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TEDxTokyo yz 2016 〜テクノロジーとアートの医療現場との調和〜

みなさんは自分が最期のときを過ごす瞬間について、
死を迎えることについて考えたことはありますか?
人は老いていき、少しずつ死に向かっていきます。

死を迎えるとき、
どのような空間にいて 、
あなたは誰と過ごし、
どのような話をして、
どのような音を聞き、
どのようなものを見て、
どのような時間をすごしているでしょうか?

現在、日本では、80%の人は、病院で亡くなります。
つまり、5人のうち4人は病院で最期をむかえることになります。

(Photo by MIKI Yoshihito - Sapporo General Hospital(2013)/CC BY 2.0)


これは、一般的な病棟の姿です。

想像してみてください。

あなたはこのベッドで寝ています。 年齢は70歳くらい。
大病を患い、できることが少しずつ減ってきて、
動くと息が少し苦しく、痛みもあります。
ご飯もあまり食べられない。
腕もあがらないし、身体を起こすのもしんどい。
寝ている時間が多くなります。

きっと周りをとりかこんでいるのは、
いつついたのかわからないシミのある白い壁と天井。
今まで過ごしてきた人生の最期に一番見ている時間が長いのが、
白塗りの天井や壁代り映えのない景色をみて過ごすのは、
なんかちょっともったいない。

そう思いませんか?

僕はこのまま最期をむかえるのはちょっと寂しい。そう思います。

では、こんな状況だとどうでしょう?


60代半ばのお母さん。それに寄り添う娘さんの写真です。
病を患い、最期の時が少しずつ近づいております。
倦怠感や、痛み、息苦しさがあったり、
食べ物も少しずつ喉を通らなくなっているのでしょうか。
横に寄り添うのは娘さん、ちょうど僕と同じくらいの年齢です。

身体を起こすことが難しく、
見ている時間が一番長くなっていく空白の天井に、
色とりどりの子供のころの思い出の数々を一緒に見上げています。
この時間は二人にとってどのような時間になったでしょうか?

プロジェクターが病室にあるのは、珍しいかもしれません。
しかし、嫌な顔もせず、嫌な顔せずに導入をさせてくださいました。


病院は病を治すだけの修理工場でしょうか?

そうではないですよね。

これからの医療の現場はどのようになっていくべきでしょうか?

現在に至るまで、治療技術はどんどん向上してきています。
今まで治らなかった病気が治ったり、
痛みのコントロールや、長生きだってできるようになってきました。

それに伴い、
病気について、
治すもの治らないものというとらえ方になっていくことが
一般的になっているような気がします。

しかし、病気に対する本質は向き合うということが
とても大切なのではないでしょうか。
人は、必ず向き合わなければいけないときがやってきます。
そして、多くの人々が今も向き合っています。

この場所にいる100%近くの人がいつか病院にお世話になります。
だけど、病気にかかるまでは他人事。
気づいた時には急に自分事となる。
医療の現場は遠く離れた場所。

それで良いのでしょうか?

僕は、もう少し医療の現場は身近であるべきだと思います。

病院は治療という意味ではアップデートが繰り返されています、
しかし、病院という場所、あり方について考えることという意味での
アップデートが忘れられている場所だといえると思います。


身近にとはいったものの、医療現場とその他の領域・社会では、
現在は、お互いに大きな壁があります。

そして、これを乗り越えていくことための鍵が、

「アート」と「テクノロジー」
だと僕は考え、日々活動してています。

テクノロジーは、医療を革新的に、
アートは、その特性が持つ余剰が、
医療とテクノロジーと異なるものを調和させます。

これは、目線のセンサーで色を選び、
選んだ色がプロジェクターから出力され、
部屋の色が変わる簡単な仕組みのものです。

実施してくださったのは、筋ジストロフィーという疾患を持っている方。
徐々に筋力が衰えていって、
自分の力でできることが減っていくことに向き合うことになります。
これを経験をした後、「ゲームをしたい」という
今まで聞かれなかった自分の想いを話してくれました。
今まであきらめていたことへの光を見出しました。

看護師さんからは、同じような病気の方で、
俳句が好きな人がいて、最期まで書かせてあげたかったけど、
書けなくなっていった。
そういう本人を見ているのが苦しく、自身も辛かった。
もう少し俳句をかかせてあげることはできたんじゃないかなと。

さらには、その後、病棟のスタッフのみなさんが協力して、
自主的にプロジェクトも進めて下さっております。
七夕の時期に星空のデジタルアートを投影したときには、
リハビリの時にこわばっていた筋肉が、その時ばかりは緩んだとのこと。

今後、テクノロジーはもっともっと発展していきます。
身体的なハンディキャップを抱えている人も、
コミュニケーションが円滑に行えるようになり、
できなかったことができるようになるということが
当たり前になっていきます。
目線で、テレビをつけたり、自分の意思をつたえることができたり、
そんなことも当たり前になるかも。

病院だから踊れるという子もでてくるかもしれません。
この子は、使い慣れたWIIのコントローラーでダンサーの影を操っています。


このように表現ができること、
コミュニケーションが容易になっていくことで、
なかなか外にでれない人も外に出る。
そのひとたちが新たな世界をつくっていく。

医療現場が開けていくことで、医療現場と社会が身近になり、
両者が同じ方向を向き、いろいろな方が、
ちょっとした問題の解決にとりくんでいく。

アート、テクノロジーは医療の現場と調和していきます。

垣根をこえて協力することで

あたたかな世界をつくっていくことができます。


病に伏している間は、
いつもの家での生活と比べてつらい思いをすることが多いです。
そして、人は必ず老いる、できなくなることも増え、 死を迎えていきます。自分の死だけでなく、身近な方の死を経験することもあるでしょう。

その中で、僕らは何を考えていけばよいのでしょうか。

病気や障害を持っている方々と向き合い、
死を迎えようとしている人と正面から向き合うこと。
自分事と思って考えていくことが大事ではないでしょうか。

この写真を見て、

みなさんは、自分がその立場だったらあったらいいなと思うこと。
家族としてできたらいいなと思うことはありますでしょうか。
そのとき、みなさんが切にあってほしいと願うことは、
きっと同じようにそう願う人がいて、
医療の現場を変えていくアイディアの一つだと思います。

その小さなアイディア一つ一つが、
すべての生きている人、
死を迎える人にとって、
人生を豊かにしていくものとなる。

そう、確信しています。

これからの医療のありかたをつくっていくのは、僕たちです。

そこで見られた笑顔が、世界を明るくしていくことでしょう。

ありがとうございました。

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Junki Yoshioka
テック系看護師 / Digital Hospital Art / vvvvJapan Community
http://www.digitalhospitalart.com/
Twitter : Junky_Inc

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吉岡 純希
病院にデジタルアートを届けたり、3Dプリンタを使ってケアの現場を支える実践や研究をしています。 Digital Hospital Art / FAB Nurse/ vvvv Japan Community