状況を1人の男性が聞いていた。
彼は肩まである黒髪を赤いターバンで巻き、服はグレーのTシャツに赤いジャケットを羽織っている。
「今日の青山は悪い予感がしかしない」
箱石峠中盤の象徴であるロングストレート。
ここで青山は仕掛けてくる。
「氷の水牛の見せ所だ!」
青山はGDBに水色のオーラを発生させる。
「ブリザード・ホーン流<氷の牛角>!」
GDBは角でつく牛のごとく、凄まじい速さで直線を駆け抜けていく。
「なんていう速さなの!?」
私との距離が大きく開いてしまった。
差は車3台分だ。
後半で巻き返せるかどうかだ。
次は右コーナーだ。
離されるかもしれないから、技を発動させる。
銀色のオーラを纏う。
「山崎ノ槍柱流<覚兵衛の槍>! ホワホワホワホワ、ホワチャー!」
槍で突くような加速をしながら、右コーナーを攻める。
距離を1.5台分の差に縮めた。
「距離を縮めてきたか。中々やるな」
また直線。
パワーのある私のSVXがGDBに接近する。
直線の後は左シケイン。
前半では距離を保てたものの、後半では離される。
またまた直線が来る。
離された差を取り戻し、接近する。
直線の後の左高速コーナー。
私は銀のオーラを発生させる。
青山の弱点を狙っていた。
「仕掛けるわ。あなたの弱点は左コーナーが苦手なことよ!」
右コーナーと左コーナーの曲がり方は同じようで異なるものだ。
免許を持っている人は自動車学校で学んでいる。
突入する速度もそれぞれ異なっている。
「山崎ノ槍柱流<どこでも曲線(スニーキング・カーブ)>! ホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワホワ、ホワチャー!」
ヘッドライトを消して、気配を消すと同時に超高速の消えるラインで攻める!
GDBの前へ出た。
「前に……出られたァ!?」
その後も私が先行したまま、バトルは終えた。
勝利:飯田覚
ゴール地点につくと、クルマから降りて会話を始める。
「私の勝ちよ。約束通り、この子の情報を教えて」
「そいつは知っている。そいつは俺のチームメイトだ」
同じステッカーが貼ってあったから、やはり関係者だった。
私たちのそばに赤いターバンを巻いた男性が来る。
「何を話しているのかな? 君たちのバトルの様子聞いていたよ。君、中々の腕だね」
「この子を探しているんです。しばらく家に帰らないらしいので」
赤いターバンの男性にミドリの写真を見せた。
「なるほど……。この子は私のチームメイトだよ。私はR.G.Bの赤石火山だ。よろしく」
「飯田覚です。麻生北の3年で、自動車部やっています」
「実は私も、前からたまに家に帰るように説得しているんだけど……聞いてくれないんだ。協力するよ」
「ありがとうございます。助かります。無事帰ってくれるといいですが」
こうして協力者がまた増えた。
赤石さんの説得を聞かないとは難しくなるかもしれないが、喧嘩する両親のために家に帰してみせる。
深夜0時……。
俺、財津斬鬼郞はFC3S型RX-7を運転し、箱石峠を走っていた。
後ろから光が迫ってきている。
「何か来ている!?」
光の正体は車だった。
車種は赤い三菱ランサーエボリューション7、通称エボ7だ。
C-WESTのエアロを身に付けていた。
「バトルを仕掛けてくるかもしれない」
戦いは好きではないものの、とりあえずペースを上げる。