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『愛の迷宮-トンネル-』はメロドラマでもどんづまりでもなかった
迷宮といえばアンドローラ、じゅんぷうですこんにちは。
2017年の韓国ドラマ『愛の迷宮-トンネル-』完走しました。
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またこの邦題センス問題で視聴者は判断力を失うというか、幻惑されるのですが、韓国の原題は『トンネル』。
物語のベースに30年前の事件があることから“迷宮入り事件”の迷宮だとしても、あざといまでの昼ドラ感。実際にまったく関係ない作品だけど日本で2007年に東海テレビの昼ドラ『愛の迷宮』ってありました。この昼ドラ、当時ちょっとだけ見ていた記憶はあるけど、今Wikiでストーリー読んでも血縁が複雑に入り組んで人間関係の理解が非常に難しい。
韓国でも、日本の昼ドラや昔の大映ドラマのような、愛憎ドロドロ血縁グチャグチャのマクチャンドラマ(막장드라마)というジャンルが定着しているそうです。
ちなみにマクチャン(막장)とは炭鉱の中の石炭を採掘するどんづまりの場所のことだそう。行き場のないどんづまりからのあり得ない急展開⇒ジェットコースタードラマと定義されているようです。
前置きが長くなりましたが『愛の迷宮-トンネル-』。お話は1986年から始まります。見始めてすぐに、
1980年代の韓国郊外。
田園地帯。
女性の連続殺人。
粗暴な刑事たち。
これ、『殺人の追憶』の事件では?と思ったらやっぱりそうでした。
2003年の韓国映画『殺人の追憶』と同じく、モチーフとなったのは実際に韓国で1986~1991年に起きた「華城(ファソン)連続殺人事件」。
韓国のゾディアックと呼ばれたシリアル・キラーは2019年になってようやく、別の事件で無期懲役を受けていた男性とDNA一致。『愛の迷宮』も『殺人の追憶』も、制作当時はまだ未解決事件だったのです。
主人公の刑事のキャラクターもこの2作品は近いものがありますので、ざっとあらすじを並べてみます。
『殺人の追憶』
パク刑事(ソン・ガンホ)は自白強要・暴力上等の田舎の刑事。用水路で女性の遺体が発見され、捜査は進展しないまま次の犠牲者が出てしまう。ソウル市警から派遣された頭脳派でキレ者のソ刑事(キム・サンギョン)とタッグを組み、対立し、失敗を重ねながらも有力な容疑者を捕らえるが…
『愛の迷宮-トンネル-』
1986年。「ファヤン」という町で女性連続殺人事件を捜査中の刑事パク・グァンホ(チェ・ジニョク)が、犯人を追ったトンネルで30年後にタイムスリップしてしまう。妻が待つ過去の世界に戻る方法を探りながら、バディを組むのはエリート刑事キム・ソンジェ(ユン・ヒョンミン)。さらに若き犯罪心理学研究者のシン・ジェイ教授(イ・ユヨン)も捜査に協力し、未解決のまま30年たった事件の真相・犯人を追う――
『殺人の追憶』とは犯人像も殺害のディテールも違うし、何しろタイムスリップというファンタジー要素が入ってくるため、ある程度ご都合な部分や矛盾する点はあります。過去から来て毎日警察署に出勤するのに警察手帳やお金どうしたん?とか、バスに乗れなかったけど交通系ICカード作れたかなとか、過去がこうなったら未来の彼らはどうなるのかと気になる点はこまごまありますが、実際にあの事件を解決するには過去のやり方ではだめだったんだとすると、そのためのタイムスリップという意味付けになってきます。
華城連続殺人事件は10人の女性が殺され(14人説も)、捜査対象者は2万人。冤罪で20年も投獄された人もいる事件。これ以外にも韓国は実際にあった事件をベースにした映像作品も多いし、完全にフィクションの犯罪ものでもエグい作品は多いんですよね。チャン・ドンゴンの『V.I.P』はわたし試写室で目を閉じました。このドラマは映像的にそこまでではなく、主人公パク・グァンホと過去に残してきた妻の絆という希望があるから絶望せずにいられます。
メインキャストの3人は初めましての俳優さんでしたが、2017年サイドの警察のチーム長はおなじみの方で、ほかのメンバーにもおっ!となりました。何人か挙げると…
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『トッケビ』の怖い人!
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もう1人の同僚も…
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『キム秘書はいったい、なぜ?』の健康食品LOVEな社長
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彼らもだんだんいいチームへと成長していくのがほっこりどころ(もうひとつ、30年間変わらぬ味「紫禁城」の餃子が美味しそうだった)。
なんだかなな邦題でしたがよくできたサスペンスだし、またタイムスリップか…と思いつつスピーディーな展開で一気見した作品でした。
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