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大垣夜行~お伊勢まいり~半島⇒島⇒半島|乗り鉄夫との平成よくばり鉄道旅#6

 出かけたがりなのに疲れやすいでおなじみ、じゅんぷうです。過去の旅行を振り返ってみると、そりゃあ疲れるだろうな、と思います。

 ノストラダムスの1999年。夏の終わりに”この世の果て”熊野を旅した、乗り鉄ときどきバス夫&船らぶじゅんぷう。9月になり、どうやら人類まだ滅亡しないぞという空気になったところで「一人旅したい」と夫に言いました。さすがに立て続けに旅行三昧できる余裕もなく、

夫「お金は?」

私「(地球が滅びるつもりだったので)ない」

夫「じゃあ競馬でとったら行ってもいいよ笑」

 そんな会話をしたその週末、京成杯オータムハンデというレースでわたし見事に万馬券をとりまして、意気揚々とひとりで旅立ったんです🐎
 行き先は近江。山科の天智天皇陵に始まり大津宮跡、近江神宮、弘文天皇陵などを台風で遭難しそうになりながら回ったのですが、とにかく夫は私が寝台急行「銀河」で行ったのがうらやましかったようで、次のふたり旅の計画を入念に進めていたのです。

大垣夜行で戦々恐々な旅立ち

 そして10月。金曜の夜、当時社畜の私の仕事終わりに歌舞伎町で夫と合流して、つるかめ食堂で腹ごしらえ。新宿で働き始めたころは、ここの定食を食べきれない乙女だったのですが、知らぬ間に一皮むけて完食できるようになりました。

悲喜こもごも歌舞伎町

 23:43 東京発「ムーンライトながら」。そうです、鉄とつきあっていると必ずや耳にする「大垣夜行」です。
 東京と岐阜県大垣間を走っていた夜行列車、青春18きっぷといえば大垣夜行。それが快速ムーンライトながらとなり、こののち臨時列車になり、いまは567の影響で廃止になってしまったそうです。そう聞くと寂しいものがあるけど、この当時は、ムーンライトなどという名前でごまかされてなるかという私のような反鉄精神の人間が乗っていいものか、通勤客も多いとはいえこれぞ鉄の乗り物という認識でした。

カラーリングも車体に合わせた表紙ですね…

 これで出発するっていつ聞いたかなあといまだに思うのですが、イメージと違って座席は2人シートでわりとデラックス。予想通りなのは、乗客は見渡す限りの鉄ということ。東京駅の売店がすべて閉まっている時間だったのでお酒も持参ならず、まさかのしらふで鉄に取り囲まれています。

 しかも私たちの乗っている車両は小田原から自由席となり、一般の方々と鉄とが混じり合い殺気立っています。ここインドかなってぐらい通路にもびっちり座り込んでいらっしゃり、トイレに行くにも100%勇気が必要。浜松に停車すると、そんな中をカメラを持った鉄たちが最前線に移動していき、地雷踏んでいくんですよ。あちこちで怒号が聞こえてくるので眠れません。

お伊勢めぐりはレンタカーで

 6:05 戦死者が出る前に名古屋着。中日ファンのじゅんぷう(燃える男・星野仙一ファン)、少しでも中日のリーグ優勝ムードを味わおうと名古屋駅周辺をうろつきます。松坂肉の磯巻きにぎりを朝ごはんに買い込み、名古屋から近鉄特急に乗車。ようやくゆったり旅気分です。寝不足だけど鉄から解放され晴れやか。

 8時過ぎに伊勢市駅に到着。予約してある駅レンタカーのオープン時間まで、駅から近い須原大社、月夜見宮、世木神社をお参りします。

 ほぼ1年中お祭りがあるという伊勢ですが、今日と明日は伊勢おおまつりという街ぐるみのお祭りで、この時間から町では露店の設営が始まり、民家の玄関には「笑門」と書かれたお飾りが下がっています。

 9時になり、白のスターレットでドライブに出発。夫は筋金入りの鉄のため運転は私です。

 駅前にいたタクシーの運転手さんに、今日はどこも混雑すると脅されましたがまだ人出も少なく、「お伊勢参りは二見から」と言われている禊の地、二見輿玉神社に到着。

 海に面した本殿のさらに海側に日の出遥拝所があり、その鳥居の向こう側に、しめ縄が張られた夫婦岩を拝めます。季節や天気によってはここから富士山も見えるそう!

二見輿玉神社HPより

 天の岩屋、竜宮社、さざれ石など見て回り、お土産屋さんで伊勢うどん、てこねずし、大あさりのセットを二人でひとつ。太くてやわらかい伊勢うどん、これはこれで美味しい。夫のお母さんが讃岐の人なので讃岐うどんをよくいただくのですが、逆に讃岐が特殊なのではないかと思えます。

 このあと猿田彦神社、伊勢神宮の外宮、内宮と回るのがお参りの正しい順番だったのですが、今日はお祭りで交通規制があるというので、まず外宮から行くことにしました。

伊勢志摩観光ナビより

 快晴の伊勢は明るく気持ちのよい空気。ほんの1ヵ月ちょっと前に訪れた熊野とは、同じ紀伊半島にありながらまったく空気感が違います。熊野は自然崇拝がそのまま信仰になっている修験道の地というのもあるけど、伊勢と熊野は、両方行かないと片参りと言われるのだそう。伊勢へ七度、熊野へ三度というフレーズが江戸時代に流行するほどだもの。そうしてお江戸の観光ビジネスも発展したんでしょうね。

 熊野では自然の力に圧倒されましたが、伊勢では自然もあるけど20年ごとの遷宮など、そのシステムに震える私。さて外宮です。内宮に鎮座するアマテラスの食事を世話する神がおわす外宮を見学して、30分ほど渋滞に身を任せて内宮に到着。こちらだけお参りする人も多いのか、外宮とは比べられないほどすごいにぎわい。でも五十鈴川の清らかな流れと、光があふれる神域に癒されました。

 車を内宮の駐車場に置いたまま、おはらい町とおかげ横丁を歩きます。酒屋が多く、こちらでぐい呑みを買い、また別の店で利き酒をし、おみやげを送ったりお茶したりおせんべいをかじったりしながら車にもどります。

伊勢志摩観光ナビよりおはらい町

 道案内の神様なのに最後になってしまった猿田彦神社の摂社には、アメノウズメが祀られていました。猿田彦の妻で、天の岩戸に隠れたアマテラスを呼びもどすため岩戸の前で踊った女神。二見にもいました。

伊勢志摩観光ナビよりアメノウズメを祀るさるめ神社

 まだ時間があるのでドライブを続けることに。皇学院大学の敷地内にある神道博物館へ行ってみたけど休館日。そこで伊勢神宮をつくったとされる倭姫を祀る倭姫宮へ。内宮の別宮にあたるそうで、来てよかったです。宮司さんのお話も聞けたし、杉の木立に差し込む夕日にすべてを忘れそうでした。

伊勢志摩観光ナビより

 給油して車を返し、歩いて今日の宿に向かいます。せっかくのお伊勢まいり、どうせなら雰囲気のある古い旅館に泊まりたかったのですが、予約が間に合わずビジネスっぽいホテルになりました。

 とりあえずシャワーを浴びて、指定された夕食場所に行ってみると…すでに天ぷらが出ているので嫌な予感。お決まりで冷酒を頼みますが、ふたりとも空腹のはずなのに食も酒も進まず。えっと…修学旅行でもこんなんある? 

 悲しみで部屋でふて寝をしていましたが、気を取り直して夜の伊勢にくり出すことにしました。お祭りは終わっていて、テキ屋のおにーさんたちが「油が落ちてへんやんかー」などと言いながらかたづけをしているのがほほえましい。ふ~ん、夜の伊勢の人たちはこんな感じなんだね~と街を歩いて、最初に目をつけていた焼き鳥屋に入ります。これが大正解。わーい、伊勢に来てよかった! たれが美味しい!

 リセットと称してかなり飲み食いしてホテルにもどり、サクロン飲んで1日目終了。

伊良湖のポストマンブルースと美味しい篠島

 本日入籍1周年記念日ですが、朝食バイキングがまた笑えるほどでした。味というか、まごころというか…。持参した歯みがきセットを忘れてくるほどの勢いで逃げるようにチェックアウトして、伊勢市駅に向かいます。近鉄とJRが並行して走る線路沿いの道で、夫は撮影に打ち込んでいます。

 9:32 快速みえ乗車。15分ほどで鳥羽に到着。だからなんで私たちは船に乗るときはいつも走っているのだろうか。九鬼水軍の本拠地、鳥羽。ミキモト本社の地、鳥羽。結婚1周年にここに来るならパールのひと粒やふた粒いただいてもよかったのでは? 海女さんがパカッてしたらキラッ…え、私に? という演出まで妄想しながら走って乗船セーフ。

伊勢湾フェリー公式より

 鳥羽から伊良湖水道を東に向かいます。かなり波が高く、夫は船酔いでダウン。漁場のようだったので、潮目だったのでしょうか、船好きの私ですらこの波はちょっと怖かったです。旅行後、伊良湖水道は日本三大潮流のひとつと知りました。

 高速船なので30分ほどで伊良湖に到着。ここは愛知県、渥美半島の最西端で鉄道も通っていません。レンタサイクルで軽く回るつもりでしたが、自転車不足で、目的地にだいぶ遠い国民休暇村から出発となりました。サイクリングロードではなく田んぼ道を爆走してショートカット。岡山では『由美香』でしたが、このとき私の脳裏に浮かんでいたのはこれでした。無茶苦茶でおすすめ。

1997年作品

 ようやく海側のサイクリングロードに出たものの、行きたかった島崎藤村の「椰子の実」の詩碑は自転車では行けない場所でした。最初に大幅に時間をロスしているので、そのまま伊良湖岬に向かいます。けっこうなアップダウン。

 海岸に着くと、望遠鏡を持ったグループやサーファー、バイカー、釣り人たちでいっぱい。望遠鏡軍団は鷹の観測に来ているそう。

渥美半島観光ビューローより。シーズンだったそう!

 大あさり定食と椰子の実ジュースでお昼にして、伊良湖岬灯台を見学して自転車はフェリー乗り場に乗り捨て。スニーカーの中から大量の砂を出し、また高速船に乗ります。

 さっきとは違い海はおだやか。20分ほどで私たちが上陸したのは、篠島という離島です。今夜はここに泊まります。

 三河湾の交通の要衝だったというここ篠島は、本来「お伊勢まいり」に含まれているそうです。伊勢へは行っても、篠島に参拝することができない人は、昨日私たちが禊をしたあの二見ヶ浦から、島に向かってお参りをするんだとか。

 伊勢から伊良湖、そして篠島へと渡るこの船旅、そんな参拝方法を知らずに計画したので、私は正しかったのだと鐘を鳴らされた気分。伊勢での参拝の順序は狂ってしまったけど「一生に一度でも」伊勢に行きたいと願って舟に乗った江戸人の旅にはあやかれたかも。

篠島観光協会HPより

 港から乗り合いタクシーで着いた旅館。お部屋の目の前は季節外れの海岸です。泊まり客も地元の人たちものびのび浜で遊んでいます。

 私たちも日曜競馬中継を見終わってから島の探検に出発です。旅館裏手の山を登り、万葉歌碑公園で景色を眺めていると団体客が上がってきたので、さらに上って展望台へ。もうここから先の道は舗装されていません。去年の夏の真鍋島を思い出します。

 死角で見えないけど、展望台の下のほうに伊勢神宮遥拝所があるようです。すごくないですか?伊勢の力。宗教的にも産業的にも。どうせならここで夕陽が沈むのを見届けたいところですが、陽が沈んでしまったら帰りがヤバいことになると思い、もどり始めます。背の高い草むら、崖、お地蔵さん…このロケーションがいちいち『獄門島』のようで、キャッキャしながら草むらかき分けます。草むらかき分けるなんて、いまや『愛の不時着』ぐらいでしか見なくないですか?

 やっとのことで宿の前の浜にたどり着き、まだ明るい空の下で休憩。だけどほんのり赤く輝き始めた雲を見たらやっぱり夕陽を見たくなり、公園の手前にあった中学校まで行ってみようと2周目に突入してしまいました。しかし中学校からだと天狗の鼻(獄門島から勝手に命名した岩)がジャマ。少し先の脇道を野生のカンで下りていったら、そこはベスト夕陽スポットでした。

篠島観光協会HPより。松島に沈む夕日

 お腹をすかせて宿に帰り、お風呂に入って夜ごはんです。冷酒はその名も「篠島」。伊勢エビとせいごのお刺身、タコの塩ゆでとお刺身、カニ、エビ塩焼き、穴子の稚魚おろし和え…こんなに食べられるのだろうかとカニみそをほじっていると女将さんがバーン!

「カニなんか後にして、あったかいうちにこれ!」

 そう言って持ってきたのは大あさりと、一本釣りのカワハギ煮つけ。「カニ」に「なんか」という軽んじる副助詞使う人いるんだねという概念はこのカワハギを一口食べて打ち砕かれます。カニなんか、カニなんか後だわ。そしてカワハギに夢中になっていると、また女将さんがバーン!

「手づかみでいいから、あったかいうちにこれ!! なんだかわかる?」

 と持ってきたのは、じゃこのかき揚げ。人生で何度か、美味しくてただ笑ってしまうという経験がありますが、その中のひとつがこのときでした。永遠にお酒飲んでいられそう。デザートの海藻コーヒーゼリーに到達するまで2時間半。夫は途中で2回寝ました。

 食後にキャベ2を飲んで、腹ごなしに浜をウォーキング。島の少年たちが原チャリ2ケツしているのが可愛らしい。女将さんから、明日の朝は日の出を見てから風呂に入っておくよう言われたので、早々に消灯して波と風と原チャリの音を聞きながら2日目終了。

知多半島経由で蒲郡

お泊りしたギフヤ旅館さんHPより。

 なぜかモーニングコールの設定が間違っていたせいで5時前に起きて、そのまま布団の中で朝日待ち。昨夜どうも寒いと思ったら、窓開いてました。渥美半島の向こうに昇った朝日を拝み、朝風呂へ。昨夜も今朝も独占使用で極楽でした。湯上りに海が見える食堂で伊勢エビのお味噌汁、鯵、イカ刺しなど控えめに言って最高な朝食。

 本日は、私は一人で篠島から蒲郡に渡り、三谷温泉で日帰り露天風呂。夫は知多半島の河和に渡り、ぐるっと鉄道を乗りつぶしてきて蒲郡で合流してお昼の予定。私が知多半島乗りつぶしをしたくなくて、蒲郡近辺の温泉を探したんです。ところが、学習しない私はまたしても朝の長風呂で頭がぐわんぐわんの状態に…。船には乗れても温泉は無理だね!ということで折衷案として、鉄道乗りつぶしは省略することを条件に、知多半島コースに同伴することにしたのでした。

      いま思えば、私は篠島でのんびり回復してから、次の船(5時間後だけど)で蒲郡に向かえばよかったのでは?

 ずっと笑顔だった女将さんにお別れして、港まで歩いていきます。島内の道はすごく狭いのですが、軽トラと原チャリの通行量が半端ではなく、しかもブレーキかけながら停まりきる前に同乗者はすでに車から降りているという光景を何回見たでしょうか。

篠島観光協会HPより

 港に向かう途中、神明社をお参り。伊勢神宮遷地の際に倭姫が立ち寄り、御神界と定めたのだとか。自分の見てきた場所の地理と歴史がつながる瞬間が、楽しいです。漁協のほうをぶらついて港へ。喫茶店でコーヒー飲んで、露店で島の思い出にじゃこを買いました。

 ここ篠島も、前年の真鍋島と同じく子どもができたら連れてきたい場所でしたが叶わぬまま時は過ぎ。河和行きの高速艇で出航し、お隣の日間賀島を経由して、20分ほどで知多半島の河和に到着。港から駅までは無料バスがありました。名鉄河和線で知多武豊まで北上してJRに乗り換え…という鉄行動にただついて行ってるだけの時間。私にしてみればそっけなく知多半島を縦断。省略したおかげで予定より早く蒲郡に着きました。

 やってきたのは三河湾を望む蒲郡プリンスホテル。離れの六角堂のレストランでステーキとワインのランチです。湯当たり治った。こちらのロケーションは、何というか2時間サスペンスの世界。それも大映制作。そんなリゾート感。

がまごおりナビより

 食後は橋を渡って竹島へ。この島は、琵琶湖に浮かぶ竹生島の弁財天を勧請している八百富神社の神領です。島の外周を歩き、お参りをする間、私だけ蚊に刺されまくってあとで数えたら15ヵ所以上。顔面から足裏までも。本土にもどりホテル竹島のケーキバイキングで体力回復して、東海道線で豊橋に移動します。

 もう疲れて動きたくなかったのですが、また目的地のない市電に乗せられます。ドラゴンズ優勝記念の花電車仕様でなければ許せなかったと思います。「市電」と聞くと何か使命感でも生まれるんでしょうか? 私、本当に疲れてたんでしょうね、豊橋の駅ビルでワンピースを衝動買いしたりして、酒とつまみを手に東京行き「ひかり」乗車。結婚記念日感皆無の、これまでのふたり旅でもっとも疲労が激しい旅でした。

✦うっかり者の乗り鉄と

うっかり結婚してしまった私の

うっかり旅行記、

お読みいただきありがとうございました✦


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