
映画週報2/23-3/1『関心領域』『Thunderbolt Fantasy 生死一劍』『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』『ノースマン 導かれし復讐者』『ドミノ』
『関心領域』
原作は昨年読んでた(たいへん面白かった)のだが、本の解説で言及されていた原作と映画の異動について、「それって全然別物なのでは?」と疑問に思ってしまい劇場には行かずじまいだったもの。音の表現に工夫を凝らした作品なので劇場で見たほうがいいだろうというのはわかってたんだが、ともあれ配信に来たので鑑賞。音に工夫が凝らされているのはたしかにその通り(原作だと匂いへの言及が多いんだけど、それを音でやってるってことですね)。
なんだけど、むしろ気になったのは構図が独特なこと。パンがなく、なんていうか遠近法の消失点が画面の中心に来るような画が多い(ポスター画像とかでも使われてる構図)。写真ではわりとよく見るんだが、映画でそれを連続でやるとけっこう不自然。
構図に加えて高精細みたいな画質(いつもと同じモニターで観ているのでハード的な解像度は同じはずなのに)もあり、ハイパーリアリズム絵画のように見える。
すぐ裏(収容所)で起きていることに一切興味を持つことなく優雅な暮らしを続ける人々を描いているからこその画面づくりなんだろうと思いました
『Thunderbolt Fantasy 生死一劍』
TVシリーズの第1シーズン終了後に制作された劇場版スピンオフ。前半と後半で全然違う話で、前半は前日談、後半は後日談になっている。まあTVシリーズのファンなら楽しめるのでは、という感じ。しかし凜雪鴉は酷いな。こりゃ恨まれるわ……。
『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』
ジャズ・ミュージシャンのドキュメンタリー。ジャズは勉強中なのでこの人については名前しか知らなかったのだが、ザ・ルーツだのエリカ・バドゥなんかとも関わりがあったりする現代的なミュージシャンだったようだ。
で、腎臓の病気をおしてツアーしているところに同行して本人からインタビューを取ったり、新旧のライブ映像が入ったり、周辺のいろんな人の証言が入ったりと、まあ音楽ドキュメンタリーとしてはオーソドックスなつくり……と思っていたら途中からマネージャー批判みたいなパートが入る。撮影中に入ってきてロイと怒鳴り合いみたいなことになるところもとらえられている。「ロイにとっては父親みたいな存在だ」ってハービー・ハンコクックが言うんだけど、それ以外の人たちは全員ボロクソに言っている。映画の最後には、字幕でロイの死後、著作権を管理しているマネージャーから楽曲の使用許可が降りなかったため、ロイが作曲した曲は使えなかった旨が明かされるなど、なんかもやっとする感じが残る映画。
ホテルの部屋でスタンダードを吹いてみせるところは良い。その際に「スタンダードをやるなら歌詞を覚えろ」って言ってるあたりは面白いなと思った。
最終的には腎臓の病気を抱えつつ手術も受けずにツアーを続けて結局死んじゃうんだけど、そのあたりについてもマネージャーを批判したい意図があったのかな
『ノースマン 導かれし復讐者』
北欧(アイスランド)を舞台とした叙事詩的復讐譚。
まずは風景が雄大ですごい。
『ウィッチ』に続きアニヤ・テイラー=ジョイがヒロインで好演。ニコール・キッドマンもすごかった。「母は強し」みたいなところに着地してる感もなくはないのでそこは気にはなったけど。
やっぱロバート・エガースはすごいな。『ノスフェラトゥ』がますます楽しみになりました。
『ドミノ』
ロバート・ロドリゲス監督作品。
行方不明になった娘を探す刑事の前に、銀行襲撃事件が起こる。事件を追ううちにスーパー催眠術師(ヒプノティック)の存在がわかり……。MCUの「スカーレット・ウィッチ」とかもそうなんだけど、「そんなの何でもありになっちゃうじゃん」という感じでいまひとつ乗れなかったかな。