精神覚醒走女のオオサキ ACT.27「ヒマワリの作戦」
同じ頃、和食さいとう。
「先に行ってきます。行くよ、ワンエイティ」
眠るワンエイティのエンジンを起こし、その音をBGMにしながら戦場へ向かう。
「私も行くとするか。」
智姉さんもR35のコクピットに乗り込んでエンジンを起こし、戦いへ向かうおれを見守るために出発する。
大自然溢れる姿のまま戦場となった赤城山にあるダウンヒルのスタート地点。
「来たぞ、ヒマワリのSW20!」
「ウメさんのJZA70も来た!」
それらに続いて、おれのワンエイティと智姉さんのR35もここへやってくる。
「ヒマワリこそあいつに勝ってほしいな!」
バトルまで30分、開始を待つギャラリーたちの肩のぶつけ合いはとても盛り上がっていた。
バトル開始30分前――。
右におれのワンエイティ、左にヒマワリのSW20という2台の戦闘機がスタート地点に並ぶ。
今からバトルと言うのに、ヒマワリはクルマから降りるとギャラリーたちに手を降ってこんなことを呼び掛ける。
「サイン欲しい人、手を挙げてー!」
「はーい!」
どうやら欲しい人もいたようだ、やれやれ。
その人の元へヒマワリは向かい、サインを描いていく。
「ありがとうございます!」
ヒマワリの行動はこれだけではない。
「次は写真撮りたい人はいねーか!」
「あたしも!」
「私も!」
「俺も!」
それらのギャラリーらとともに記念撮影をする。
「もうすぐバトルなのに何やっているんだよ――」
「葛西ヒマワリは3姉妹一のお調子者っぷりを見せているな」
ヒマワリの行動におれたちは呆れるよ――もう。
「ヒマワリ――いきなりふざけた行動をするとはね……」
母親も呆れてしまった。
こんな行動……おれでも考えられない。
開始15分前になると、プラズマ3人衆が乗るクルマとヒマワリの姉と妹が乗る車もやって来る。
ちなみに姉のサクラは現在愛車がチューニング中のため出すことができず、妹のモミジと共にアルテッツァに乗ってきた。
プラズマ3人娘が乗る車たちはおれとワンエイティの所へ停車する。
「ヤレを気にせず、戦ってくださいね」
「相手は直線では速いけど、頑張ってね」
「勝ってこいや」
「ありがとう、絶対に負けないよ!」
プラズマ3人娘はおれを激励する。
ヒマワリとの勝負はキツくなりそうだけど、上手く闘ってやるよ。
SW20の前に停車したアルテッツァのドアからサクラとモミジが降り、彼女の元へ向かう。
「いよいよバトルだな――」
「ヒマワリ、大崎翔子と勝負していないのはお前だけだよ。ボクたちは彼女に敗れたからな……仇を取ってね。相手の車はヤレていると聞いたけど――油断はするなよ……」
「分かってるし、ぜってぇに勝つから見守ってくれよ! 大崎翔子を倒して葛西3姉妹は強いということを改めて言わせてやるぜ!」
対戦相手も姉妹から激励を受ける。
相手もおれに勝ちたいという気持ちだね、こっちだって負けたくないよ。
近くにいるクマさんが、ヒマワリと目が合うと突然挑発を始める。
「おいDUSTWAYの葛西ヒマワリ、おらのサキさんはおらたちがやられた分をやり返すからな、サキさんの実力、なめんなよ!」
「おい、クマの熊久保! それはこっちのセリフだぜ、やられた分を取り返すのはオレだからな! 大崎翔子を倒してサクラ姉ちゃんとモミジのリベンジをしてやるぜ!」
ヒマワリも返してきたようだ。
「ヒマワリ、落ち着いて」
「クマさんも!」
喧嘩する2人をモミジとタカさんが止める。
彼女たちが制止したことで、どうやら落ち着いたようだ。
バトル開始まで残り5分になった。
左側のヒマワリ、右側のおれがそれぞれの車に乗り込む。
SW20の前にウメが来て、ウインドウが開くと会話が始まる。
「ヒマワリ」
「なんだ母ちゃん?」
「バトルが始まったら後攻を選んだほうがいいわ、まずは相手の様子を見てから後から抜くのよ」
「分かった、オレはすごく頭が悪いから母ちゃんやモミジの作戦に頼らないとダメなんだよな。相手の様子を見てから、SW20のトラクションで相手を離してやるぜ!」
5分経過し――いよいよバトルの時間だ。
カウントはサクラが行う。
「カウント始めるぞ……10秒前――9、8、7、6……」
数字が進むたびに2台の戦闘機はエンジンサウンドを奏でていく!
「5、4、3、2、1、GO……!」
カウントが終わるとバトルが始まった!
先攻はおれで、ヒマワリは作戦通り後攻だ。
スタート直後、長いロングストレートを2台は駆け抜ける。
そこを抜けるとS字からの左ヘアピンに入る!
「ここはゼロカウンタードリフトからの<コンパクト・メテオ>を使おう」
予告通り、透明のオーラを纏いながら隕石のようなスライドで抜けていく。
ゼロカウンターだったため、通常より速く突っ込むことができた。
これはヤレによりパワー勝負で戦うのが難しいため、コーナーだけでもヒマワリに勝つための走りの一つであり、このスタイルでヒマワリと戦うつもりだ。
「こっちは<サンダー・アタック>だぜ!」
ヒマワリも左ヘアピンに突入していき、黄色いオーラを纏う!
両足でブレーキとアクセルを交互に繰り返すセナ足からのドリフトをしながら攻める!
ただし、おれと違ってカウンターを当てている。
「やはり相手が上か」
そのためかここではおれのほうが速く、差は広がっていく。
だがそれはすぐ縮まり、次は短いが直線でSW20のMR特有のトラクションで差が縮まった。
次は幅の広い右ヘアピン、技は使わなかったけどここもゼロカウンタードリフトを使って抜けていき、ヒマワリのほうはセナ足を使ったグリップ走行で攻める。
「セナ足で食いついてやる!」
次はさっきより長い直線、おれはヒマワリのSW20に接近されながら、ここを駆け抜けた。
後は3連続ヘアピン、今度はゼロカウンタードリフトからの<ズーム·アタック>で攻め、2つ目と3つ目は技を使わずその走りで攻めていく。
「離されるのかよ!」
すぐ後ろのヒマワリは、最初の2つをセナ足からのドリフトで攻めていき、3つ目に突入すると今度は<コンパクト·メテオ3>で立ち上がる。
ギャラリーをしているDUSTWAYのメンバーが現在の状況についてトランシーバーで、頂上にいるサクラに伝えてくる。
「現在ワンエイティがリードしています!」
それを聞くとサクラはトランシーバーを切った。
周りの人たちにこの話を伝える。
それを聞いたプラズマ3人娘は……。
「よっしゃー! サギさんがリードだべ!」
「この調子だよ、サキちゃん!」
とはしゃいでいた。
しかし、今の状況について智と川畑は冷静に見ていた。
「だが勝負は始まったばかりだ、オオサキがいつ不利になるか油断はできない」
「せやな、相手の能力はまだどんなモンか分からんし」
川畑のある言葉を聞いて、熊久保と小鳥遊はヒマワリの能力ってどんなものなのか推測を始めた。
「ヒマワリの能力か――この前くにちゃんと川畑さんがヒマワリと勝負したとき、能力が発動せずHCR32のトルクがいつもより低かったような――」
「おらもヒマワリと勝負したとぎ、能力が発動しねがったから負けたべ」
発動しなかったこの2つの能力は共通点がある。
それはクルマの性能を上げる物だ。
熊久保の話を聞くと、川畑はあることを知った。
「本当に勝負したんけど、負けたんやな」
「やっぱり――負けたんだね」
これには2人を呆れさせた。
現在の状況についてサクラとモミジは語り合う。
「まだ前半だから仕方ないと思うな……」
「後攻を取ったのは母さんの指示だから、もし序盤で先行を取ったらヤバかったと思うよ」
姉妹たちは余裕があるようだ。
あと、モミジがこんなこと話す。
「あと、昨日こんなことをヒマワリと話していたんだ」
この話は少し長くなるものの、バトルの重要なヒントが載ってある。
昨日(5月2日)の夜、ヒマワリの部屋――。
ここにボクは入った。
「ヒマワリ、入るよ」
「いよいよ明日だな、もうワクワクするぜ、イィーネ! モミジ、明日お前とサクラ姉ちゃんの仇を取ってィやるぜ!」
明日のこと興奮するヒマワリに対してボクはある忠告を伝える。
「ヒマワリ、ある事に注意したほうがいいよ」
「なんだ?」
「大崎翔子の能力、それにボクや戸沢は敗れた」
ヒマワリはそれの恐ろしさを知らないだろう。
間近で見たボクには分かる。
けど、彼女は恐ろしさを感じなかった。
「対策はあるぜ?」
「どんな対策なんだ?」
「対策はオレの能力だ、それならあいつのアレを無効にできるぜ!」
ああ、お前の能力なら対抗できるかもな。
「その能力は強力だから対策できそうだな――」
「だろ? もし相手の能力来たら、オレの能力で無効にしてやるよ!」
「――ってことだよ」
「なるほど……ヒマワリの能力ならあいつの能力を無効にできそうだからな……」
「そうかもしれないね――あいつは高校を中退するほどバカだけど、能力は強力だよ」
「黒歴史を言うな……」
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