精神覚醒走女のオオサキ ACT.18「大崎翔子、精神覚醒!」

 俺、戸沢龍は走り屋を始めた当初はS14型シルビアに乗っていた。
 あれはFRのクルマ、つまりドリフトの走り屋を目指していたんだ。

 しかし、俺には向いていなかった。向いていないと言うよりマッチしていなかった。
 その後、S14は「欲しい」と言った妹に譲ったんだ。

 ドリフトを諦めた俺はDC5を購入した。
 その後DC2乗りの女性ドライバーこと師匠に出会い、運転の腕を磨き、派手な技だと思ったブラインドアタックを使い始める。
 このその走りを使い始めた後から榛名で名を上げていった。

 榛名で名を上げていく頃、1人の走り屋に出会う。
 後にチームのNo.2となるZ33乗り、柳田マリアに出会った。彼女はコーナリングの時、サイドブレーキだけのドリフトを使う面白い走り屋だ。
 俺と同じ榛名で名を上げており、俺はダウンヒルで名を上げているのに対して、あいつはヒルクライムで名を上げていた。

「あたしは柳田マリアじゃん、ヒルクライムで名を上げているぜ」

「こっちは戸沢龍だ。ダウンヒルとブラインドアタックが得意だ」

 この柳田と言う奴とはすぐ仲良くなった。
 その後、彼女と共に「WHITE.U.F.O」を結成する。
 夜間にヘッドライトを消すとハンドリング性能がアップする能力を持つ覚醒技・WHITE.W.F.O.ミッドナイトドライブ流はこの時から使い始めたんだ。

 そしてこのWHITE.U.F.Oは榛名で一番速いになった。
 今でもこのチームは最速の座を守っており、他のコースでも速いほどだ。
 赤城最速・雨原芽来夜、妙義最速・矢口真綾と共に俺は「上毛3星」と呼ばれている。

 けど、現在大崎翔子とバトル中の俺は負けそうな気持ちだった……。

 赤城最速・雨原芽来夜戦以上だ――。

 サクラ・ゾーンのS字直線――。
 大量のオーラを纏ったおれのワンエイティはものすごいSスピードで峠を下っていく! 
 スペックを遥に超える速度だ!

「なんだッ!? あのワンエイティッ! いつもより速くなっていねーか!」

「このワンエイティ、350馬力と言ってたけど――400、500馬力ぐらいの走りをしているんじゃあねーか!」

 スピードの速くなったワンエイティを見てギャラリーは驚きを隠せないッ!
 頂上、それが報告される。

「今サクラ・ゾーンのU字ヘアピン! ワンエイティが突然なぜか速くなっています!」

「それ、本当じゃんか……?」

 それを聞いて柳田は驚く。

「本当です! 350馬力を超える性能のような加速力・旋回性能と、プロのレーサーのような操作性で下っていきます!」

「ワンエイティが速くなっている……? 戸沢さん、オオサキをかなり離しているますけど――速くなったワンエイティに追いつかれたら大変ですね……柳田さん」

「あのワンエイティに離された距離を追い上げられるかもしれないじゃん……」
 
 その現象にWHITE.U.F.Oのメンバーは怯えだした。

 智姉さんとプラズマ3人娘は……。

「智さん! サキさんが速くなりましたよ! けど、それは何で起きたんでしょうか?」

 クマさんは能力でおれが速くなったことを喜ぶ!

「あれは――オオサキの能力だ」

「能力――? サキはん、今そんなもんを使っとんか?」

「そうだ、川畑。 オオサキは精神力にある程度大きなダメージ受けるとクルマの加速力・旋回性能・制動性能、ドライバーの操作性・集中力が上げ、さらなる人馬一体の走りをするんだ」

 智姉さんはプラズマ3人娘の能力を説明をした。

「速くなったサキちゃん――離された距離を縮めて逆転するかもしれないね」

「小鳥遊――オオサキの逆転はここから始まるんだ!」

 果たしておれの能力で離された距離をどう縮めるのだろうか?

 オオサキの能力発動に最初の難所にいるギャラリーをしているサクラの妹たちは――。

「オオサキの奴、謎のオーラを大量に纏ったって言った。トランシーバーを持ったギャラリーが言ってたぜ。あのオーラを纏った後はスペックを越える走りになるほど速くなったって聞いてた。能力が始まったみたいか?」

「ついに始まったな、オオサキの能力」

 この2人もオオサキが能力を発動させたことを知る。

「やっぱりか。現在オオサキは戸沢にすごい追い詰められているぜ。けど、能力で速くなったおかげで逆転できるのか! 面白くなってきたぜ、このバトル! イィーネ!」
 
 双子の姉は興奮し、それを言った後に右手の人差し指をアゴにあてる。

「逆転は出来そうだと思うねヒマワリ、さらに面白くなるのはこれからだよ。能力で覚醒したオオサキは戸沢との差を縮めてくるだろう」

 能力を発動させた後のオオサキの逆転を双子の妹は予想した。

 覚醒技の能力で覚醒したおれの走りはサクラゾーンをものすごい速度で駆け抜ける。
 左U字ヘアピンを<コンパクト・メテオ>で攻め、90度のコーナー、2連ヘアピンをガードレールに接触寸前のドリフトで抜けて100m離れていた戸沢との差を能力で縮めていき、ついにはDC5の青いテールを捉える!

「縮めてきたか、なんだあの大量のオーラは!? と言っても、峠に一番向いているFFと走りに必要としていない物を犠牲にして速さを追求したTYPE-Rの実力、そして榛名最速と呼ばれ「上毛三星」の1人と言われている俺とDC5をなめんなよ。絶対抜かせないからな」

 相手の覚醒技の能力が発動しても、負けずに意地を見せて車を走らせる。

 サクラゾーンを抜けて第3高速セクション。

「パワーはないが、FFの特性のおかげで直線でも追いつくことはできないことは証明済みだ!」
 
 しかし、覚醒技の能力から逃げきれなかった。

「離せない!? なんだ!? 能力の仕業か!?」

 能力を纏って速くなったおれのワンエイティに接触寸前なほどに食いつかれる。
 下りで速いFFのトラクションは通用しなくなっていた。
 100mあった差が今ではテールトゥーノーズ(前のクルマのリアと後ろのクルマのフロントが接触寸前に接近すること)の状態になるほどの差になっている。

 そのまま、赤城ダウンヒル最後の難所・5連続ヘアピンに突入した。

 2つ目にはある走り屋がギャラリーしている。
 雨原芽来夜と葛西サクラだ

 耳元に2台のエンジンが聞こえてくる。

「もう最終ヘアピンに来たみたいだな!」

「――オオサキ……大量のオーラを纏っている……能力なのか――?」

 サクラはおれを纏う大量のオーラを見た。

「ついに発生したか……オオサキの能力。こいつで……いつもより……速くなっている――」

 初めて見たおれの能力を見てサクラはそう感じた。

「あと……もうすぐ勝負は付きそうだ……オレの予感ではオオサキは見たことのない技を使ってくるだろう……」

 次の展開はこう予想した。
 
 その技とはおれが戸沢対策に練習していた技だ。

 5連続ヘアピンに突入したばかりの2台は最後の勝負に入った。

「ここから最後の勝負だ、逆転はさせない。さっきの第3高速セクションでは縮められたが、下りでの加速とコーナリング性能ではこっちのほうが上だ。絶対に抜かさない、勝つのは俺だぜ」

 1つ目の右ヘアピン、内側を戸沢はグリップ走行、外側をおれはドリフト走行で抜けた。
 次は2つ目の左に入る。

「来たぞ!
 戸沢のDC5が先行だ!」

「もう残り少ない、さてどう追い抜く? ワンエイティにはブラインドアタックのような戦法が使えない。さて、どうやって俺を倒すか? 差をつけてやろうか、<ハヤテ討ち>!」

 時速160km/hのグリップ走行で攻める!

「相手は<ハヤテ討ち>を使ってきたか……こっちも技だ! 出来れば強力な物で行こう! 小山田疾風流<フライ・ミー・ソー・ハイ>!」

 おれも戸沢に対抗して時速200kmを超えるドリフトを披露する!!
 グリップ走行とドリフト走行が激突する!

 その時、<フライ・ミー・ソー・ハイ>の煙からオーラを纏うワンエイティにある変化を起こす!

「あれ、あの技は!?」

 ワンエイティから煙が現れて、消えた!

 赤城5連続ヘアピンの2つ目には白い光景が現れた!

「なんだ、あれ!
 ワンエイティの故障か……!」

「消えたのか……」

 その姿にギャラリーしているDUSTAWAYの2人は困惑する!

「後ろに煙が上がっている……! ワンエイティがいない!? 故障したのか!? まさか――あの煙の中!?」

 戸沢も困惑していた。
 煙はDC5も包んでいく!

「くそ! 煙に包まれたか!」

 DC5が煙に包まれた後、ヘアピンを立ち上がるとすぐ消えていく。
 2台が姿を再び現した。

 その影響でポジションが逆になり、おれが先攻、戸沢が後攻になった。

「今の見たか、サクラ! 煙の影響なのか、オオサキちゃんが戸沢を追い抜いたぜ!」

「すごいな……」

 煙を使って戸沢を追い抜いたことにDUSTWAYのトップ2は興奮の言葉を放った!
 あれはやはり……。

「成功したよ……おれが練習で放てなかった<スケルトン・アタック>が」

 そう、戸沢対策に練習していたが失敗に終わった技だ。
 この技の属性は土属性だったため闇属性の戸沢の覚醒技とは相性が悪く、速度と威力は低くなっているけど、白煙に消えることができた。

「あの煙は追い抜きのため放ったということだな。 くっ、面白い奴だぜ。ブラインドアタックに似たような技を使うとはな――」

 悔しそうな言葉を放ったが、その追い抜きを戸沢は認めた。

「だがな……後攻に入ったほうが俺は速い。最後まで諦めないぞ。あのオーラを纏って速くなったワンエイティについて行って、そしてまた再び抜く!」

 終盤で追い抜かれたが諦めず、おれの尻尾を追うとアクセルを暖めない。

 しかし、次の3つ目のヘアピンでは能力でコーナリング性能とドライバーの操作性と集中力を上げたおれのワンエイティに離される
 ついには勝機が消えてしまい、戸沢は勝負を諦めてしまう。
 
 このバトルはおれの勝利にまた終わった――。

 結果は頂上にいる戸沢以外のWHITE.U.F.Oのメンバーにも伝えられた。


「たった今バトルが終了しました! 戸沢さんが敗北しました! 白い煙を纏ったワンエイティに抜かれたようです」

「そんな! 榛名最速ダウンヒル最速と呼ばれ、「上毛3星」と呼ばれた戸沢が負けた……?」

 それを聞いた柳田は驚きを隠せず、顔を下に向ける。

 智姉さんとプラズマ3人娘の方は――。

「勝った! 第3戦、完!」

「第3戦と言うより、第4戦やろ、クマはん。といっても第6戦、完やね」

「あ、そうだべ。サキさんが勝ちました! 智さん!」

 おれが勝ったことを智姉さんに伝える。

「さすがだな、オオサキ。能力を発動させ、練習で苦労した<スケルトン・アタック>で戸沢を追い抜くとは大した奴だ」

 勝ったおれにと健闘をたたえる。

「あの榛名下り最速の戸沢龍を倒しました! くッー! 興奮してきたべ! サキさんについて良かっただ! 下に行って祝いましょうッ!」

「そうだね。車に乗って下に行こう!」

「私も賛成だ。
 ゴール地点に行ってオオサキを祝いに行こう」
 
 ゴール地点、勝ったおれは車の中で休んでいた。

「あ――疲れたよ……」

 デジャ・ヴの影響で体力をかなり消費してしまったため、疲労状態になっている。
 休まないといけない状態だ。

 運転席側のドアの窓に人影が現る。

「いいか?」

「はい」

 ノックに答え、おれは窓を開ける。
 人影の正体は戸沢だった。

「男だと見てビビっているかと思っていた」

「そんなことないよ、君は男だけどおれはもう平気だよ。硬派な人にはビビらないからね」

「完全に俺の負けだ――すごかったよ。覚醒技の能力とそして煙での追い抜き、あんな技を使うとは思えなかったぜ」

「あの技は君のブラインドアタック対策に思いついた技だよ。練習の時には失敗ばっかりだけど、本番でやっと成功した」

「そうなのか。 俺の技対策にそんな技を思いついたのか、面白い奴だ。今回のバトルは負けたけどとても楽しかったぞ。今までのトップ3に入るぜ」

「おれも楽しかったよ」

「じゃあな、またいつか会おうな」

 戸沢はワンエイティから去っていき、自分の車に乗って帰っていった。
 
 そのあと、4台のクルマが来る。
 智姉さんとプラズマ3人娘がやってきた。

 4台がゴール地点に来ると4台からそれぞれのドライバーが降りる。

「サギさん、やったべ!」

「オオサキ、上手く勝利したな。あと、速くなったな――これはお世辞じゃあない、私は言わないからな」

「いや、それほどではありませんよ! まだ智姉さんには及ばないですし――」

 バトルに勝ったおれをまるで我が子の成長を見届けた親のように祝う。
 それには照れた。

「いやァ、サギさんすげぇべ!
 榛名最速と呼ばれ、下りに速いFFに乗る走り屋を倒すなんて――おら、興奮しただ~!」

「サキちゃん凄い!」

「さすがやで!」

 プラズマ3人娘もおれの活躍を祝った。

「あのこれまで戦った中で速い走り屋を倒すとはなにか褒美をあげたいな。バトルに勝ったご褒美としてこれから温泉行こうか?」

「温泉? 行きたいです! バトルで能力を使ってヘトヘトですからね」

 これの褒美におれは賛成だ。
 身体を癒すことができるからね。
 速く入りたい!

「決まりだ。
 じゃあ温泉に行こうか。
 プラズマ3人娘もついてこい」

 温泉へ行くため5人はそれぞれのクルマに乗り、駐車場を去っていく。

 最初の難所のギャラリー地点にて。

「大崎翔子、また勝利! イィーネ!」

 右手の人差し指と親指の間を90度に広げ、それをあごに当てながら双子の姉は言った。

「面白かったろ? 大崎翔子の強さがな」

「大崎翔子は強いということは分かっているけど、彼女の強さが改めて分かったぜ」

「今度、ボクは大崎翔子にバトルを挑むつもりだからな。それの参考になったよ。じゃあボクらも帰ろうか」

 姉妹は去っていく。

 赤城ではバトルの熱が冷めた数分後、おれをはじめとした5人は赤城温泉に着いていた。

 その赤城温泉の温泉にある女湯に入っている。さっきのバトルを観戦していたギャラリーたちの姿もある。

「サキさん、温泉どうだべ?」

「へぇ~生き返るよ」

「サキちゃん生き返ったよ!」

「生き返ってよかったで!」

「今回のバトル大変だったようだな」

「はい、最初は作戦通りに相手の技を封印するために後攻を走ると言う作戦はうまく行くと思っていました。まさか相手が作戦を見破ってわざと後攻に行くとは思えませんでした。さらにブラインドアタックと消えるラインで抜かれると相手にすごい離され、精神がすごい苦しくなりました。そのおれを支えたのが突然現れた能力です。発動したことはバトルの支えになりました」

 今回のバトルをこう振り返る。

「なるほど、作戦の失敗はドンマイだ。バトルはこれからもたくさんある。あと、ラストで練習では失敗した<スケルトン・アタック>を本番で発動させて戸沢を抜いたのは素晴らしかったぞ」

「ありがとうございます。本番でいきなり成功するとはびっくりしました。上がった白煙がワンエイティを消すとはすごかったです! 発動せずに終わるかと思いました。追い抜きの途中で発動して良かったです」

 発動時の気持ちを振り返る。

「サキちゃん、バトルは大変だったね」

「そうやな」

 タカさんと川さん、とっても苦しかったけど勝ててよかったよ。

「サキさん、智さん、おらたち先に上がって来るべ」

「くにちゃんは先に行くよ」

「先行くで~」

 その後、プラズマ3人衆は風呂から上がる。
 おれと智姉さんも風呂から上がった。

 苦しかった戸沢との戦い。けど、勝利することができた。
 1日が今日も終わった――。


 翌朝。見た覚えのあるようなクルマが3台走っていた。
 1台は黒いZN6型86、その後ろに黄色いV36型スカイライン、一番後ろがGRX130型マークXだ。
 それらは前と同じ見た目ではなく、エアロを装着していたのだ。
 ZN6のほうはLFAを彷彿させるDAMD製のエアロ、V36はR35を彷彿させるメーカー不明のエアロを装着している

 その3台は今、前のクルマにケンカを売ったのだった。

「あたしの腕を見せてやる!」
 
 前のクルマの車種はBNR32型スカイラインGT-R。色は白でウインドウにはDUSTWAYがという文字が貼ってあった。
 3台のリーダー格であるZN6はこのクルマにパッシングしてバトルを挑む。
 バトルが始まってすぐコーナーに入ると追い抜いてしまった。

「雑魚め」
 
 ZN6乗りはそう呟いた。
 
 そのドライバーとはオオサキを怒らせた挙句に抜かれた、アースウインドファイヤーの谷村という女だった。V36は堀内、MarkXは矢沢のものだ。
 
 堀内も、矢沢も、谷村が抜いたBNR32を抜くと、次はDUSTWAYのステッカーを付けた黒いEG6を狙う。

「次はこいつか」

 谷村はすぐ直線でEG6を追い抜き、マークXとV36も彼女に続いて追い抜く。

「赤城最速チームのメンバーだと聞いてた割には大したことないな」

 追い抜いた2台の弱さに呆れているようだ。


 ダウンヒルのゴール地点近くの駐車場。
 3人は車から降りて会話する。

「あたしたちアースウインドファイヤーは車を改造し、車の腕が前より良くなった。3人の目標はDUSTWAYを潰して赤城最速になることだね」

「そうッス! 雨原という奴は古い存在と言わせてやりたいッス!」

 と堀内、

「赤城最速は私たちなのよ! 雨原ではないわ!」

 矢沢も続く。

「まず葛西サクラの2人の妹であるヒマワリとモミジを倒そう。次にサクラ、最後に赤城最速でDUSTWAYのリーダーの雨原芽来夜を倒そうじゃあないか! サクラの妹2人を倒したら覚醒技の修行を始めようか」

「ウェヒヒ、大崎翔子という走り屋に負けた後より強くなったうちの実力はあいつらに分からないッス」

「ヒマワリとモミジは楽勝かもしれないわ――ウェヒヒヒ」

 DUSTWAYの主要メンバーである雨原芽来夜と葛西3姉妹を撃退して赤城最速を名乗ろうと考えていた。
 
 3人は楽勝だと考えていたものの、ヒマワリとモミジの真の実力を知らない、舐めていたようだ――。

 さらに場所を同じくするが、時間は夜の11時。

 この時間帯の赤城山ではグリーンのSW20とオレンジのアルテッツァの2台が走っていた。
 どちらもDUSTWAYのステッカーを貼っている。

 2人の男性が2台の走りを眺めていた。

「来た来た。葛西サクラさんの2人の妹!」

「最近よく見かけるようになったな、この2人」

 その2台とは、SW20が葛西ヒマワリのクルマで、アルテッツァが葛西モミジのクルマだ。

「すごい速いぜ。この2台」

「さすが大崎翔子に負けるまで赤城で2番目に速いと言われたサクラさんの妹だからな。最近赤城で暴れているアースウインドファイヤーをやっつけてくれそうだぜ」

「ヒマワリのSW20、不安定な動きからコーナーでは3姉妹で一番苦手だけど立ち上がり性能はハイパワーなクルマや4WDに勝ってしまうことがあるほど恐ろしいからな。さらにはセナ足や低速コーナーでのドリフト走行、高速コーナーでのグリップ走行又はグリップとドリフトの中間はすごいぜ!」

ギャラリーはヒマワリの走りについてこう語り、

「モミジのアルテッツァ、高速トルクが細いので立ち上がりは苦手だけど、3姉妹では一番の突っ込みを見せるからな。モミジはとても頭が良く、駆け引きが上手い。直線でのブレーキフェイント(わざとブレーキを仕掛けることで相手を惑わせる)やわざと遅くドリフトさせてブロックするという駆け引きはとても恐ろしいぜ」

 モミジについてはこう語った。

「最近2台はサクラさんより上手くなったなって気がする。大崎翔子に対して姉の仇を取ろうと考えているからか?」

「オレもそう思う。
 上手くなっている感じだ」

 アルテッツァはサクラゾーンに入る。
 運転しながら、モミジはある決意を示す。

「今度大崎翔子に挑もうと思う。準備は整えているよ。サクラ姉ちゃんは戸沢との一件を終えたらリベンジ開始だと言っていたからな。ウェヒ、ボクには彼女の走りなんて御見通しだよ。ボクには“相手の技が分かる”という能力を持っているから」

 モミジはオオサキに挑む準備を整えているようだ。

「大崎翔子……君とのバトルを楽しみにしているよ。
 2回も言うけど、ボクの頭の良さと、能力によって君の走りは 御見通しだからな――」

 オオサキとのバトルに期待を膨らませるモミジ。
 ここから葛西3姉妹との全面戦争が始まるのだった。

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