もうひとりの私、みはちゃんへ #あなたへの手紙コンテスト
もうひとりの私、みはちゃんへ
私は数年前、たった一年間だけ「みはちゃん」になりました。
あなたは本当の私、Tシャツとデニムにスニーカー、リュックを「えいやっ!」と背負って自転車を立ちこぎして買い物やオトンの家に行き、ガハハと笑うお調子者の母ちゃん「じゅんちゃん」とは違って
綺麗にお化粧し、じゅんちゃんが着たことのない、お人形さんのようなフワッフワのドレスとキラッと小さく輝くアクセサリー、背の高いヒール。
清楚で可愛らしく丁寧にみなさんのお話に耳を傾け、穏やかで素敵な女性。そんな風に私が創って演じていた「みはちゃん」でした。
あの頃の私は、お腹の手術と乳がんの治療を終え、命を長らえた。
けれど、介護の仕事に戻ると後遺症でお腹と右側の腕に力が入らず、倒れそうになったご利用者さまを支えようとして自分が倒れ、壁に後頭部を強打してもう無理だと諦めた。
当時は本当に体力がなく、他の仕事でのフルタイムは厳しくて、家族からも強く反対されたのに何とか自分の力で生きて行きたいと、縁がないと思っていた未知の世界に飛び込み「本当の私のじゅんちゃん」とは別人格の「自分が思い描いていた理想の女性像、みはちゃん」を演じていた。
みはちゃんでいることが苦しくなることも多かったし、じゅんちゃんに戻りきれなくなって困惑することもあり、葛藤したんだ。
どれがが本当の私なの?本当の私って何?
みはちゃんだった時間は、失敗ばかりして辛く苦しかったし、喜んでいただけると嬉しくて。
出会った仕事仲間は、綺羅びやかな世界の中で、様々な事情を抱えながら、工夫して努力を重ねていた。お互いを励まし合い、協力してお仕事していたよね。今でも仲良しで大切なお友達もいる。
多種多様なお客様からいろいろなお話が聞けた。嫌な人もいて私がじゅんちゃんに戻って本気で怒ってしまったことも何度かあるけど。
「あなたは病気を乗り越えた。諦めたりできなくなったことも多いかもしれない。でもまだまだ『あなただからこそできること』があるんだ。人と比べたり今の自分を悲観する必要なんかない。
テーブルに季節のお花を飾ったり、着付けをしたり、指名とか他の女の子のヘルプとか関係なく一生懸命みんなを笑顔にしようとしている。みはちゃんは失敗して泣いても、がんばっているでしょう?
自分を信じて『できること』に目を向け、あなたらしく生きて行きなさい。
見てる人はいるし、わかる人は応援してくれるんだから。」
と励ましてくださるお客様もいたね。
一年後、体調を崩しお仕事を辞めた。「みはちゃんになることはもう二度とないから私の心の中にそっとしまっておこう。」と思ったんだ。
暫くして立ち仕事が出来るくらい体力が戻り、コールセンターや、デパートの販売員として働いた。
コールセンターでは、介護職でのパソコン経験「じゅんちゃんの力」と、短い会話の中で本当の気持ちをくみ取り対応する「みはちゃんの力」が役立った。
デパートでは、丁寧にヘアメイクをし新作の服を着て、凛とした接客ができたのは「みはちゃんの力」
介護職で鍛えた足は立ち仕事に耐え、お客様のニーズや個性に合った商品を提案できたのはファションや洋裁が好きな「じゅんちゃんの力」
みはちゃんになって、できるようになったことや知ったことが沢山ある。それなのに「みはちゃん」は私じゃないと心にしまったままだった。ごめんね。
「じゅんちゃん」も「みはちゃん」も、どちらも私だって。今は胸を張ってそう言える。
また体調が悪くなってしまい、心も弱り生きてる意味がわからず眠れない時にnoteを見ていた。「自分も書いてみたら?」と息子が言った。それから私は「じゅんみは」という名前でnoteの世界で創作をするようになった。
体調が悪い時や、自分が嫌でどうしょうもなく落ち込んだ時、ただ天井を見上げ涙していた私は、noterさん達の素晴らしい作品に出会い、クスッと笑ったり感動する。創作することの楽しさ、私の作品を見て喜んでくださる人達ができたことの嬉しさや幸せを知った。繋がり、新しいことに挑戦する楽しみもみつけ豊かな時間になったよ。
それは「じゅんちゃん」だけではなくて「みはちゃん」もいたからこそできたんだ。
私はもう、みはちゃんの姿になることはないけれど、心の中から私の力となって支えてくれているね。
優しくて穏やかでいつも笑顔の「みはちゃん」思いついたら何でも突っ走り、直ぐ息切れする「じゅんちゃん」どちらも私。
これからも泣いたり笑ったりしながら、小さな幸せと笑顔をみつけていこうね。
みはちゃんありがとう!
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このお手紙は、水野うたさんの企画 #あなたへの手紙コンテスト
参加作品として書きました。水野うたさん、素敵な企画を作ってくださりありがとうございます。勇気を出して参加してみました。
何人かのnoterさんの参加作品を拝見し、心に沁みて、私もお手紙を書きました。
私が今、思いを伝えたい人は
「じゅんみは」である私の、心の中にいるもうひとりの私「みはちゃん」です。感謝の気持ちを「言葉のプレゼント」として手紙を書きました。
このお手紙のnoteを最後まで読んでくださったみなさま、ありがとうございます。
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じゅんちゃんとみはちゃんの絵を描きました。