国家安保、政治的駆け引き、そしてソン・ソックの前髪にくぎ付け『サバイバー:60日間の大統領』
全世界のソン・ソックに翻弄され隊女子のみなさんこんにちは、隊員のじゅんぷうです(ユ・アインにハラハラし隊にも入隊しています)。
ソン・ソックが出演しているしサスペンス好きなので見始めたら、久々にとんでもない睡眠時間泥棒のドラマでした。『サバイバー:60日間の大統領』はアメリカの『サバイバー:宿命の大統領』を韓国でリメイクした2019年の作品。韓国の大統領府〈青瓦台〉を中心に起こるできごとと、国家情報院のテロ捜査が並行して進んでいく物語。
ネタバレあり感想です。
主人公はチ・ジニ演じるパク・ムジン。大気汚染問題しか頭にない政治力皆無の環境省長官。国会議事堂での爆破テロで大統領はじめ閣僚たちがもれなく命を落としたことから、次期大統領選挙まで60日間の〈大統領権限代行〉として政治のど真ん中に否応なく放り込まれます。突然国家の最高権力者になったパク代行が、次々に重大な決断を迫られる展開がエキサイティングすぎて寝てる場合じゃありませんでした。
どんだけ選択・決断したかって、
挑発的行動を見せる北朝鮮に武力行使をする?
脱北者を守るため〈大統領令〉を発令する?
代行としての自分の資格について公表する?
重要人物を捕えるためカンボジアに派兵する?
挙国一致内閣を発足する?
スキャンダルを避けるため家族の事情を公表する?
差別禁止法案を発案する?
大統領選に出馬する?
百戦錬磨の政敵や軍部やアメリカやマスコミの圧の中でパク代行は揉まれに揉まれていくのですが、実際問題として韓国の切実な希望なのではないかと思えます。ドラマ内ではテロの主犯を北朝鮮と疑わせることで脱北者が差別されたり、これは時流だろうけどLGBTエピソードがあったりしての差別禁止法で、現実に韓国では一向に採択されない法案。このドラマ放送後の2020年に13年ぶりに国会に提出されたようですが過半数の賛成を得られずじまい。論じることすら身を滅ぼしかねないそんな法案を、ドラマでパク代行が発案しようとするわけですから。
パク代行が「政治を知らなすぎる」「軍を知らなすぎる」などと言われるたび、見ているわたしも悲し気な眉寄せ表情に。演じるチ・ジニ、その立場を表す小道具として描かれる靴は窮屈そうだけどとにかくスーツ姿キマってます。とくにジャケットを脱いだシャツスタイルが抜群。
イ・ジュニョク演じるオ議員もモデルばりのスタイルなので、この2人が並んでると紳士服のCMいやグラビアみたい。ですが「選挙に勝つ」ことだけ考えたらそんな新時代も現実味ある気がします。イ・ジュニョクはビジネススタイルなルックこそ『秘密の森』を思わせるけどキャラはどちらかというと『秘密の森』のシモクのほう。感情を一切表さない能面のような表情で存在感を出していたし海軍の軍服姿、これはズルい。
さて、そろそろソン・ソック。
ダメだ可愛い…
キングメーカーへの野望を持つチャ秘書室長を演じたソン・ソック、なにゆえあの前髪なのか疑問しかないのですが、その疑問を毎回上塗りしてくれる表情管理にやられっぱなしです。少々暑苦しくて嫌味なキャラクターだけど政治を読む目はあり、チェ・ユニョン演じるチョン補佐官と接近するくだりなんかはもう、やめてそんな目で見ないで…!!
そうか、あの前髪はチャ室長に落ちる女子が量産されてしまうと物語の本筋がぶれるから、そのための奇策なのだなと理解しましたが、それすらもだんだん可愛く見えてきました。韓ドラ、それも青春ドラマあるあるのバスケ対決まで見せてくれちゃって。後半は胸アツシーンの連続。
例によって日韓関係の描き方は歪だったり若干読める展開もありつつ、ハイテンポな問題発生が中毒になってきます。テロや南北の軍事緊張、政治的なスリリングな攻防をエンターテイメントとして楽しめた。会話が軽妙でわかりやすく、これだけ多くの登場人物でも混乱することはありませんでした。
あと青瓦台の中の歴代大統領の肖像画が並ぶ廊下が何度も映るのですが、直近の2代前あたりに女性がいたりとか部分的に現実に寄せてるんです。それで10代ぐらい遡ったところに髪の薄い方が映ったのをわたしは見逃しませんでした。韓国ドラマ、髪の薄い方けっこうイジってきますよね。
ほかにもイ・ムセンは品があるわあとかカン・ハンナってこんな役もやるんだとか、いちいち見ごたえのあるドラマでした。
テロリストと戦い、政治的現実と戦い、マスコミと戦って国家と家族を守ったパク代行こそ新しい時代のリーダーかも。このドラマを見ながら「デフコン」や「ラングーン事件」を調べたりしました。そんなことを踏まえて2周目に入ってしまいそう。