光速の走り屋オオサキショウコ番外編1-2「裏赤城」

 午後1時30分。おれは裏赤城を駆け降りていた。

「これじゃあ思うように走れないな…」

 裏赤城は狭い道幅に急勾配、連続するヘアピン。まるで走り手を試すような難コースだ。特に17連続ヘアピンや9連続ヘアピンが続き、コーナーの多さがこの峠の特徴を物語っている。道幅も狭く、かつては大型車の通行が禁止されていたほどだ。
 現在、おれは下り方面を走っている。350馬力を誇るワンエイティが、狭く急な裏赤城の道では少しミスマッチだ。さらに、RB26DETTに換装したせいでフロントが重くなり、安定性に欠けている。

「けど、幽霊のために走らせるか!」

 裏赤城では比較的広めのコーナーで、おれは右足でブレーキを踏み、左手でサイドブレーキを引く。すると、ワンエイティのリアタイヤがスリップし、車体が滑り出した。

「小山田疾風流<幽霊群馬>! イケイケイケイケー!」

 この技は、車の気配を消して相手を追い抜くための技だ。以前、戸沢龍とのバトルでこの技を使って勝利したことがある。普段は追い抜きに使う技だが、今回は相手がいないにもかかわらず、追い抜きのタイミングを練習している。狭い裏赤城では、後ろにいるときの追い抜きタイミングが命だ。今日は、自分の前にEF9がいることを想定し、攻める。
 練習は午後3時まで続いた――。

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