カマキリとETCと、ランタンと。
先日車に乗って、高速道路のETCの入り口。
いつもなら「ピンポーン、カクニンシマシタ!」と音声が言うのに、その日には言わない。確認できなかったらしい。ETCの入り口の信号が赤になって、係のおじさんがやって来た。
「ン? ETCどうしたんだろう? あ!」
どうやら、なんか問題があったらしい。
「やっぱり、あのカマキリか……」
夫の言葉は何を意味しているのか、私には全く分からなかったので素直に聞いてみることにした。
「ETCで確認出来なくてカマキリ? どういうこと?」
素直に聞いたらますます混乱してしまいそうだった。
夫は眼鏡を中指でツンと上げると信じられないことを言ったのである。
「庭にカマキリいたじゃん? どうやらそのカマキリがボンネットのヒューズボックスに入ってしまって、感電してショートしてしまったみたいなんだよ。カマキリ、茶色くなって死んでたもん」
私は「これはネタにするしかないよ!!」と多少ワクワクして「修理に何円掛かるの?」と少々ビクビクしていた。
庭のプランターにカマキリがいたのを見つけた時「これは、きっと幸運の前触れだよっ!」と目を輝かせた私は、本当に純粋な子供のようであった。嗚呼、だから「純子」なのですよ、私の名前……。
純子3、車の修理代どうします? やっぱりン万円は掛かるよね~?
これからETC使うのは諦めようか……などと考えていた。
それから数日後、夫・よしペンは自分で修理する方法を調べたりしていた。
そして「ン~! やっぱり分からないー!」などと呟いていた。
「直すなら、車屋さんに行くしかないよー」
私は一生懸命な夫を「やれるならやればー」的な視線で見ていたが、日が暮れてきても修理しようとする彼を「がんばればー」的な目線に変えようと思っていた。
一生懸命やる人(ペンギン)は誰でも、どんな顔でもきっと美しいのだ。
約5時に鳴るお寺の鐘が鳴った。今日は4時57分になった。ちょっと早いな。あ、約5時だからいいのか。
しばらくして、外は真っ暗になった。それでもよしペンは車をいじっている。
これで「ピンポーン! カクニンできましぃええええんデシタ!」とかETCがしゃべったらどうしよう。
だんだん不安になってきた。。。
「じゅんこ姉は優しいね」と以前姪っ子ちゃんが言ってくれたのを思い出した優しい私はよしペンにランタンを持って行った。
「おお! 気が利くなぁ」喜ぶよしペン。
「でもさぁ、これで命を絶つ人もいるんだよ」私は暗い顔で言った。
「それを言うなら練炭ね!!!!」
私はしっかり者のはずだ。数分後、車は無事に直った。