ビビりからの脱却 -KORNと出会う-
図らずもシリーズ化してきた(笑)。
前回↓
前回までは、自分で袋小路を作って自分で迷子になっていた話だった。
転機は唐突にやってきた。前のバンドを解散すると同時くらいのタイミングで「KORNのカバーバンドやらない?」と誘われた。当時たぶんいろんなことに疲れていて思考力が落ちていたんだと思う。「いいっすよ」即答した。
そして思った。「で、KORNってなに?」KORNを知らなかった。
一応名前くらいは知ってた。モシャモシャした人で(ドレッドのこと)、ハーフパンツで(これは合ってるな)、キャップ斜めにかぶってる(Limp Bizkitと混同している)くらいのことは知っていた。要するに、ろくに知らなかったということだ。
とりあえずいろんな動画を観たり、音源を購入したりした。しかし、さっぱりわからなかった。KORNのベーシストFieldyと自分との間に共通点がまるでなかった。あるとしたら5弦ベースでチューニングが1音下げというくらいか。
ピック弾きで、楽器はストラップ伸ばして下げて引くのが良いと思う世代で、サウンドはギターの影のような立ち位置で、というのがおれが長らくやってきたベーシストのやり方だった。
KORNは指弾きまたはスラップ、ベースは立てて弾く、ベースが前に出てないと成り立たない曲がある。全然違った。
だが、これが良かった。今にして思えば。
小なりとは言え10数年かけてやってきたことがまるで役に立たない、という事態だ。これはつまり、今までのキャリアを捨てろということだった。ある種のショック療法と言える。
「KORNといえばコレ!」という有名曲らしいものを何曲かピックアップして、ぐるぐるループして聴いてみた。…さっぱり意味が分からなかった。もう!どうしろってんだよ!この割れたガラスをブーツで踏んでるような音がベースなのか!?軽くキレた。
ちょうど、長らくやってきたバンドを解散させて、守るべきものがなくなっていたのも幸いした。KORN好きそうな人、KORNを好きだと言っていた人、スラップできる人、ベース立てて弾いてる人、いろんな人に「KORNのベースってどうやんの?」と開き直って聞いてみた。
吉祥寺CRESCENDOのブッキングマネジャーのSさんもKORN好きだったので、「KORNってピック弾きでなんとかりませんかね」と尋ねてみた。すると、「KORNナメんじゃねーよ!」くらいの勢いでキレられた。曰く「KORNはスラップでベースぶっ叩かないと意味ねーだろ」だそうだ。ほえーそうなのかー。この時まだ事態の重大さに気づいていなかった。
とりあえず音を拾ってみた。それくらいはなんとかでき…できなかった(笑)。音が低すぎて拾えないのだ。ローAとローA#のリフなんて何弾いてるかさっぱりわからんかった。仕方なくギターを拾った。
次にスラップ。一応F Bass(カナダのハンドメイドベースメーカー)ユーザーではあるので、アラン・カーロンの動画を参考にしたりして、スラップ奏法に関して知らないわけではなかった。
アラン・カーロンの奏法はスラップとしてはちょっと変わっていて、親指でサム、小指をボディにつけてスタビライザーにして、人差し指、中指、薬指でトリプルプル、というものだ。
が!こんな上品な弾き方がKORNに転用できるわけがない。そもそもベースのネックが向いてる角度が違う(笑)。
特に右手に関しては、本当に何一つ、今までの蓄積が活用できなかった。左手はしかるべきところを押さえるのであまり問題なかったが。
そして、ノリが違った。今まではBPM200オーバーの曲をメカニカルなアンサンブルでやるバンドをやってたが、KORNはBPM100を割るところもある。そしてノリがでかい!1stなんかアルバムの曲がそもそもノリ最優先でクリックに合ってないからクリック入れるとむしろ合わせられない。
KORNのベースは実はスラップや立てて弾くことに慣れてしまえば、テクニカル的な難易度はあまり高くない。これは「バンドで弾いて楽しいベース」なのだ。バンドでやって楽しいというのをちょっと忘れかけていたおれにはこれが結構大きかった。
あと、音色もたくさんあるのでエフェクターを沢山購入した。たかだかコピーバンドの30分のライブやるのに機材だけで8万くらいかかった。何してんのかなと思ったが、必要なのでしかたない…というのもちょっと違うが、なんだかんだ納得して揃えた。
というわけで、KORN知らないマンが3ヶ月でKORNになりきってライブ演奏をする必要があった。KORNのフロントはジョナサン(Vo.)だが、特にライブでのサウンドの核は、あろうことかベースだった。これはマズいかもしれん…。ようやく気付いた。
そんなこんなで七転八倒右往左往しながら本番をこなした。本番終わってみたら、スラップの力加減を間違えて右手でボディを強打して親指は青黒くはれ上がっていた。
正直な話、たかだか3ヶ月KORNに打ち込んだところで、KORNを理解できているわけでもなかったし、思い入れの深さではMaKORNのメンバーの足元にも及ばなかった。当然だ。鼻くそがちょっときれいな鼻くそになったくらいのものだ。
だが、何か開けた気がした。
第一話
第二話
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