ビフォーアフターではない。その人の真の可能性を表現する仕事。メディアで散々、ファッション解説・変身番組をやってきた私が思う、真実とパーソナルスタイリストのこれから。
パーソナルスタイリングの、本髄。
改めて、日本になかった職業を作ったわけ。
パーソナルスタイリング会社ファッションレスキューは2001年創始。
2006年、法人化。累計2万人を越えるお客様、生徒さんたちに
スタイリング指南を行ってきた。
一番多いときで10名程度のスタイリスト達が在籍。スタイリングサービス(カウンセリング、アテンド、ワードローブチェックなど)や、スクール運営に明け暮れる日々、今年で21年目。
パーソナルスタイリストという職業名も、2001年、日本で初めて産まれたものだ。なぜ、「パーソナル」スタイリングが必要か?と考え、事業をスタートさせたのかにはさまざまな理由がある。
一つは、2001年当初、この国にスタイリストは存在しても、一般の方々に服装の指南が出来るプロは皆無だったということ。
当初スタイリストといえば モデルやタレントに衣装を着せるのがメインで
CMや雑誌、ファッションショー等を仕切る有名なスタイリストは何人も存在した。
しかし、政治家をはじめ、名だたる企業の社長でさえも、服は自分で調達しているという現実。
一般の人がプロにお金を払ってスタイリングサービスを受けるなどという
発想自体がゼロだった。そう、職業も、職業名も「なかった」わけだから。
ヤバすぎる服装に、誰からも ちょっとまった!がない。
テレビに映る、企業社長の記者会見を見ていると、「やばいですよ、その服装!」とびっくり仰天することしばしば。例えば 謝罪会見なのにおめでたいネクタイで登場したり、クールビズが始まったころから、装飾で塗れたシャツで平然と会見してしまうビジネスマンが続出したり。
女性は妙に「かわいい」を引きずり、キャリアとは言い難い幼稚なスタイルが目立つ。
女性アナウンサーはシビアな報道をしながら まさかのミニスカートに
ふりふりのブラウス。震災で人が亡くなってしまうような報道を、なぜカジュアルな軽い装いで伝えてしまうキャスターがいるのか?
お天気姉さんならいい、というわけでもないのだが、とにかく全体的に知的さを著しく欠いているし、見る人、聞く人、報道されている人たちへの
配慮の欠落。
組閣時のひな壇整列の際、ボタンダウンシャツの大臣。借り物なのか、引きずる丈の長さのままのパンツ。女性の大臣は、選ばれる予測が毎度ないのか
とりあえず百貨店で買ってきたけど似合っていない着られ感。
(このたびの野田さんは、悪くないです)
普段は赤黄緑紫・・・ ゴレンジャーか?!だし。
そんな服装でなぜ、国の代表と言えるのだろう、と。
そんな私を動かした出来事。
あるとき、天皇陛下が主催される園遊会に招かれたが、一体何を着て行けばいいのかわからない人達がいるが 政近さんに対応してもらえないか?
という相談が持ち掛けられた。
送られてきた一枚のドレスコード説明らしきコピー用紙を握り締め
弊社サロンにいらした方はこう言った。
名前がある雑誌スタイリストに問い合わせてみたが
信用するに値しない答えが返ってきたという。
そのスタイリストが悪いとは言い切れない。
TPOは知っていても、スタイリストが仕事として担ってきたのは【センスの表現】が優先順位の一番上にあったと思う。またテレビであり、雑誌でありスポンサーがあって成り立つ仕組みであり、大元の意向にある程度沿うことが求められる。
【感性】を売りに仕事をしているスタイリストに 園遊会などのケースの【知識と経験】があるか否かなど定かでもないまま 問い合わせるのも無謀な話(当時は)だったと思う。
雑誌から服が売れる、タレントが着たら話題になる、そうした使命も背負って服をチョイスする仕事を担うスタイリスト達。
そこに 着ている人にとっての「ふさわしい」は存在しない。
園遊会に着ていく服? えーと 私は貴女のために服をリースすることもできないし、園遊会って何ですか?遊びに行くイベントに何を着ていってもいいと思うし、そいういう問い合わせは受けてないです。
といわれたそうだ。
私はどちらの肩も持たなかったが 考えたのは、これ、プロが必要だなということのみ。文句あるなら、やる、が私の考え。
パーソナルなアドバイスができるプロがいないと、まずい。
上記を読んでも、新しい職業を生み出した人、という解釈をよくされますが
必要に迫られて、ということがよくおわかりになると思う。
当時 イメージコンサルタント、も存在したが
それを受けた人が言うには 似合う色はわかった、イメージを作るのに説明されたのは アメリカの大統領の話。赤いネクタイの意味など勉強にはなったが自分には関係ないという。
色は参考になったので、その色の服を探しにいこうと思ったんだが
すべてを解決してもらえる気がしなかったそうだ。
もちろん 現代では メディアスタイリストやイメージコンサルタントも
パーソナルスタイリストを兼任し、具体的にショッピングアテンドにまで行くようにもなっているが、当初はそんなもんだった。
パーソナルスタイリストを創った理由その、2.
外見の似合うを超えていく必要性。
自分自身、子供を出産する時期に、不治の病(当時治療法がないといわれた難病・現在はカンカイ)で薬の副作用から全身の皮膚がただれ、目を覆いたくなるような姿になった経験がある。
出産もドクターストップがかかる状態で(奇跡的に子供二人無事成人しましたが)人生も、服を着ることも嫌になった自分が救われたのは、結局はファッションだったという事実がある。
人々はファッションがあれば超えられる、救われるのではないかと悟り、付けた会社名が【ファッションレスキュー】。
それまでは、正直、服の深さなど わかってもいない人間だったと思う。
わかろうとはしても、所詮それは ファッションデザイナーとしての
(元、アパレルデザイナーでした)腕を挙げるためのもの。
バブル経験者であり、全身ブランド服に身を包み、夜な夜な遊んできた
人間だ。もちろん24時間戦えますか?⇒ はい! ということで同時に
アホほど仕事もした。仕事も遊びも精一杯。
その日々を支える服は ある意味ブランドに頼るようなものでもあり
また、自作する作品には、とことん拘ってもいた。
それが自己表現だと思って疑わない、表層的な人間だったとおもう。
パーソナルにたどり着くには、こうした【負】の経験なくしては在り得なかった。バブル時代の負の遺産の話(デザイナー時代)は今回は割愛するけど
そう、私にとって、難病にならなければ、人の気持ちも、あるいはファッションの奥深さも心と体で感じられる人間には、決してなれなかったと思う。
全身がケロイドのようになったとき、私はもう終わったと思った。
なぜ自分がこんな目に?と日々涙しては何かにあたり、悲劇の主人公になっていたわけ。この話は、少しだけNHK きわめびとに出演の際公の場でも話をしています。
そこで話をするつもりはなかったのだが、なかなか心を開いてくれないTさんから
「政近さんのように、外見に恵まれた(そうか?)表舞台で活躍しているような人に、私の気持ちなんかわからないでしょ」
と言われ、これはもう自分も裸にならなきゃだめだ、と難病の話を、、テレビのVが回っていることなど忘れて本音で彼女に伝えたのだった。
私は、それまでどうしようもない人間だった。ファッションで粋がっているようなところもあった。しかし病気で塞ぎ込み、ファッションなんかとなった自分が、それをさらけ出すことで見えたことがあった。
ケロイドで人には見せたくはない顔に少し化粧をし、えぐれた皮膚をかくさない服で電車に乗ったとき、勝手にいじけていたのは自分だということに気がつく。そんなような話。
これをきっかけに ファッションレスキューでは電話が鳴り止まず、大げさではなく半年先くらいまで、どんどんファッションカウンセリングの予約が埋まっていった。
助けて!きわめびと。でも高視聴率を頂いて、再度出演のオファーも。
パーソナルスタイリングのこれから
世の中は、表面的な似合うを求めてはいない。
ある一つの結論。
私自身も、起業当初はとりあえず
似合う色 似合う形 似合うデザイン 似合う素材など、表面的な
その人の身体の特徴に合わせて説明するといった、ありきたりなサービスを
やってみるところから始まった。
ただ 画期的だったのは たぶん日本で始めてファッションで
『カウンセリング』というサービスを行ったことだ。
話をするだけで数万円がかかり、診断となると別途料金が加算される。
日本にどこにもなかったその方法に困惑、クレームを言ってくるお客さんも
いたが 同時に多くの感動の声が寄せられた。
なぜ心が動くのか?
まさかファッションで、そんなに自分の『中身』について聞いてもらえるとは思ってもいなかった。そして、伝えたことが服に反映されるなんて
びっくりしたという。
その手法の軸は、その人の良いところ、長所、秀でているところをスタイリングに生かすこと、それが滲み出ることを理想と考え、スタイリングを構築しようと考えたことだ。それはたくさんの人に感謝もされた。
しかしある時期に、それではパーソナルといえるのか?という疑問がわくようになる。
例えば 外見における長所を問うなら、モデルさんが着れば格好いいのは当たり前ということになってしまう。恵まれた身体(長所)に服を着せれば着映えすることは当然のこと。
また、ある人の内面の長所は 明るい コミュニケーションに長けている まじめである、と分析できたとする。そんな特徴は、すばらしいのだが、あるとき多くの人が、長所は被りまくることに気づき、それぞれのパーソナルを感じないという気づきがあった。
ダーク、シャドーも、スタイリングに反映させていく。
私のパーソナルスタイリングには 診断ツールもあるし、分析方法も確立はさせている。
しかし最も重要視しているのは、その人の『中身』であり
どう生きるのか?をファッションを通じてより豊かに、より充実した
表現で体現化すること、であって 表層的な似合うは あくまでも
結果的に『似合って見える』だけのものだ。
そこに その人の『在り方』なくして 真のパーソナルスタイリングの
パワーは発揮することはできない。
表面的な似合うやコーデのうまさ、センスはあっても、結局ペラペラな
自己満足な仮面を装っていることを本人はうっすら気がついているはずだ。
それで真の自己肯定感があがることは、ない。
逆にそれを保とうと必死になり、マインドが壊れていくSNS上のインスタグラマーを何人もカウンセリングしてきた。
そして、きわめびとの主人公となった新潟のTさんもまた、様々な負の経験、ダーク、シャドーな部分を全部伝えてくださり(テレビではここは放送されていません、なぜ彼女がアロハシャツばかりをもっていたかなどは、壮絶な幼少期からの家庭事情にありました、今もアーカイブで見れるならご覧になって見てくださいね)
私は心から,Tさんと繋がることができたうえに、曇りなく、持続可能な服装に仕上げることが可能になった。
なので 劇的ビフォーアフターにすることは簡単だったけど
この放送では、メイクアップもうっすら、普段どおり、その延長の服装だけど マインドが変わったということが伝わる放送になった。
マインドが服を着る時代に。
例えば、弊社スクールで学ぶSさん(現在は学びを少し休憩中)の事例で考えてみよう。
いや 考えなくても一目瞭然じゃないですか?
一番左 学ぶ前
真ん中 学び中
そう、同じ服装なんですよ。まったく同じアイテムで、マインドが変わっただけ。単なるポーズジャン?とかいう 突っ込みはイランかなぁ
マジで、まるで違うオーラです。
そして 右。
Sさんが持つ 唯一無二なダーク、シャドーを、長所に転化させているコーデですね。力があります。とても似合っている。
もちろん、診断メソッドなども有効に使いますが、そこにとらわれてもいないんです。あくまでもヒント。
マインドに服を着せただけのことなんですよ。
誰にでも、ダーク、シャドーは、ある。
こうした経験を積み上げて、現在の私のパーソナルスタイリングメソッドでは、ダーク、シャドーを長所に、エッジに変えていく、そエナジーを服装に転化するという方法にて、スタイリングを行う手法が確立した。
もちろん こうした深い考察が必要な仕事もあれば
冒頭に書いたような、その【役割】をひたすら 全うしていただく仕事もある。
冒頭に書いた記者会見や、企業トップが行う世界に向けてのプレゼンテーションなどに、その人の内面の掘り下げは必要ないシーンもある。
緊急のご依頼も多いし 内面だ、ダークだシャドーだ、と言っていられないシーンが在ることも事実で、そういう場合は
TPPOSMにそって、お役目を全うして頂きます。
▼TPPOSMとは
ただ、多くの顧客たちは、私と長く付き合えば付き合うほど
フォーブス誌を飾るほどの機会にも
自身のダークをスパークさせて堂々と微笑む人達が存在している。
また ジェンダーや親との確執に悩んできた顧客がシャドーを公開、
スパークへの道を一歩一歩歩み、確かな影響力を持ち始めている事例など
その真実を、少しづつ紹介していきたいと思っています。
その一人、noteでもじわじわとファンがつき、顧客から我がスクールで学ぶ生徒さんへと転進した 坪井愛実さん。
その坪井さんの、以前の姿のみを今日は紹介し、
いったいどうなっったのか、表層的なビフォーアフターでは決してない
深く美しい姿に
ファッションの本質とパワーを
そして
人間が持つ、真の可能性(無限である)を感じていただけたなら幸いです。
▼Tさんとは、この方。
次回は、坪井さんの現在、がビジュアルで公開です。
その前に、坪井さんの生き方を 上記リンクから予習しておいて貰えたら、
嬉しい。