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【daichi】ツバメ

「ツバメ」の話をしたい。

そう、渡り鳥の一種で、寒くなると越冬のために南の国に行ってしまう、あいつ。古くはツバクロと呼ばれたらしい。巣が高級食材だとたまに聞くが、あれって本当に実物を食べているのか、それともそれを模したものを食べているのか、前者ならなんか嫌だ。そういえば寒くなってきたから最近は見なくなったな。

鳥類は足がアイデンティティ


違う。
いや、違わないんだけど、今回はリアルツバメではなくて、曲。いまや世界レベルの人気を誇るYOASOBIの13作目の楽曲で、詳細は知らないが、米津の「パプリカ」の後釜的なラインだと認識している。5名くらいの幼稚園~小学生が楽曲に合わせて楽しそうに踊る。

YOASOBIのayaseって最初から黒幕感あった

こう表現すると、何だか私がそれに対して若干ネガティブな、やや冷やかな視線を浴びせているようにも伝わりそうでもう少しエクスキューズしておきたいが、見た人の大多数が多幸感を味わうことができると思う。見ている側まで楽しくさせる力がダンスにはあるみたいだなと、ダンス経験者である妻と暮らしてからダンス関連の動画や番組を観ることが増えた私は感じている。この曲も例外ではなく、観ていて楽しい。
振付がやや歌詞と直接的に接続し過ぎな感はあるが、これも個人レベルの好みの問題である。

その振付が、まさか自分の身に降りかかってこようとは、先週までの私は想像していなかった。

平日は帰宅したら日中の娘の様子を妻から教えてもらうのだが、先週は何とも気になることを言われた。
妻「”ツバメ”を聴かせると楽しそうに踊る」
私「ありがとう」
若干、会話が噛み合っていないのは承知している。が、「ありがとう」なのだ。帰宅するために出勤している(この表現は高校の同級生で野球部でも一緒だったKK君の名言だと記憶している。高校時代、「おれは帰るために来ている」という一文が耳に入った時、「分かりづらい言い回しだな」と一瞬思ったけど、よくよく考えると真理だと気づいた。以来、私も使用している。)私としては帰ってからの時間が1日の大サビだ。そこでいかに娘から笑ってもらえるかで睡眠の質が変わる。ヤクルト1000もびっくりする効果がある。

早速テレビにYouTubeを飛ばすと、カラフルな衣装の子どもたちが画面の中でツバメが羽ばたく様子から考案されたであろう振付を楽しそうに動き回っているのに呼応して、娘が膝でリズムを取り始めた。まだ捕まるものがないと歩けないにも拘わらず、一丁前におしりを左右に揺らして両親に笑顔を振り撒き始めた。
「これは、、、可愛さが爆発している!」
最近、意思表明の強度が増してきて手を焼く場面もあるが、こういう場面があるから子育てというものはいいなとつくづく思う。

そして、私の中に1つの案が浮かんだ。
「一緒に踊りたい」
危険な考えは承知の上だ。アメトーークで踊れない芸人を観て世間が笑っている時(この構造自体はそろそろ時代遅れ感があるが、そのことはそのうち考えてみたい。)、私も面白がってはいるが、心底笑えているかと自問すれば、答えはNO。なぜなら、おそらく私も彼らと同じ水準のダンス能力だろうから。表面上は余裕を醸し出して笑っていながら、実は腹の中では泣いていたのだ。自分は世間的には嘲笑の対象なのだと。
妻は先述のとおりダンス経験者で、その気になればサクッと覚えてしまうかもしれない。きっと娘の目には母親が踊っている姿は新鮮に映り、そして喜ぶだろう。
ずるい。出し抜かれてたまるか。私だって娘の笑顔の理由になりたいのだ。

昨日。初練習を敢行した。生憎練習用の部屋を設けるほど広いアパートではないため、やむを得ず妻と娘が見つめる中、解説動画をテレビに映し、難しいところは何度か繰り返して振りを覚えた。イントロとAメロまでは何となく頭に入った気がする、といったところで昨日はやめた。
踊りなれない私にとって最大の敵は羞恥心だ。妻の視線に耐えるのはなかなかに大変。家の中に「踊れない芸人」ならぬ「踊れない一般男性」が存在していたのだ、妻だって複雑な心情だろう。申し訳なく思う。
救いは娘が珍しそうにしながらも一緒に踊ってくれたこと。君は天使か。1歳にして弱者に寄り添おうとするその心持ち、慈愛の心に満ちている。将来が楽しみだ。

今朝。日課、と言っても寒さで起きれず1週間サボっていたのだが、早朝3時に起きて走った。2時間近く走ったのだが、ずっと頭には昨日の「ツバメダンス」のことが様々な角度から浮かんでは消え、また浮かんで、を繰り返した。
「昨日の振り、忘れていないといいな」「『パプリカ』の方が簡単そうだったけど、何故か(娘の)反応悪いんだよな」「でも米津って天才だな」「いや、YOASOBIも天才か」「踊れないのって、当事者より周囲の人の方が恥ずかしそうだな」「んじゃおれ実質公害じゃん」「そういえばカタギリってダンスできるんじゃないっけ」「ジャニーズファンって今どういう状態なんだろう」「あ、ジャニーズじゃないか」「ツバメって聞いて、燕岳が最初に連想されちゃう辺り、だいぶ山に毒されてるな」「来年はもうちょい山行けたらいいな」「でも山行ってる間に(娘が)新しいこと覚えたりしてたら切ないな」「てか、旅行いきてー」
これでも思い出せる中のほんの一部である。こんな事考えてるからタイムが伸びないんだな。

初めて登ったのは何年前だろう


今日も仕事から帰ってきて練習した。いや、レッスンした。昨日から進捗はなく、まだAメロまでしか習得していない。娘は解説動画より通常バージョンの動画が好きなようで、若干の退屈さを感じさせながらも、それでも時より笑顔で私を見つめながら膝で8カウントをとってくれた。

待っていろ娘よ、今に見事なツバメを見せてやるぜ。南国バカンス返上で頑張ろう。


娘の興味が他に移らないことを祈る


daichi

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