精神覚醒ノ肥後虎 ACT.31 風水
あらすじ
時田のアンラッキーカムカムによって、元々運の悪いひさ子の日々はさらに災難の連続だった。
頭をぶつけたり、足を挟んだり、ボールが当たったり……挙げ句にはコンビニ強盗の人質になったりもした……。
そんな中、サラマンダー財団からある物が送られる。それは開運グッズと風水の本だった。
それを着用したひさ子は再び時田にバトルを挑むのだった。
森本ひさ子(BG8Z)
VS
時田銀蔵(GRS184)
コース:豊後街道上り
サラマンダー財団がターボば修理しとったファミリアが戻ってきた。
わしは開運グッズば身に付けたままクルマに乗り込み、再び時田に戦いを挑む。
カウントは虎ちゃんが担当する。
「行くばーい! 5秒前! 4……」
右手を上げ、カウントを数える度に指を折っていく。
「3、2、1、GO!!」
2台は一斉にスタートする。
前回は4WDの加速力を生かして前を取った。
しかし、今回は相手を見るために後ろを取ることにした。
「今回は後攻か……こんな弱虫な走り屋をクラウンのパワーで引き離してやるぜ!」
スタートしてすぐ、時田は銀色のオーラを発生させる。
「行きなり本気を出してやる! ゴールデンオンステージ流<銀峯の覇者>!」
時田の纏うオーラが激しくなり、彼の覚醒技が強化された。
蛍食堂。
飯田ちゃんとバトルの展開について話す。
「飯田ちゃん、バトルの結末はどうなるん?」
「森本さんには3つの風水を教えたわよ。3つのコーナーがポイントになるわね」
ここにひさちゃんのおばあちゃんが来る。
うちらに話に参加しようとした。
「何ば話しとるん?」
「何でもなかです」
スタートするとしばらくは直線が続き、ここは互角だった。
産庵前の左コーナーに入る。
ここに入ると、わしはあることば思い出しながら、技を発生させる。
3日前の出来事やった……。
飯田さんは風水の本を読んでいた。
「南の風水は……ゴールドよ。一番南のコーナーで金属性の技を使った方がいいわ」
豊後街道で一番南に位置するコーナーだ。
わしは金色のオーラを纏う。
「ゴールド・ラ……儀の蛍流<ベア·アックス>!」
金属性の初歩的な技を言おうとした瞬間、別の物に変化する。
オーラを纏いながら高速ドリフトでコーナーを抜けていき、ゼロクラに接近していく。
ばってん、そこを抜けると……あるトラブルが発生する……。
「タイヤが熱ダレした……?」
復活したファミリアのタイヤが弱っていたのか、こうなったかもしれない……。
タイヤが熱ダレしたせいで、ファミリアはコーナーの出口でフラつく。
ゼロクラとの距離が少し離れた。
しかし……。
「この衣装があるから熱ダレしても負けるわけにはいかんたい!」
幸運の呼ぶスカーフがわしに力ば与えとる。
ふらつくファミリアをハンドルで抑えながら、走らせていく。
よかよか亭前のS字ヘアピンに入ると、時田はある行動に出る。
「これでも喰らえ!」
ブロックだ。
当たり屋らしい戦術ばい。
それには早めにブレーキを踏み、衝突を回避した。
きつい上り坂である滝室坂洞門のある右中高速コーナーに入る。
時田のゼロクラも金色のオーラを纏う。
「ゴールデンオンステージ流<バビロンアーチ>!」
ゼロクラはアーチを描くようにコーナーを攻めていく!
わしの方はコーナーの立ち上がりで、紫のオーラを纏う。
その色のオーラを纏うのは理由があった。
飯田さんから西の風水について教えて貰ったからだ。
「西に最適な色はラベンダーよ。この色は紫の一種ね」
思い出しながら、攻めるゥ!
「ポイズン・ボ……儀の蛍流<ドラゴンズ・ショット>」
竜の吐き出す光線のような走りでコーナーば脱出していき、ゼロクラに接近していく!
「ハザードランクが上がっている!? 進化しているなァ!」
滝室坂洞門を抜けて、S字、高速左ヘアピンに突入する。
時田のゼロクラが黒いオーラば纏っていく。
わし不幸にしたあの技だ。
「ゴールデンオンステージ流<アンラッキー・カムカム>!」
ゼロクラはブロックしてきた。
ばってん、わしはそれを対策している。
「こん走りは避けた方がよかたい!」
アウト側から、相手のクルマを避けるように走っていく。
ブロックには引っ掛からず、無事に前へ出ることが出来た。
「しまった!」
「こんハッピー法被があるけん、不幸なんか怖くなか!」
衣装と走りは関係ないけど、こん衣装を着ると勇気が沸いてくるばい。
前へ出たわしは、ファミリアの熱ダレした走りに気をつけながら……進ませていく。
S字ば抜けていき、2連ヘアピンに突入する。
1つ目で黄色いオーラを発生させ、<スライディング・ハンマー>を使おうとした。
黄色は赤に変化していく!
「儀の蛍流<デーモンズ・ソード>!」
剣ば振り回すようなドリフトさせながら、攻めていく。
ゼロクラを引き離す。
「<アンラッキー・カムカム>を失敗したのが痛かったか……」
時田の顔に焦りが出始める。
2連続の後ヘアピンの後は、ややキツいなS字が迫り来る。
後半からはトンネルに突入し、熱ダレでフラつくファミリアを抑えながら攻める。
直線に入っていく。
そこを終えると……右U字、左中速ヘアピンが迫り来る。
また2連ヘアピンが来た。
「そこの風水は……」
1つ目で白いオーラをわしは纏う。
これも風水だ。
「北の風水はホワイトがいいわ。ホワイトと言えば……光属性の技よ」
飯田さんの言葉ば思い出し……コースの一番北に当たるここで技を発動させる。
「<シャイニング・ボール>!」
発射される光の玉の如く、コーナリングで攻めていく!
後ろの時田の方も金のオーラを纏った。
「ゴールデンオンステージ流<あいつにノックアウト>!」
高速のスピードでファミリアをめがけてプッシュしようとした。
しかし……アウト側に膨らんでいく。
「くそォ!」
ゼロクラは失速。
わしを追いかけることはなかった。
勝利:森本ひさ子
わしと時田は蛍食堂へ戻ってくる。
虎ちゃんと飯田さん、おばあちゃんが迎えてくれた。
今回のバトルの結果を報告した。
「勝ってきたばい」
「おぉひさちゃん、時田ば倒したと!」
「約束通り、謝って貰うばい」
時田は両膝を地面につけ、土下座をする。
「……申し訳ございませんでした!」
謝罪したのち、当たり屋になった理由をば語りだす。
「実は……この間の震災で職場を失ったんだ」
「そうなん?」
「前に何度か地震に遭遇し、高校時代には阪神淡路第震災……何度か引っ越すと中越地震や東日本大震災、そして現在の熊本地震でも被災してしまったんだ」
「可哀想に……」
「熊本地震では仕事場が被災して無くなったから生活が出来なくなり……当たり屋を始めたんだ」
土下座して頼みだす。
「ここで働かせてくれ! 心を入れ替えて一生懸命に働く! あの当たり屋行為は2度としないから、頼む!」
おばあちゃんは時田の顔を見る……。
答えは……。
「あんたの気持ちは分かったとよ。ここで雇ったるばい」
「おばあちゃん、本当によか!?」
「よかよ」
「この恩は絶対忘れない!!」
こうして、時田は蛍食堂の従業員となった。
2日後の6月7日の火曜日。
蛍食堂で働く時田の姿があった。
一生懸命仕事しているようだ。
お兄ちゃんとおばあちゃんと共に。
6月8日の水曜日の放課後。
となりの席にいた男子生徒、茂野亮一くんに誘われた。
「加藤さん……僕の漫画読まん?」
「読むよ」
自分の部活そっちのけで漫研室へ立ち寄る。
飯田ちゃん、ひさちゃん、遅れてすまないけど……。
入ると、茂野くんの作品が沢山置いてあった。
最新作ば読んでみるこつにした。
全て読み終えたんは30分後のこつだった。
「面白かったとよ。ストーリーも重厚やし、キャラも魅力的やったたい」
「だんだんたい」
こんなに面白かなもん見せてもらうとは心が踊る。
そんな状態で自動車部の部室へと向かった。
ばってん……後でこの漫画の内容を変えられてしまう出来事が起きることはうちは知らなかった。
漫研部の部活が終わると、風紀委員長の貞元ユキノが来る。
この部室に入ると、厳命を下した。
「内容を変えた方がいいわよ。風紀を乱すわ」
風紀を乱すって……?
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