俺と格安スマホの500DAYS
2018年春、俺は格安スマホに乗り換えた。
その顛末をここに記そうと思う。格安スマホを検討している人は参考にして欲しい。
悪夢のような電話地獄
現代人にとって、仕事の大半は電話だ。ひっきりなしにかかってくるし、ひっきりなしにかけている。正直うんざりする電話ばかりだが(あいにくそれは向こうも同じだろう)、世の中は言質の奪い合い、不毛なビジネス界を生き抜くために電話地獄からは抜けられそうもなかった。
俺は常にかけ放題プランを選択していたが、利用料金はバカにならない。
「携帯代が安ければ、焼き鳥をもう一本食べられるのに・・・」
居酒屋で涙をのむ世知辛い日々は続いた。
乗り換え~希望へのエクソダス~
2018年春。その時点で既に話題になっていた格安スマホの検討を始める。シュミレーションによると月に7000円近く安くなるではないか。
これなら焼き鳥が何本だって食える(なんならモツ煮込みだって)。
格安スマホのリスク
リスクがない。血眼になって調べたが、ない。ただただ安い。なぜみんな格安スマホにしないのか?それはみんなが情報弱者だからだ。
知識は水だ。ただし多くの水は地下を流れる伏流水であることも、また事実だ。その水脈を知るものだけが利益を得る。所詮この世は弱肉強食なのだよ。
俺は格安スマホを申し込んだ。
格安スマホとの邂逅
格安スマホを購入した俺。料金プランは
『10分かけ放題』
『データ5GB』
俺はスマホで動画は観ない。スマホゲームもやらない。5GBでも余るぐらいだ。
そして通話プランは、『かけ放題10分』にした(そもそも無制限はなく、選択肢は一つしかなかったのだが)。
実はこれこそが電話地獄から抜け出す「蜘蛛の糸」だったのだ。
このプランを最大限に活かす意味もあり、「電話は10分以内で切る」というルールを新たに作った。長々と電話することで貴重な時間を奪われる機会も減るはずだった…。
初めての電話料金
格安スマホを一か月利用し、請求の日になった。俺はこの日を心待ちにしていた。
利益率を上げるためには、固定費を下げるのが一番の近道なんだよ?ポイントは固定費だよ?みんなそんなことも知らないでビジネスをやってるの?
だが俺はページを見て目を疑った。そこには14000円と書かれていた。
「いつもより高いじゃないか・・・」
俺は注文していた焼き鳥とモツ煮込みをキャンセルし、震える手でハイボールを飲んだ。
・・・そうだ、そうなのだ。導入資金だ。最初は雑多な導入費用がどんなものにだってかかるじゃないか!アッハッハ!ああおかしい!
10分かけ放題の罠
格安スマホにして一か月。何度か電話をかけた。俺はスマホアプリを入れて、9分経つとアラームが鳴るようにセットした。ちなみに10分を超えると高額な通信費が即かかってしまう。ほとんどの電話は三分もかからずに終わった。
だが中には重要な電話も多く、特にコンサルタントとの打ち合わせは長引くのが常だった。
9分のアラームがなる。俺は電話切った。そしてすぐにかけ直す。
「すみません、先生。トンネルに入っていました。」
最初の内はよかった。
「すみません、先生。森にいました」
「すみません、先生。深海にいました」
「すみません、先生。気がついたら成層圏を突破してました」
言い訳を繰り返す日々。長時間電話する相手は、大抵が目上の先生たちだった。俺は申し訳なさで一杯だった。
ギガの逆襲
時を同じくして、昨今の俺は講演会に呼ばれるようになっていた。
主にITと労務管理について話すわけだが、その度にパソコンで実際の画面を見せなければならない。ネット環境が必須だ。僻地での開催の場合、wi-fi 環境がない。
結果、運営の方々に テザリングをお願いする。 人のwi-fi を横取りする。 これはとんでもない屈辱だった。
IT経営者を語る男が、テザリングも出来ないのである。
小学生時代、俺の家はひどく貧乏だった。消しゴムさえ買えない俺は、周りのみんなに、何度も借りていたことを思い出していた。あの時も、今も、みんなが俺を嘲笑っている気がした。
真実
砂を噛むような味気ない日々は過ぎ、季節は秋になっていた。
俺はふとクレジットカードの明細を眺めていると、あることに気づく。おかしい・・・スマホの代金が15000円を超えている。夏の暑さでぼおっとして、格安スマホのことなどすっかり忘れていた。
調べると既に4か月もの間平均して15000円近く請求されているではないか。
俺は携帯会社に電話した。テレアポの相手は愛想よく答えた。
「あー、お客様、無料通話アプリ起動してませんね」
10分かけ放題にするためには、アプリを起動しなければならない。それを知らない俺は通常料金で話しまくっていた。タダだと思って。
俺は家電類の説明書は一切見ない。それで今までなんなくこなしてきた。
俺はおっちょこちょいだ。早とちりさんだ。
よく考えたら消しゴムも買ってもらえなかったんじゃない。ただ筆箱を家に忘れただけだった。
利息を返す日々
既に数万円失ってしまった。本来のキャリアの費用を優に超えて、このマイナスを取り戻すためには3年以上格安スマホを使い続けなければならないほど、俺は得るべき利益を失っていた。
消費者金融でこさえた借金の利息だけを返すような不毛な日々が、そこから始まった。
無料通話アプリという悪辣な存在
それから基本的には無料で通話は出来た。しかし、しばしば無料通話が解除されることがあった。
ひとつにandroidのアップデート。メジャーアップデートされると、それまでバックグラウンドで動いていたアプリが強制終了される。それに気がつかずに2ヶ月後、高額請求を受けて俺は気づく。だが既にアフターフェスティバルだった。
更にはスマホ故障。海外出張。様々なタイミングで無料通話アプリは解除され、その度に高額の請求がきた。ここでようやく悟った。
格安スマホはおそろしい・・・
docomoに出戻り
結果的に、2020年、俺はdocomoに出戻った。スマホの代金は昔よりずっと安くなっていた。データは30GB使い放題だった。何万時間、何億年話し続けようが、通話は無料だった。
俺はふととあるネット記事に注目した。格安スマホの消費者センターに対する相談が増えていると。
結論:格安スマホにきをつけて
知り合いに格安スマホを使いこなしている人も大勢いる。
中には常に自動で通話無料になる会社もあるのかな?でももうそんなことを調べる気力はない。
電話をたくさんするタイプの人は時に気を付けた方がいいかもね。電話しないんだったらいいんじゃない?
でももう正直格安スマホなんてもうどうだっていい。顔も見たくない。これは風説の流布ではない。れっきとしたイチケースだ。
俺を愚か者だと笑う人もいるかもしれない。その通りだ。ミイラ取りがミイラになった。俺こそ真の情報弱者だ。だけど、だけどせめて笑ってはくれないだろうか。
以上です。
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