精神覚醒走女のオオサキ ACT.37「離される」

あらすじ

 それぞれの思いをぶつけあいながら、バトルがスタートする。
 オオサキは先攻であり、サクラは後攻で、先攻を得意とする後者が後攻を取るのは意外だった。
 母親から教えて貰った技を使い、オオサキを苦しめる。
 そして彼女を追い抜くのだった。
 
 スタート地点前の駐車場……。
 頂上にバトルの状況が報告される。

「よっしゃー! 前に出たぜッ! イィーネッ!」

 ヒマワリはこの報告を聞くと、身体を跳ねさせて喜んだ。

「ぐっそ! サギさんが抜がれるとは……ごっちだってぐやしーべ!」
 
 熊久保の方はショックを受け、地団駄をしている。

「待て……抜かれただけやし」

「それは分がっているべッ! WHITE.U.F.Oを倒し、サクラの妹2人まで倒したサギさんは負けねーべ!」

「けどォ、サクラは先攻のほうが得意やで。きつうなるかもしれへん」

「どうなるんだろうね……」

 一方、智は辛抱強い顔でバトルの今後をこう見ていた。

「今は離れるか、ついてこれるのか、勝負どころだろう」

 2連ヘアピンの2つ目。
 ここは左の中速となっている。

「抜かれても、離されないよ! 小山田疾風流<フライミーソーハイ>! イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 おれはそのコーナーを、萌葱色のオーラを纏いながらの高速ドリフトで攻めていく。
 距離はテールトゥノーズになった。
 
 しかし、ゆるい高速左ヘアピンを交えた全開区間にて、ここでJZA80は神速の加速力を見せる。

「ギアを商用車以上にローギアードにした……さらにパワーを落とした代わりに……トルクの出やすいセッティングにしといた。ここなら効果が発揮される……」

 おれの眼から、JZA80は小さくなっていき……そしていなくなった。
 
 直線の後に来る右U字ヘアピン。
 サクラはここを<サンズ・オブ・タイム>で抜けていく。
 いつもの技とは異なっていた。

「母さんから……この技を攻めることに使えと言われた……」 

 今日の合わせて、バトルスタイルを変えたようだ。
 攻めとなったこの技も強力だった。

「今までのオレとは違う……」

 直後には左高速ヘアピンが来て、さらには短い直線が来る。
 さっきで技を使っただけでなく、ローギアードの加速でおれとの距離は引き離されていく。
 
 おれが第3高速セクションに入った時には、サクラの姿はいなくなっていた……。

「速い……!
 やっぱ前より速くなっているよ……」

 この時、サクラは赤城ダウンヒル最後のセクション、5連ヘアピンへ入っていた。
 大きく先行した彼女は1つ目と2つ目は技を使わないドリフトクリアする。
 3つ目の右ヘアピンにて、闇のような黒いオーラを発生させた。

「母さんから教えて貰った技で攻める……葛西血玉流<フェイントモーション・ダンス>」

 振り子が踊るようなドリフトで攻める。
 
 残りの4つ目と左ヘアピンと5つ目の右ヘアピンは、1つ目と2つ目同様に技を使わないドリフトで攻めていく。

「追いつかないと……!」
 
 遅れて、おれも5連ヘアピンに到着する。
 サクラ同様、1つ目と2つ目は技を使わないドリフトで攻めた。
 3つ目の右ヘアピンでは銀のオーラを発生させる。

「ヒマワリ戦で覚えた技で攻めよう。小山田疾風流<スティール・ブレイド>! イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 超高速のゼロカウンタードリフトで攻めていく。
 4つ目と5つ目はサクラ同様、技を使わないドリフトで攻めた。
 後者のヘアピンにて、折り返したサクラのJZA80と遭遇する。

「いよいよヒルクライムだ」

 そのヘアピンを抜けると、パイロンが見えた。
 ドリフトで折り返す。

「サクラにリードされている。
 距離を縮めなけば、負ける……!」

 ヒルクライムでは大きく離された距離をどうにかしないと考えた。

 折り返し地点前の駐車場では葛西ウメとモミジがギャラリーしていた。

「かなりリードしているね」

「サクラに技を教えたり、今日にあわせJZA80のセッティングして正解だったわ」

 しかし、モミジは衝撃的な一言を口にした。

「これぐらい離されていると、逆に縮められないか心配だよ」
 
「どうしてそんなことを言うの?」

「大崎翔子はピンチに強い走り屋だ。前にピンチの時に発生する能力で、戸沢やボク、ヒマワリに勝ってきた。発生したら逆転されるかもしれないし……」

「そう言えば、そうだったわね……どう対策すべきか分からなかったし」

 ギャラリーの中にはこんな人物がいた。
 この前、和食さいとうにいた女性と少女の2人だ。

「和食さいとうのクルマ、離されています」

「逆転するんやろうか?」


 スタート地点前の駐車場……。
 智はある弱点を見抜いていた。

「ギアをローギアードにしたようだが、弱点が存在する。峠は短い直線と曲線ばかりだと考えてこれを装着しただろう」

 智の見方はオオサキの逆転の鍵になるだろう……。

「さらに離してやろう……」
 
 一足速く折り返したサクラは、ヒルクライム最初の5連ヘアピンへ入った。
 1つ目の左ヘアピンは技を使わないドリフトで攻め、2つ目の右ヘアピンは<サンズオブタイム>で攻める。
 3つ目と4つ目は技を使わず攻め、5つ目は2つ目同様<サンズオブタイム>で抜けた。

「追いつかないと」
 
 おれの方は1つ目は技を使わず、2つ目は<スティールブレイド>を使って攻める。
 3つ目、4つ目では技を使わず、5つ目で再び<スティールブレイド>を使って抜けていく。

 第3高速セクションに入ると……小さいけどサクラのJZA80が見えてきた。

「行かせないぞ……」

 セクションの前半ではJZA80のローギアードの加速力で引き離そうとする。
 しかし……後半に入ると距離が縮まった。

「なぜだ……ローギアードミッションのJZA80についてきているだと……?」

「後半でおれの方が速くなっている!?」

 セクションが進む度におれとの距離が縮まっていく。
 これがローギアードミッションの弱点だ。
 JZA80は低速重視のセッティングされているものの、その分高速域のトルクは犠牲になっており、長い全開区間では不利になる。
 だからおれとの距離が縮まった。

 第3セクションが終わると、サクラゾーンに入る。

「こうなったら……母さんから教えて貰った技で……葛西血玉流<フェイントモーションダンス>……!」

 黒いオーラを纏い、振り子のようなドリフトを連続しながら攻めた。

「小山田疾風流<ズームアタック>!」

 こっちはガードレールギリギリのドリフトで攻める。

 短い全開区間が来て、JZA80のローギアードによる加速で距離が引き離されていく。
 その後、左低速ヘアピンが来る。
 ここは両者ともさっき技を使った影響もあり、使わず攻めた。
 サクラが引き離す。
 ヘアピンを抜けると、全開区間が来る。

「ローギアードの加速で引き離す……!」

「後半ではおれのほうが速いよ!」

 立ち上がりでサクラはローギアードで引き離すものの、後半では高速トルクのあるおれが距離を縮める。

 2連ヘアピンが来る。
 1つ目の右は両者ともに技を使わずに攻めた。
 2つ目の左に突入すると、両者ともオーラを発生させる!

「<コンパクト・メテオ3>!」

「小山田疾風流<スティール・ブレイド>!」

 両者のドリフトがぶつかり合う!
 その勝負はサクラが勝ち、おれを引き離す。

「今日のためにオレは変わった……母さんから守るドリフトより攻めるドリフトで行けと言われたからな……今までのオレとは違う……」

 その後、残りのサクラゾーンでもおれの眼から消えるほどの距離に引き離していく。
 攻めのスタイルは強力だった。

「このまま……リベンジを許してしまうのか……」

 その時、おれのワンエイティが白と萌葱色のオーラに包まれる。
 ついに能力が発生したのだった。

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