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頭文字Dはなぜ圧倒的な人気を誇るのか?




前置き


 イラストを見れば分かりますが、他の自動車漫画は1000万部台なのに対して頭文字DことイニDは5倍ぐらいの売り上げを出しております。
 知名度に関してですが……。

イニD→漫画やクルマ好きじゃあなくても知っている
湾岸ミッドナイト、オーバーレブ!→漫画好き、クルマ好きなら知っている。
サーキットの狼→今の人はほとんど知らない

 という高さ。

 他にもどれぐらい人気が出たかって言うと……。
•グランツーリスモに作者仕様のクルマが収録
•有吉の壁できつねというお笑いコンビがパロディーする
•AE86の価格が高騰するという社会現象が出る。
•車の話でイニDのキャラが出る
さらには内容が犯罪助長と言われるにも関わらず、メーカーから公認のような扱いを受けたり、走り屋の天敵である警察とコラボしてたりしています。

 
 なぜそれぐらい人気が出たのでしょうか? 自分、まとら魔術が分析してみます。イニDが人気すぎて嫉妬していたこともありました。

遅くて古いクルマが当時最新で高性能なクルマが勝つところ


 主人公・藤原拓海の愛車はご存知、AE86型スプリンタートレノです。このクルマはスペックが低く、パワーが130馬力しかありません。実は発売当時は注目されておらず、どっちかっていうと、バラードCR-Xやワンダーシビックが注目され、固定ライトである兄弟車のレビンの方が人気でしたし、本車がレースで人気を集めたのは土屋圭市がスカイラインを倒した時(彼の走りは不正疑惑があったほどです)ぐらいです。
 対するライバルのクルマたちはFD3S型RX-7、BNR32型スカイラインGT-Rという280馬力級のクルマたちで、チューンされてさらに速くなっています。
 対抗する術がないように見えますが、これらのクルマに勝ってしまいます。これは拓海の腕が非常に高く、その秘訣は父親から13歳にして運転を始めたからです。高い運転テクニックによって高性能車相手に勝つことができました。
 ちなみにしげの秀一先生によると、主人公のクルマをAE86にしたのは自身の愛車だったことと、遅いクルマが速いクルマに勝つのは面白そうだと思ったらしいですが、上手く行きました。王道のスポーツ物で、弱小チームが強豪チームに勝つみたいな感じ、縛りプレイでクリアする感じでカタルシスがあるからです。もし主人公のクルマがGT-Rだったら弱いものいじめに見えて面白くありません。
 似たような理由で人気の動画があります。ナットォさんのフィットだけでグランツーリスモ6を攻略する動画です。ショートカットやブロックといったダーティな戦法を使ったとはいえ、AE86と違ってスポーツカーではないフィットでスポーツカーやレーシングカーに勝利していくことから注目を浴びました。

王道で分かりやすいストーリー


 主人公の藤原拓海は秋名スピードスターズの仮メンバーですが、そのチームは弱小でお遊び程度の走り屋しかいないチームです。そんな主人公の拠点の秋名に、赤城レッドサンズという関東最速候補という強豪チームが現れました。レッドサンズはスピードスターズのメンバーを倒していき、リーダーの高橋涼介は「カスばかり」と見下し、スピードスターズ側は絶対絶命の状況でした。しかし、救世主が現れます。それはMR2や180SXではなく、AE86に乗った拓海がレッドサンズのナンバー2で涼介の弟・高橋啓介のFDを抜いていきました。悔しがる啓介は遅いクルマに抜かれたことでプライドを傷つけられ、スピードスターズに挑戦します。その矢先、スピードスターズのリーダー・池谷浩一郎が事故で怪我します。その代役を拓海が務め、リベンジしに来た啓介を返り討ちにしました。
 次なる挑戦者は妙義ナイトキッズの中里毅です。彼はかつてS13型シルビアに乗っていましたが、ある敗北からドリフト走行を卒業し、BNR32型スカイラインGT-Rに乗り換えました。そのクルマは高性能なことから拓海の敗北が予想されましたが、BNR32の弱点を突いたことでまたも勝利します。
 その後も、ナイトキッズのナンバー2・庄司慎吾、関東最速候補で啓介の兄・高橋涼介を倒していき、クルマで見下されていた拓海の名前は伝説になります。
 また王道でだけでなく、他漫画を下げるような言い方をしますが、妊娠した妻より走りを優先した男や事故死した父親の背中を追いかける息子を出さないほど、分かりやすい内容になっています。
 王道で分かりやすいだけでなく、拓海をライバルだと認める啓介、敗北から立ち直って妙義最速となった中里にもドラマが描かれているから面白く描かれております。


中二病じみたセリフの数々


 本漫画はいい意味で中二心をくすぐります。
 登場キャラはいい年した大人が多いのですが、セリフは良くも悪くも厨二っぽく、それが印象に残ります。
 中里の「リアサイドについているバッジは無敗神話のバッジだ」とか。
 中でも、埼玉来たAE86レビンターボ乗り・秋山渉は「峠速い奴こそカッコいいんだ」や「アドレナリンどっばどば」と中二病セリフを全開で発します。
 厨二病ランキングでは1位が秋山渉(ターボ)、2位が中里毅、3位が小柏カイ(MR-S)ですね。

インフレがない


 普通、漫画は回を重ねる事に、登場人物がどんどん強くなっていきます。例えば、ドラゴンボールのフリーザは宇宙の帝王と呼ばれていましたが、回を重ねるごとに彼を一撃で倒せると豪語するキャラ•界王神が現れてしまいました。
 しかし、頭文字Dはインフレが存在しません。バトルは腕やクルマだけでなく、コースの熟練度やドライバーの精神状態で結果が変わりますから。中里毅の後に格下である庄司慎吾と戦ったり、高橋涼介の後は彼に憧れた佐藤真子と彼より遥かに格下である中村ケンタと戦ったりしました。前者はガムテープデスマッチというルールを設けたり、後者はコースを変えるなど結構工夫しているようです。

身近で手軽なクルマばかり


 本作にはトヨタ•スプリンタートレノをはじめ、マツダ•RX-7、日産•スカイラインGT-R、ホンダ•シビックといった魅力的な国産車が出ます。
 一方で、サーキットの狼ではロータスやフェラーリ、ランボルギーニといった高級外車が登場しましたが、頭文字Dには出ません。
 これは作者が外車禁止というルールを設け、「日本製の車で日本の峠を走ってて、若い人が乗ってて、手が届くものにしたかったから」と考えていたからです。このルールは功を奏し、「登場車種が身近に見える」と読者から太鼓判です
 しかし、頭文字Dは来年で連載から30年を迎え、登場するクルマは500万円以上で取引されるようになりました。
 続編ではMFゴーストでは外車が解禁されましたが、「身近に見えない」という声もあります。

アニメ化ブースト


 本作を成功作に押し上げたのはアニメでしょう。
 アニメが成功したのは以下の理由です。
•ストーリーの良改変
•ユーロビートを使った斬新な演出
•モデリング自体発展途上ながらも、分かりやすさを重視したCGの使い方
•キャスティングミスのない豪華声優陣
ただ、話すのは長くなるので、またの機会にします。

著名人のファン


 レーシングドライバーのファンは多すぎるので割愛します。

•モンスターエンジン西森陽一


 有名人のファンでわかりやすいのが彼でしょう。彼は本作がキッカケでAE86を買うほどです。
 本作の魅力は「万人受けしない、クルマ好きのためのマンガ」だと語っています。

•オリエンタルラジオ藤森慎吾


 本作がキッカケで免許を取得したとアニマックスの番組にて語っていました。
 愛車は2代目シビックです。

•GACKT


 主題歌も担当したことあります。
 ゲーム版頭文字Dにハマりすぎて、自宅に設置したほどです。

連載されるまでの経緯

 バリ伝連載終了後に本作をすぐ連載出来たのか? と思いきや、決して平坦な道ではありませんでした。バリ伝連載終了後はスポーツ漫画や能力バトル漫画を描きましたが、どれも打ち切りに終わっています。しかし、そんな作者を救ったのは編集部の「好きなものを書いたら?」という鶴の一声でした。作者は「好きなものを仕事をしない」と決めていましたが、編集部に説得されてクルマ漫画「トンネル抜けたらスカイブルー」を描き、さらには発展したのが本作です。
 もし編集部の鶴の一声がなければ、本作は生まれなかったでしょう。そんな編集部は有能だと感じました。

まとめ


 どうでしょうか? 頭文字Dが人気の理由がわかりましたか? 走り屋漫画でありながら圧倒的人気を誇るには理由はあります。一方で本作に影響されて事故を起こす人もいます。だが、悪いのは読者の方です。作品は悪くありません。
 また、本作のクルマを鉄道に置き換えた、電車でDも存在しますが、鉄道にしてもストーリーが通用すると分かります
 圧倒的人気を誇る本作を今後、今後現れるのでしょうか? 最近は走り屋漫画多いですからね。
 果たしてどれが超えられるのか?
 では、またお会いしましょう

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