26:何のために働くのか
今回のテーマは、前回の『良い歳のとり方』でも触れた、私の前職の外資系コンサルティングで長く一緒に働いた後輩からのリクエストです。彼女はとても優秀な経営コンサルタントでしたが、旦那さんのお仕事の都合で住んでいる石垣島で自然に近い医療に貢献したいとコンサルティング会社を辞めて診療所を立上げて頑張っています。私が独立をしてより社会に貢献するキャリアを歩みたい、また記念にnoteを始めるという話をしたところ、このテーマをリクエストしてくれました。きっと彼女は、人が自然に触れて心身ともに健康な人生を歩めるように貢献したいという思いで働いているんだろう、といつも石垣島に行くたびに感じています。
前職の外資系コンサルティング会社ではカウンセラーとカウンセリーの会話のために色々なツールが用意されていました。その中に、カウンセリーが何を重要視して働いているのかを知るためのツールがあり、「成長」「報酬」「ワークライフバランス」「人との繋がり」といった項目に順番をつけてもらって、カウンセラーがカウンセリーの大事なことを理解するために活用できるようになっていました。ステレオタイプになってしまうのは良くないのでどちらがどうだったかは書きませんが、男女や年代によって優先順位付けにものすごく傾向がありました。そこからの学びは、人によって何のために働くのかは異なり、また歳を重ねるごとに変わっていくものだということでした。実際、私も20代は「経験」や「成長」のため、30代はそこにさらに子供を育てながら働いていく「報酬」や「ワークライフバランス」も加わり、40代、50代になり「社会」のために働くという意識が強くなってきました。また、20代から50代の現在まで「人と繋がっていく」「共に働く人との共感」は一貫して重要視しています。
もう一つのエピソードとしてお話ししたいのが、最近、海外の大学院で学び、一方は理系、一方は文系の領域で環境や人権などの社会課題への取組を学び、大学院外の活動も行っているとても頼もしい女子大学院生が二人で我が家に就職の相談にやってきました。彼女たち曰く「親は皆が就職したいと思うような企業に就職しなさいと言うけれど、そうすると何をやることになるか分からない。自分たちは、社会人になったら問題意識を持ち学んでいる領域で頑張りたい。」と言うのです。私は「ずっと同じ会社にいるわけじゃないのだし、企業での幅広い経験も社会課題に貢献するにあたっては重要だから、数年経験してみるのもよいのでは。その後、その会社ででも、転職してでも、自分が問題意識を持っている領域で頑張ればよいのではないかな。」と話しました。ところが、彼女たちが帰った後、横でじっと聞いていた息子から「ちょっと老害っぽいアドバイスだったんじゃないかなあ」と言われました。。。息子とのしばらくの議論の結果、私は、「我慢して下積みをしてからやりたいことをやる」という考え方も間違ってはいないけれど、昔のようにモラトリアムのような大学時代を過ごさず、今の時代のアカデミック面でも実践面でも関心があることで助走期間を過ごしている若者は、「自分がやりたいことに飛び込み、挑戦しながら必要な能力を獲得していく」という選択肢もあるんじゃないか、ということと、「大人の責任として、若者が社会のために問題意識をもってやりたいと思うことを諦めなくてもよいような社会にしてあげないといけない」という考えに至りました。
三つ目のお話は、デンマークの幸福博物館についてのお話です。2020年7月、デンマークのコペンハーゲンにオープンした「The Happiness Museum(幸福博物館)」は、「幸せとは何か」というテーマについて様々な側面から学ぶことができる博物館ということです。最近、この博物館を訪れた仕事仲間から聞いたところによると、この博物館に興味深い展示があって、様々なシーンでの幸福度のデータが出されていて、「運動」をしている時の幸福度が非常に高く、「家族」や「友人」と過ごしている時間よりも高い、そして「働いている時」が非常に低いそうです※。Chat GPTによると日本人が人生で働く時間は約10万時間、人生の約14%に該当するそうです。それだけの時間を割く働いている時間が幸福度が非常に低い時間というのも残念なものです。
これからの世界は、デジタルやAIの発達でこれまで人が行ってきた作業が効率化されていく時代になっていきます。一方で、地球環境の問題、経済格差の問題、貧困、食料、水、少子高齢化、健康、医療・介護、多様性、差別、Inclusion、教育、、、と様々な社会問題が深刻化していきます。こういった時代においては、自分が何のために働くのかを定期的に見直し、学び直し働き方を変えていけるようにしていかなければいけないのではないかと感じました。昨年、私が自分自身のキャリアを見直すためニューヨーク大学で学びなおそうとしていた時に、私のカウンセラーだった方から、リンダ・グラットンさんのベストセラー『ライフ・シフト』の中で、これまで私たちは「学生」「仕事」「老後」という3つのステージで人生を考えてきたけれども、年々人間の寿命が延び「人生100年時代」が到来する中、新たな学びを繰り返しながら新しい仕事に挑戦していく「マルチステージ」の生き方こそが大切だということが書いてあると教えてくれました。自分が何のために働くのかを定期的に見直し、学び直し働き方を変えていく。
年齢によって変わってくるそれぞれの個人が持つユニークな働く上での優先順位のためにも、人生の14%を占める働く時間がもっと幸福なものになるためにも、そして新しい時代に挑もうとする若い人にとって老害にならないためにも(汗)、私も頑張りますよ!
※幸福度のデータをご覧になりたい方はこちら↓
https://ukdataservice.ac.uk/app/uploads/mackerron.pdf
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