精神覚醒走女のオオサキ ACT.39「新従業員」
あらすじ
オオサキの能力が発動した。
一方のサクラも、フローに入って操作性と集中力を上げていく。
能力とフロー、ドライバーの実力を上げる2つの力がぶつかり合う。
音の技でフロー状態を解除させる。
この決戦はオオサキが白星を勝ち取った。
サクラとの戦いから2日後、5月18日の月曜日。
時間は午前9時。
リニューアルのために休業していた和食さいとうが再開した。
座席の数が増えた他、新しくカラオケボックスが追加された。
さらにはこの店に新たな仲間がやってきた。
「リニューアルに合わせ、配達用のクルマを購入した。それはダイハツ・ミゼットIIだ」
「よろしくね、ミゼットII」
このミゼットIIのリアには料理を配達するための荷台がついてある。
このクルマはただの軽トラではなく、エンジンはヤマハ製バイクのエンジンを積んでいる。
速く配達できるかもしれない。
これからはワンエイティ、R35、ミゼットIIと3台共に和食さいとうで暮らすことになる。
午前10時になると、1人の女性と1人の少女が和食さいとうにやってきた。
外見は、前者が黒髪のショートカットで、後者が黒髪のロングヘアーだ。
「開店前にすみません。ここで働かせてはいただけないでしょうか?」
「ここでバイトしたいんです」
「分かった。採用するとしよう。最近リニューアルをしたばかりだからな」
「ありがとうございます。ここで一生懸命働きます」
「うちもです」
こうしてさらに2人の仲間が加わった。
ここで自己紹介をする。
「私はここの店長を勤めている斎藤智だ」
「私は萩野桃代です。ある家でメイドをしておりましたけど、その家が経営していた会社が倒産したためにここで働きたいと決めました」
「うちは井上薫です。元々は別のバイトで働いとったんですが、ブラック過ぎてやめました。よろしゅうお願いします」
「こちらはうちの従業員の大崎翔子だ」
「大崎翔子だよ、よろしく」
「オオサキさん、よろしくお願いします」
桃代さんは気になることがあった。
「ところで、あの赤いクルマは誰のものでしょうか? この前、レースしている所を見ましたよ」
「あのワンエイティはおれの愛車なんだ」
「オオサキさんのものでしたか。幼そうな見た目に似合わず、クルマを乗りこなせるとは意外ですね」
「オオサキさんって運転上手いんですか? この前のレース、勝ったんはあのワンエイティという赤いクルマやったし」
「上手いぞ。私がテクニックを基本から教えたからな。今まで6回のバトルで勝利してきた」
「すんごいですね~! じゃあ、そのバトルの話をうちらに聞かせてください」
「その話はおれがするよ」
まずは最初のサクラ戦だ。
「最初に戦ったのは葛西サクラという黒いJZA80型スープラ乗りなんだ。この前戦った相手でもあるけど、実は彼女と戦ったのはこの前が初めてじゃあないんだ。ドリフト走行会で彼女と鉢合わせして、目をつけられてバトルを挑むことになったんだよ。初めてだから緊張したけど、勝てて良かったよ」
次はWHITE.U.F.O戦。
まずは柳田との戦いを振り返る。
「次に挑んできたのは、榛名山のチーム、WHITE.U.F.Oのナンバー2の白いZ33型フェアレディZ乗りの柳田マリア。ヒルクライムで挑むことになったけど、パワーがかなりあると聞いてすごい不安だった。けど、智姉さんの考えた作戦のおかげで勝てたんだ」
次は戸沢戦だ。
「柳田の親分にあたる、白いDC5型インテグラタイプR乗りの戸沢龍にも挑まれた。ヘッドライトを消す走りを得意と聞いたから、おれはそれに対抗する技を悪戦苦闘しながら練習した。バトルになるとその走りに苦しめられて、能力が発動してしまうほどだったけど、最後に練習した技がついに成功してl勝てたんだ」
「能力って何でしょうか?」
「能力って覚醒技と呼ばれる速い走り屋が持っている特殊な能力だよ。覚醒の技と書いて「テイク」だよ」
「へぇ、超能力が使えるんですね」
「みたいなもんだよ」
一般人には難しい話でごめんね。
話を戻し、次は長女のサクラのリベンジをしてきた葛西三姉妹との戦いの話だ。
まずはモミジ戦から。
「戸沢を倒してから葛西三姉妹のリベンジ作戦が始まり、サクラの下の妹でオレンジ色のトヨタ・アルテッツァ乗り、葛西モミジと戦うことになった。彼女は頭が良く、バトルの時は雨が降ったから苦しめられた。そんな中で新しいスタイルの走りで倒すことに成功したよ」
「新しいスタイルって何ですか?」
「ゼロカウンタードリフトだよ。ハンドルを曲げずにドリフトをするんだ」
「高度な技術やね」
これも一般人に難しい話だ。
次にヒマワリ戦だ。
「モミジを倒すと、今度は葛西サクラの上の妹である緑のSW20型MR2乗りのヒマワリ戦だ。彼女のSW20の立ち上がり加速は強烈で、今までバトルしてきた相手の中ではトップクラスだった。もう少しで負けると思ったけど、終盤で相手がスピンして勝てたんだ……」
最後にこの前のサクラ戦だ。
「妹2人を倒すと、ついに葛西サクラがリベンジを挑んできた。前より速くなっていて、一時は大きく離されたんだ。けどクルマの弱点を見抜いたことと、新しい技で倒すことができた」
「なるほど、こんなドラマがあったのですね」
「今度機会があれば、オオサキさんの車に乗ってみたいです」
午後1時、和食さいとうが開店する。
全員制服に着替えて仕事開始だ。
早速お客さんが来る。
性別は男性で、長い青髪を束ねていた。
「いらっしゃいませ!」
おれは男性恐怖症だ。
けど、仕事の時はそれを捨てなければならない。
ここの客は大半が男性であり、おれがバトルを名を上げてからは増えたものののそれでも女性客はほとんど来ない。
「と、智!?」
男性は智姉さんの顔を見つめた。
その時、おれの嫉妬心が燃え上がった。
智姉さんという方は大事な人だから、誰にも取られたくないと考えている。
「お客さん、智姉さんと知り合いなの!?」
「私の先輩だ。高校と大学時代、知り合いだったんだ」
「あなたって、もしかして……ワンメイクレースで「ヤンキードライバー」と名を馳せた美波六荒さんじゃあないですか?」
桃代さんも男性のことを知っていたようだ。
「久しぶりだな、六荒。注文は何にするんだ?」
「ターボ焼きそばで」
注文されたターボ焼きそばを智姉さんは10分で仕上げる。
それを六荒は平らげた。
「ごちそうさまでした」
「お客様」
おれは六荒という男性を呼び止める。
智姉さんをこの人に取られたくないから。
「おれとレースしない!? すぐ始めるけど
おれが負けたら智姉さんを好きにしていいけど、勝ったら智姉さんはおれの物だから」
仕事中なのにヤバいことを宣言してしまった。
「仕事中なのに、そんなことを言っちゃ悪いですよ! あなたは先輩じゃないですか!」
「職務放棄やないですか!」
これはやっぱまずかったらしく、桃代さんと薫ちゃんに止められる
しかし……。
「私の取り合いのためのバトルか。いいだろう」
「いいのですか、店長!」
「構わないぞ」
智姉さんはそのバトルを認めたようだ。
「薫ちゃん、助手席に乗らない?「今度、機会があれば乗ってみたい」と言ったよね」
「今は仕事中やから、遠慮しときます」
おれ1人で挑むことになる。
制服姿のまま店を出て、車に乗り込む。
相手は銀のZ34型フェアレディZだ。
彼から覚醒技のオーラを感じない、覚醒技超人ではないようだ。
バトルはヒルクライムで行い、カウントは智姉さんがする。
「カウント始めるぞ! 5秒前! 4、3、2、1GO!!」
カウントが終わると、2台の車がスタートする。
覚醒技超人相手ではなかったけど、智姉さんを自分の物にしたいあまり、手加減せずに覚醒技を使って挑んじゃった。
バトルはおれの圧勝で終わった。
それが終わると、店に戻ってくる。
「速いな、君。ワンメイクレースのレーサーだった俺に勝つとはな……」
「オオサキは速いぞ。私が育てたからな」
「学生時代にいろいろ言わせた智が育てたのか。だから速いと分かったよ」
この後、六荒からある話があるようだ。
「実は頼みがある。俺をここで働かせてくれないか? 所属チームから戦力外通告されて職を失い、離れている妻と娘を養う手段が無くなった。新たなチームが見つかるまででいいか?」
「結婚していたのですか!?」
「びっくり」
「意外やわ」
「妻子を養いたいため、ここで働きたいんだ! 俺は料理が得意だから、調理の仕事ができる! 頼む、雇ってくれ!」
六荒は膝をついてお願いする。
「リニューアルしたばかりだから、お前を雇うことにしよう。1日だけで3人雇うことになるとはな……。やれやれだな……」
「智、ありがとうな」
こうしてまた1人の従業員が増えた。
妻子持ちだけど、智姉さんは渡さないよ。
智姉さんのことを好きになったら浮気になるからね……。
午後15時、プラズマ3人娘が和食さいとうへやってくる。
「大変だべ……! 大変だべ……!」
クマさんは慌てた様子だった。
何があったのか!?