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生きた歴史に触れた時、平和の有り難みを知る
アメリカは移民の国、ハワイ州にも多くの人種や文化が共存しています。
更には世界中から、たくさんの観光客が訪れ賑わう場所です。
そんな事、言わずもがな皆さん、ご存知でしょうね。
でも、そんなハワイにいたからこそ知る事ができた貴重な話を是非お聞きください。
当時、私はワイキキのホテルにあるクリニックでナースとして働いていました。
ある日、初老の白人女性がクリニックに来られました。
血圧の薬を服用しているので毎日、血圧をチェックしたいとのこと。
私は彼女を診察室に呼んで血圧を測ろうとした時、彼女の腕に入れ墨が入っているのに気付きました。
普段の私なら見て見ぬふりをしたでしょう。
だけど、その入れ墨は絵でも何かの模様でもない、ただの5ケタの数字でした。
「これは何ですか?」私はとっさに聞いていました。
「ナチ」彼女は微笑みながら言いました。
私が、「え?」って顔をしたのでしょう。
「ホロコースト」彼女は続けて言いました。
それを聞いた瞬間、私の頭の中はナチスのホロコースト?歴史で習ったぞ。アンネの日記?ユダヤ人?毒ガス?とか色々な言葉が飛び交いました。
私の中ではそれらの歴史は、遥か遠い昔の出来事だと思っていたので目の前にいる彼女がその歴史を超えて、今ここにいるのが不思議でした。
よくよく聞くと彼女はアウシュビッツの強制収容所の生存者でした。
そして、その腕の入れ墨はナチスがつけた囚人番号だったんです。
580万人が犠牲になった遠い昔の過ぎ去った話と思っていたものが、生存者を目の前にしてこの歴史は終わっていないんだ、と感じました。
彼女はカナダに移住して、冬の寒い時期に毎年、ハワイに遊びに来ているそうです。
その時の彼女が幸せそうで、本当に良かった。
もうひとつは、別の職場で起きた話です。
気心の知れた韓国人ナースKと、一緒にランチ休憩をしていた時、Kは突然、私に言いました。
「日本人って思ってたよりもいい人なのね!」
私は自分がほめられてるのは解りましたが、どういう意味かKに聞きました。
Kは言いました。韓国で学生の時、学校では反日教育を受けてきたこと。戦争中は日本兵の侵略は言葉では言い表せないくらい酷かったこと。でも、日本人の私はとても親切で学校で習った事と全く違った、と。
反日教育も驚いたけど、それを完全に信じて暮らしてきた彼女にも驚かされました。
そして更に驚いた事が!そばで私達の話を聞いていたフィリピン人ナースも話に加わってきて言いました。
戦争中は彼女の国も、日本兵には酷い目にあった。彼女のおじいさんから常に聞かされていたそうです。
私は日本の外に出て、私の知らない日本を、日本人以外の人種から生で聞かされ戸惑いました。
勿論、彼女達は私のせいでは無いと言いますし、私が負い目を感じる必要もないでしょう。日本にだって戦争に関しての辛い思いは、語り尽くせないほどあります。
そういう歴史があっても、今は敵味方なく一緒に仲良く仕事が出来る。しかも昔の戦争について分け隔てなく、語り合う事ができる時代を生きている。
平和な世の中にただ、ただ感謝です。
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