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愛しい時間

ある時、私の時間だけが止まっているように感じた。
私の半径2メートルくらいが色も音も無くて、その周りはキラキラと楽しそうに見える。

なんだこれは・・・?

そこから抜け出したいのだけれど、抜け出し方が分からない。
ちょっともがいてはみるものの、負の感情に振り回されて儘ならない。
そうこうしている内に、なんだかその半径2メートルも悪くないか…なんて思ってしまい、益々抜け出せなくなる。

私は元々仕事が好きで、仕事をしている自分も好きで、忙しい合間にも様々な場所へ旅をしたり、好きなことにチャレンジしたり、飛び回っている自分が好きだった。
それなのに、気付いたら私の世界はモノクロになっていたのだ。
そして驚くことに、私自身も色を無くしていた。

色を無くした私は力を失った。
力を失った私は魅力が無いと感じた。
力も魅力も無い私は仕事を休み、自分だけの世界に籠った。
世界の終わりみたいな顔をして。

ただ、私がどんな顔をしていようが世界が終わるはずもない。
時間は流れ、世の中も人も変わる。
私だけが止まっているみたいだ。
孤独感、寂寥感、虚無感の底なし沼にいるようでキツい。

本当の沼にハマったことはないけれど、ハマった時にジタバタ暴れると余計沈んでいくと聞いたことがある。

きっと、感情の沼でジタバタしても無駄なのだ。
一旦じっとして、ネガティブな感情をじっくり味わうことにする。

普通、負の感情はなるべく感じたくない人が大半だ。
だからネガティブになった時になんとか良い方に考えようと試行錯誤するし、できる限り良い気分でいようと皆んな努力するのだ。
あるいは見て見ないふりをして蓋をする。

でも、そのどれをやっても上手くいかない。
疲れ果てて諦めた。
抵抗するのを諦めて、力を抜いてみる。
負の感情に身をまかせる。

寂しさ、不甲斐なさ、惨めさ、怒りや悲しさ、あるいは絶望も。
中途半端なポジティブはやめて、逃げずにちゃんと感じ切ってみる。
ゆっくり繊細に自分の感情を観察する。

すると自分の感情にもほんの少し変化があることに気づいた。
苦しい感情もずっと同じように苦しいのではなくて、すごく苦しい時とふと楽になる瞬間もあるのだ。

体の痛みにも注目してみる。
痛みをちゃんと感じると、ずっと同じ痛みではないことに気づく。
波があるのだ。

それに気づいてその瞬間を捉えたとき、私は思いがけず生きている喜びを全身で感じた。

止まってなんかいない、私は確実に変化しているのだ。
変化しているということは、生きているということだ。
苦しい状況もネガティブな感情も何も変わらないし、相変わらず仕事も休んで一人ぼっちで籠っていて環境も変わってないけれど、その時世界がひっくり返った気がした。

変わらないものなんて何もない、当たり前のことを忘れていた。
世の中や周りの人の変化ばかりに目がいくけれど、私も確実に変わっている。

全て変わってしまうということは、今あるものは今しかないわけで、、
今しかないのだとしたら痛みも辛さも苦しみも、そんなものさえ大切な気がして切なさで胸がキュッとなった。

今感じている感情は今しか感じられないし、もう2度と同じ感情にはならない。似たような感情にはなるかもしれないけれど、今の私が感じることは今この瞬間にしかないのだから、どんな感情も心ゆくまで大事に感じてみよう。

孤独も寂しさも愛おしい、怒りも愛おしい、羨んだり妬む気持ちさえも愛おしい。
モヤモヤ最高!
そんなことを感じて、ふと気づいたら少し私に色が戻っていた。

人生は変化しかない。
この先も良い時も悪い時も色々あるに決まっている。
だから、何もできない時間も私の人生の中の愛しい時間で、どんな瞬間も愛に溢れているということを忘れないように書いておく。

どんなことも変わってしまう。
世の中も、周りの人たちも、私自身も。
だからちょっと切なくて、凄く愛おしい。

今ある苦しみも幸せも、必ず変わる。
だから、本当に本当に結局大丈夫なのだ。

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