すべては山で…『智異山~君からのシグナル~』感想
こんにちは、いつか富士山に登りたいけどその前に痩せたいと言い続けて早十数年のじゅんぷうです。
2021年の放送前はけっこう話題になっていたのにその後の評価が微妙でそのまま忘れていた『智異山~君からのシグナル~』。このたびNetflixにラインナップされたので、わたしのソン・ソックも出ていることだし視聴しました。
ネタバレあり感想です。
智異山て日本人にはあまりなじみがない名称。「ちいさん?」と読んでしまいますが正解は「ちりさん」。変換もまず「チリ産」が出てきます。だから日本タイトルがこうなったのも同じキム・ウニ脚本の『シグナル』が日本でもリメイクされてヒットしているからだろうなと想像しつつ、主演チョン・ジヒョン以外の予備知識なしで見始めました。
智異山国立公園の新人レンジャー、カン・ヒョンジョ(演チュ・ジフン)は、ある出来事がきっかけで「見えるはずのないものが見える」力を持つように。それは山で不審死を遂げる人の周りの状況が断片的に幻視できるというもの。それを手がかりに、先輩レンジャーのソ・イガン(演チョン・ジヒョン)とともに事件を防ごうとするのですが、のちに昏睡状態のヒョンジョが生き霊となって山をさまよい、イガンにしかわからない”シグナル”を送って遭難者の位置を伝えるという…
つまり過去の描写の中では遭難者というか被害者?からヒョンジョへのシグナルであり、現在の描写の中では生き霊ヒョンジョからイガンへのシグナルということだったんですね。
『シグナル』でのシグナルは時間を超える設定。廃棄される古い無線機から声が聞こえてきて、過去と現代の刑事が協力して事件を解決していきました。この超常的な設定も緊迫感のある物語の中でしっかり説得力があったのです。
だから『智異山』も、さまざまな事件とレンジャーたちの決死の救助活動という緊迫感の中で、生き霊からシグナルがくるのってありっちゃありなんだけど、個人的にはなんだか嚙み合っていない感。山の怪異みたいな不思議話は決して嫌いじゃないけどこの場合、サスペンス/レンジャーのアクション/雄大な自然/群像/ちょびっと恋愛/生き霊←ちぐはぐ。
あの世から来ようが星から来ようが海から来ようが韓国ドラマのファンタジーって有無を言わさぬ説得力があるものなのに。何か違和感を抱きながらもとにかく生き霊のシグナルを信じて完走しました。もともと1話60分前後のエピソードを30分ずつに分けて配信しているので気づくとエンドレス再生。
山での事故に見せかけた連続殺人を追うストーリーはさほど複雑ではなく、怪しい人物が次々フォーカスされ、過去の描写と現在の描写が交互に進むので推理は楽しめます。ああ、違法採取の取り締まりエピソードでは苦手生物大量登場のため薄目での鑑賞でしたけど。
イガンと同期のレンジャーを演じるのがオ・ジョンセとチョ・ハンチョルという芸達者コンビだったり隊長がおなじみソン・ドンイルだったり安心のキャスティングではあるんですが、全体通してキャラクターへの没入もいまひとつだったかな。ヒョンジョも見えちゃったり生き霊になっちゃう以外はある意味「ふつうの人」。人呼んで「赤鬼」イガンはもっとカリスマ演出してもよかったのでは。
韓国ではCGが不評だったそうですが、それでも撮影に関してはなかなかのスケールだと思います。というのも、視聴するまでは韓国のなんか下のほう、ぐらいのぼんやりした認識だったし単に「智異山」という山があるのかなと思っていましたが全羅北道、全羅南道、慶尚南道にまたがる山並み一帯が智異山と呼ばれているんですね。国立公園として管理はされているけど立ち入り禁止の区域も多く、100もの峰があってその主峰が1915メートルの天王峰。韓国本土ではいちばん高い山です。
それだけ広大な山地だと思うと、自然風景はもちろん、レンジャーたちによる救助のシーン、とくに水害と山火事のシーンは見ごたえありました。山には危険生物もいるし生き霊もサイコキラーもいる。何がいてもおかしくない、それが山。
そうそう、ソン・ソックでした。
ソン・ソックも山にいました。
ソン・ソックはイガンの初恋相手チョルギョン役で、彼の登場エピソードは本筋のお話とは別の線。そして、出会いの回想シーンで登場する10代のころのチョルギョンを演じるのがチェ・ヒョヌクとは!!
ソン・ソックとチェ・ヒョヌクが同じ人物を演じてるだなんて…
『D.P.2』での因縁のふたりでもありますが、わたしのすきぴのふたりが…これはイガンの初恋なの?わたしの初恋なの?運命なの?
智異山で行われた問題児更生プログラムで出会ったイガンとチョルギョン。チェ・ヒョヌク登場部分のエピソードのラストはわたしまであのバス停に取り残されたように胸が痛かったし、その数年後のハタチ前後の設定でソウルで再会したソン・ソックとバイクで海に行くエピソードもきゅんきゅんだったし、現在のソン・ソックがまたいつものように表情管理が達人すぎてわたしだったら山から転がり落ちてます。現在のイガンの相棒ヒョンジョがふだんあまりにもぬぼっとしているので、この初恋エピソードの特別感といったらありませんでした。(まさか初恋も山でだなんて…)
ドラマでも少し触れられていますが、智異山は抵抗の地だった歴史があり、実際にパルチザン討伐資料館もあるそうです。そういえば本作のイ・ウンボク監督演出の『ミスター・サンシャイン』、義兵たちの山のアジトは智異山だったかもしれません。
たぶんもう1周はしないと思うので、BTSのJINくん歌唱のOSTを聴きながらせつない初恋を反芻します。コグママッコリも飲みながらだと完璧だけど。
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