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「リアル」を知って「想像力」を働かすと相手に届く

ダンナがコロナで料理を始めた。

もともとは料理なんてしない。家のことが大変すぎて、少しでもダンナを戦力にしようと過去もダンナに料理を覚えてもらうよう画策したが、全く効果なかった。家事も率先して動きはしないし、言えばやってくれることだけでいいといつしか割り切って考えないようにしてやってきた。

ところが、である。
この3年ほどのリモートワークは、我が家に大きな変化をもたらした。
馴染みの料理屋さんにとある料理のレシピを教わってきてから、それを作ると言い出し、出来上がりに納得するで何度も作り続けたことをきっかけに、ダンナはついに料理に目覚めた。飲みにもいかず家にいるので、すっかり料理にハマっていったのだ。

わたしが延々と続くオンライン会議でご飯を作る時間もないときに、オレが作ると夕食を作ってくれるようになり、わたしが転職してからは、出張のときに娘のお弁当を作ってくれるまでになった。

夢なんじゃないか、ってぐらいの変化。

もう一つ、仕事と飲みでほとんど家にいなかったダンナは、ずっと家にいることで、子供たちと私の様子をみるようになった。何が起きたかというと、家がどんなふうに回っているのか、「家事」という名前のつく仕事以外でもその細かい日々に動いていることがどれだけあるのか、前よりも見えるようになったらしい。

先週末、ダンナが料理を作っているときに「ずっとお前はこれをやってきたんだな」と言ってくれた。今はまだましだけど、子供たちが小さいときは本当に大変だったんだよ、仕事も家事もやりながら子供たちみてて、とつぶやいたら、「うん、ちょっとだけだけど、すごく大変だっただろうと分かるよ。ごめん」と。

やばい、泣きそう。

なんか、初めて分かってくれた気がした。その言葉が本当だと感じられた。
諦めていたのに、何かがスッと軽くなった。

ちょっとでもリアルがあるから、想像ができる

本当に分かってもらえた気がしたのは、ダンナが少しでもリアルを知った上で言ってくれたから。

手がかりとなるリアルがあると、一定の方向でそこから想像することはできる。
見たことも感じたこともないものは、想像しようにも限界がある。

わたしは、長いことマーケティングの世界にいたけど、実はわたしが持っている「環境や経験」は仕事においては良いことだらけで、すごく得だと感じてきた。

母としてのリアル、主婦としてのリアル、小さい子たちのリアル、中高生の子たちのリアル、公立の学校のママ友のリアル、教育現場のリアル、田舎暮らしのリアル、都会のリアル、老いた父や母のリアル、働くリアル、働きながら子育てしたリアル、社内政治のリアル、職場の同僚のリアル・・・・・

もっともっとありそうだけど、とにかく、ド田舎から出てきて都会のわりと一流企業で子供を育てながら働き、子供は公立の学校で、会社でもそこそこいろんな経験をしたことで、私が持っている「リアル」の手がかりは、トランプで言えば、カードとしては幅広く揃ってる状態なんだと思う。

だから自然と「カスタマーインサイト」といわれるものには強くなる。
ユーザーやカスタマーのことを語るとき、頭のなかに、そのセグメントに近い「ある人」たちが浮かび、それを手がかりにその人たちの思考や行動を展開していくことができる。その人が頭のなかで動き出すぐらいに。

職業病で、色々な人と会っていても、スーパーで買いものしている地元のおばさま達を見ていても、知らず知らず「観察」モードになっている自分がいるし、商品やサービスの作り手の気持ちと行ったり来たりして考えることも癖になっているところもある。

データでみることも勿論やるのだけど、データはそのインサイトを肉付けしたり検証するために使うことが多かった。

商売はお客さまの立場から想像することが基本

お客さまの目線に立ってみる。いわばこれがマーケティングの基本のキ。
もっと言えば、商売の基本中の基本。
でもこれが、色々な中小企業の方とお会いしていても、なかなか難しそうなのである。

お客さまを知っていると「思い込んでいる」のだ。
そこには確かにお客さまの接点だけでの「リアル」はあるけれど、見えてないところへの「想像力」がない。想像力を膨らませるために、もっと見えてないところのリアルを知ろうということもない。
断片の「リアル」を持っていても、「想像力」がないと何も生きない。

これはBtoCだけでなくBtoBでもおなじ。

リアルを知っているうえでの想像力。
リアルも逞しくし、創造力も逞しくする。
その想像力をもってコミュニケーションすることが、相手のこころを動かすのには一番じゃないかな。

ダンナがそんな想像力を働かせてくれたことに、感謝。
家庭の平和にも、感謝。

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