M

僕が彼女に会ったのは、札幌市西区の地下鉄東西線、琴似駅の地下一階での事だった。
高校一年生当時、時代は西暦1998年。日本国はバブルが弾けたと言われて間もない頃で、東京の経済界のど真ん中におられた人達は、
その経済的な破綻ぶり、まさに泡が飛んでしまった瞬時に金融資産が吹き飛ぶ恐怖に胸を刺されながら蠢いて生きていたのだと思われますが、
その時、高校2年生だった僕たちにはどこ吹く風で。更に、北海道札幌市という日本国の地方都市においては、東京での金融惨事が到達するまでにの時差も
発生します為、さらに更に、僕たちにはてんで無関係なブラウン管の向こう側の海を超えた異国の話に過ぎなくて、
16歳17歳で青春のど真ん中に存在していた僕たちは、その毎日を、かけがえの無い1分1秒を、全力で、今を生きることに全集中して、生きるのみでありまして。

そんな折だった。
僕が彼女に出会ったのは。

正確には、狭いコミュニティでの話でありますので、どこかですれ違ったりとか、一応、存在として、認識はしてはいたのかなとは思います。
共通の知人は沢山いたし。彼女たちのバンドのライブも見た事もあったし。

あ。そうかそうか。そうだな。存在は知っていた。ベースのMちゃん。
当時、浅田美代子という女優が、明石家さんまのテレビ番組に出て、そのとぼけたひょうきんな回答を連発していたものですから、
共すると、その浅田美代子と、同じ名前の女の子なんだなっていう、その程度の認識はしていたのかなとは思います。

M。
僕が、君を題材として、こうして、文章に残すだなんて。
僕はいつか、小説家になると言っていたけれども。今。こんなにも時間が経って。そこでこうして。文章にして。君がヒロインで。僕はヒーローになりたくて。
貴女の事を思い出しながら。

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